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ある共産主義国家の記録  作者: HTTK
ワーストコンタクト
14/42

ボヘミア戦役 

 空軍所属のIL76Dの中では、大隊長が降下用意の号令をかけ、誰もが固唾を飲んで降下命令を待っていた。

「重装備の投下を開始!」

その合図で大隊が保有する2S9ノーナや、BMD3、2S25を筆頭に重装備が次々と降下してゆく。

そして、それらが完了した段階で大隊長が次の命令を下す。

「降下30秒前、全員降下用意!」

そして、満面の笑みを浮かべながら発言する。

「お前ら運がいいぞ!制空権はこっちのもの、向こうは南の機甲師団ではなく中世の騎士様だ。生きて帰るぞ!」

そう言い終わると、大隊長は命令を下す。

「総員、降下開始!」

その直後、王都上空に無数の白い落下傘が咲いた。

 

 以前から、敵の王都への侵入に備えてボヘミア王国側は可能な限りの防衛の準備が開始していた。

時間が極めて限られる中、兵士の動員や籠城の準備等を行っていたのだ。

しかし、彼らはまさか敵が空から兵士を送り込んでくるとは考えてもおらず、その油断が防衛の失敗の原因となる。

「敵襲だ!」

そう兵士が警鐘を鳴らし、騎士は部下に迎撃の命令を下す。

「あの蛮族共を王都に入れるな!城門を死守しろ!」

城門が閉められ、歩兵は敵の突破に備えて槍を構え、石造りの塔から弓兵と魔道士は敵に対し攻撃を加えるべく移動した。

しかし、それらの努力は徒労に終わる。

ダダダダ…

降下と同時に行われた、BMD3の30mm機関砲による銃撃で砦は崩され、中に居た兵士はミンチになった。

木造製の城門は、2S25の装備する125mm砲に周りの将兵共々吹き飛ばされ、無理やり開け放たれる。

「城門にあまり当てるなよ!崩れると困るからな!」

迅速に設置された仮設指揮所で指揮をする大隊長は、迫撃砲部隊にそう命令した後、砲撃を命令。

同時に行われた2S9ノーナの精密極まる支援砲撃も合わさり敵の塔や防塞が崩され、歩兵部隊の進撃を容易なものにする。

王国軍も効果的な防衛戦を展開しようとするも、北日本空挺部隊の保有する圧倒的な火力と練度によって次々と無力化されていった。

元々、彼ら空挺師団の任務は重装備の部隊が守備する都市部か軍基地、特に札幌や新千歳等の要地に繋がる経路の確保といった敵地に真っ先に降下するものであった。

戦車を相手に歩兵で挑む様な訓練をしていた部隊を相手に、石造りの陣地に篭った槍と弓で武装した軍隊で相手をする方が間違っていた。

そして、同様の事態は上空でも起こっていた。


「敵に追いつけない!」「敵誘導弾を回避できない!」

……転移時の北日本による攻撃によって元々兵力を撃ち減らされていた飛竜部隊は、敵の大侵攻を受けて残存部隊が総出撃するも、北日本軍の攻撃により次々と撃ち減らされてゆく。

……確かに、飛竜部隊の練度はそれなりに高かった。

なにせ、彼らは文字通り竜人一体なのだから、その反射能力、竜騎士の飛行時間は現代のパイロットを遥かに上回るだろう。

しかし、である。地球世界はそれらの努力を遥かに上回る飛行機械を既に生み出していたのだ。

「……地上部隊から支援要請、王城門前の敵部隊の掃討を要請。目標地点は……」

それを聞いた彼は、愛機であるSu25を目標地点へと向ける。

この機を操る彼は、イラクや中華地域を始めとする諸地域で義勇兵として戦闘を繰り広げた猛者であった。

敵の城門は謎のバリアーが張られ、味方の砲撃が防がれていた。

それに向けて、自機の搭載する500キログラム爆弾を全弾投下する。

……バリアーが消滅し、味方の砲撃が敵に当たり始める。

作戦開始から1時間も経っていないのに、王都は陥落寸前だった。

そして、北日本軍の攻勢は別の場所でも行われていた。


 海軍歩兵は、敵地後方への揚陸を行い陸軍の側面を支援することを目的に編制された部隊である。

転移前は、その機動力の高さを活かし中華地域やアフリカ等の混沌が続く地域に派遣され北日本の国益を守る活動を続けていたのだ。

アフリカや中華での北日本企業と北日本国民の安全が保たれたのも、間違いなく護衛としてついていた海軍歩兵の役割が大きかった。

上記の様な経緯から、北日本海軍歩兵は南の海軍陸戦隊と並んで歴戦の精鋭揃いの部隊とされていた。

そして、北日本海軍歩兵は、待ちに待った戦争――南日本とのものでないとしても――を迎えようとしていた。


 ボヘミア王国 東海岸

 轟音が響き、戦艦「樺太」※1の40.6㎝砲が敵軍港を吹き飛ばし、どういう原理でなのか飛行する敵部隊を対空ミサイルで撃破し、艦隊の安全確保に努めるのを揚陸準備を進める船の上で見つめていた。

