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血の味

――口の中いっぱいに、血の味が広がっていく。



「死ねっ! 死ねっ!」

「うぐっ……!!」


路地裏に連れていかれ、力いっぱい殴られて蹴られた。

ユウヤ先輩はひっきりなしに死ね、殺すと口に出していた。

スーツは泥だらけになった。


「なんだこれ? センスねぇな」

「……っ!!」


途中であのビラを取り上げられ、笑いながら踏みつけられた。

スマホに残っていたサオリの写真を載せていたけれど、それもボロボロでまるでサオリが傷つけられたような気がした。

守らなくちゃ、サオリを守らなくちゃと思うのに、体中を痛めつけられて立ち上がることすらできない。

やっとの思いで這うようにして動いて、ボロボロになったビラをぎゅっと胸に抱きかかえた。

ごめん。ごめんサオリ。


「犯人は俺が探し出す。お前はもう消えろ」

「……いや、です」

「あ?」

「僕が、見つけるんです……サオリが安心して眠れるように……」

「はっ、笑わせんなよ」


馬鹿にしたようにユウヤ先輩が笑う。

言いたいこと、思っていることは何となく想像がつく。


「今更? あれだけサオリにひどいことしておいて? 償いのつもりかよ!」

「ぐっ……!!」


腹に力強い蹴りを入れられ、更にうずくまってしまった。


「何もかも遅いんだよ! サオリがどれだけ傷ついたと思ってんだ!?」

「悪いって……思ってます……でも! だから!」

「うっせーよ! もうマジで死ねよ!」


今度は顔を思い切り殴られる。口を切ったのか、血の味が滲む。

もはや血を拭う事すら出来ない。


「一つ教えてやる」


そう言ってユウヤ先輩にぐっと髪の毛を引っ張られた。


「前にサオリがお前のこと何て言ってたか教えてやろうか?――死んでほしいってよ」


それを聞いて、俺はカッと目を見開いた。

――嘘だ。サオリが、そんなこと言うはずがない。

でも。思われていてもおかしくない自分の行動を思い出してたまらなくなる。

ボロボロとまた涙があふれ出す。

体なんかより、心のほうがずっと痛い。



ねぇ、サオリ。

本当に、そんなこと言ったの?

ずっと、俺に死んでほしいって思ってた?

事故の犯人を捜すよりも、潔く死んでくれた方がサオリは嬉しい?

きっと死んでも俺は天国に行けない。サオリには一生会えない。

でもそのほうが、サオリは――嬉しいって思う?



「さっさと死ねよ」


ユウヤ先輩の言葉が聞こえた直後、頭に衝撃が走った。


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