彼は正直、戦艦という時代遅れの船が何故現役で存在するのか疑問だったが、いざ実戦が起こるとその巨砲を生かした対地支援と船団護衛には極めて有効なものだと思い知っていた。

なにせ、戦艦「樺太」は、度重なる改装で7万トン近い重量を抱え込んでいる。

その巨体には主砲を中心に、VLSまでが設置され、搭載しているヘリを使用して艦隊の防空・対潜を一手に引き受ける事も可能なのだ。

90年代の満州紛争※2では、戦艦「樺太」が同盟国である満州人民共和国を支援すべく朝鮮人民軍の錦州揚陸作戦支援と中華連邦共和国艦隊の撃破、防空のすべてを担ったと聞いた時は眉唾に思ったが、実際にそれが行われるのを見るとその話を信じざるを得えなかった。

なにせ、それを1艦で担えるだけのポテンシャルが実際に存在するのだ。


「総員、搭乗急げ‼」

甲板ではMil17が発艦準備を整えており、彼もそれに乗り込む。

……暫くしてヘリが浮き上がり、敵地へ向けて移動し始める。

ヘリの窓の下では、揚陸艦のドックから揚陸艇が発進しているのが見えた。

「我が第3小隊の作戦目標は、ギルド支部の制圧だ!抵抗する人物は射殺して構わない!」

そう部隊長が言う間にも編隊を組んでいたヘリが定められた降下地点に向かうべく次々に編隊を離れてゆく。

予想されていた対空砲火は、上陸前の砲撃と事前に飛び立っていた戦闘ヘリ部隊によって完全に沈黙しており、制空権は完全にこちらのものだった。

「目標地点付近だ!総員、降下準備!」

護衛のKa52Nが地上の安全を確保する中、周辺の建物と比べてもひと際大きな建物の付近に海軍歩兵たちが次々とロープで降下を開始する。

彼もまた降下し、訓練通り付近の索敵を行い場所を確保する。

「建物の入り口が閉められている!爆破するぞ!」

彼はそういって、味方の援護の元に丈夫そうな木製の扉に近づいて爆薬を手際よく仕掛ける。

3,2,1……合図で爆破し、中に味方が次々と突入してゆく。

「共和国軍だ!全員床に伏せろ!」

ギルドの一階部分には、バリケードが築かれており、先ほどの爆破の衝撃で倒れこんだ者に向けて銃口を向ける。

「ここは、冒険者ギルドだぞ!そのような勝手が許されると思うのか!」

そうこちらへ言う者へ、逆に問いかける

「ここのトップは誰か!応えろ!」

「……責任者という意味なら、私だよ。私がこのギルドの支部長だ。」

そういって、丸眼鏡を掛けた男がバリケードの中から出てくる。

「国家の武装兵がこの様な狼藉を働く意味は分かっているのだろうね?※3」

未だ双方が武器を構える中、そういう男の問いかけに部隊長が踵を揃え答礼して答える。

「私は、日本人民共和国海軍歩兵第二旅団、田中軍曹と申します。皆様の安全を保障します。ですから、今は武器を下してはいただけませんか。……司令部からは迅速な鎮圧を命令されています。我々は、無益な戦争を好むものではありません。」

そう発言する田中の眼を見ていた支部長は、ため息を一つついた後、彼らに命ずる。

「緊急条例第3項に基づいて、ギルド所属員に命令する。武器を下せ。」

支部長の発言に、バリケードから反論が上がりそうになるも、支部長が続ける。

「しかし、貴君らは都市を攻撃し、都市民を死傷させるという犯罪を犯している。また、貴君の名乗った国の名前は聞いたことがない。市民に対する防衛義務と、ギルド所属員の安全確保の面からも武装解除は受け入れられない。」

田中は困惑し、司令部に問い合わせる。

彼の勘が、ギルドという組織に対しての対処に待ったを掛けていた。


 ……しかし、中隊司令部は、ギルド所属員を戦時国際法における民間人ではなく民兵として処理するという決定を第二軍司令部が下していると通達し、併せて現地の早急な制圧を小隊に命令した。

……仕方がない、田中は通信を切り、未だ銃を構えて相手を警戒している部下に命令する。


※1 北日本に譲渡されたソヴィエツキ―・ソユーズ級戦艦の事。


※2 アメリカをはじめとする西側諸国の支援を受けている軍閥の一つであって、山東、江蘇、河南と河北省の一部を主な領土とする「中華連邦共和国」が満州人民共和国と起こした紛争。国境警備隊の銃撃戦が大規模な戦闘に繋がった。中華連邦共和国軍はアメリカ製の航空機や地上兵器で武装していた為、旧式のMig19等しかもたない満州軍では歯が立たず。より新しい装備を有する朝鮮人民軍の増援や北日本の援助により辛うじて撃退に成功する。Mig29、Su27とF16の空中戦、T72とM60の砲撃戦が起こる等、東側と西側の兵器が激突した紛争となる。


※3 冒険者ギルドは、この文明世界では各国に存在する一種の超国家的組織である。

軍や国家が担えないようなモンスター討伐や治安維持、運送業や商業を担う組織であり、あらゆる国家と中立である。特に、ボヘミア王国の様な小国ではギルドの存在が不可欠とされていた。……今の今までは。

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