外伝10話 過去の遺産 後編
アースティア暦1000年・5月22日・午前10時30分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央部地方・シベリナ中央地方・ダバード・ロード王国・アルインランド州 州都・ベルクラネル市郊外・アイリッシュ湖・ガイダル諸島・ガイダル本島・旧ロード・コスモ資本連合国ガイダル諸島空港遺跡にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ガイダル諸島での調査と作業は順調に進み、自衛隊と民間企業の作業員達らは、周囲の木々と雑草の刈り取りは殆んど済んでいた。
時よりダバード・ロード王国軍のアルインランド州の州軍が、開拓作業を手伝いに来てくれても居た。
滑走路のコンクリートの張り替えや誘導等の設置、管制塔らしき建物の改装。
そして、今日は格納庫と物資倉庫の探索が始まろうとして居た。
各員は各所を順番に、一つ一つ丁寧に調べて行く。
佐々木一尉の護衛を受けながら調査団の団長を勤める吉村義治は、記録を取って行く。
最初の作業が始まった当初、彼ら学者組は民間人と言う事も有って、後方に位置する所で待たされて居た。
飛行場までの通路と安全が確保されると、周囲を探索し、草刈などが終わり始めると建物の内部を調査を始めた。
そして、その過程で建物内に残された文物を回収して行く。
特にコレと言った物は無かったが、当時の物を思わされる物が結構残っていた。
超薄いタブレット、立体映像機、小型のパソコン、メモリチップの様な音楽ソフト。
日記帳に生活雑貨。有り触れた物だが、異文明の物なので貴重な物だと言えた。
吉村は元々はエジプト文明専門の考古学者だ。
こんな未来的な遺跡を調べるのも専門外と言える。
この世界にも古い石を用いた建物の遺跡も存在して居るが、ガイダル島等と同じ様な未来的、宇宙的な文明の廃墟や現役の設備がたくさん残って居た。
吉村は好きだったエジプトへの思いは有る物の、これからはこう言った文明の歴史編纂も必要に成るかも知れないと、文科省から出された写真の無い説明文だけの資料を見て、頼まれたこのガイダル島調査団の仕事を引き受けていた。
古くなり、ドアノブが壊れたのか、開け辛かったドアを無理やり切断して中に入り、薄暗い格納庫の中を懐中電灯を片手に進んで行く調査団。
先頭には、陸自の普通科隊員が、89式小銃を構えて進んでいた。
今の所、武装した人や罠の類は見つかって居ない。
電気が通って居ないので、閉ざされた建物の中は真っ暗な所だらけだった。
「佐々木隊長、中は大丈夫の様です。」
「分かった。今そっちへライトを持って行く。」
佐々木一尉からの無線通信の返答が返って来ると、取り合えず戦闘態勢を解いた隊員達。
其処へ、手にライトを携えて入って着たのは吉村だった。
「吉村先生、済みませんですね。お手数お掛けして・・・・・・」
「いやいや、此方こそ命を張って頂いて居るのです。これくらいのお手伝いは、させて頂きますよ。」
チョビ髭の温厚そうなおじさんが言う。彼はテレビの歴史のクイズ番組でお茶の間でも有名な人物だった。
それなので派遣された自衛隊員でも良く見知った著名な人物でもある。
何より気さくな人柄なので、調査団とダバード・ロード王国から訪れる人達からも、何れも吉村の呼び方が吉村先生で通っていた。
「では皆さん、明かりを設置しながら、安全を第一にを作業進めて下さい。」
「何か珍しい物をを見つけた場合は、声を大きく呼び掛けて言うか、近く人に声をかける様に・・・・・・・・・」
「「「「はいっ!」」」」
吉村達は、壁で仕切られた一つ一つの部屋を慎重に探りながら進んで行く。
進んだ先の幾つかある部屋を見つけ、陸自隊員達と考古学者等は、手分けして部屋を調べて行く。
調べて行く中で、この近辺の部屋のドアは、案外簡単に開く物も在ったりする。
だが、何れも飛行機を運搬する車か、部品や工具にクレーンが有る部屋と言う倉庫の類の部屋だけで、どれも取り分けて珍しい物で無かった。
「先生、これは・・・・・・・」
「うむ・・・・・ひょっとしたら昇降機では、無いかな。」
「では、この建物の何所かに、地下室への階段が?」
「在るかも知れん、いや、在る筈だ。」
「よーしっと。」
同行していた前田一尉は、近くの隊員達に階段が無いか探させた。
すると、15ある格納庫に昇降機が2機づつ在り、その内、15ヶ所で地下への通路が確認された。
だがしかし、10ヶ所の内、階段が壊れたり、鉄板の作りゆえか腐食で危険と判断されて通行が断念された所も在った。
其処で調査団は、東側の入り口から1番近い階段が、一番に安全と確認された所を使う事にしたのである。
「では降ります。」
「気を付けてな。」
吉村達に見送られながら前田一尉達は、記録用のカメラを回しながら地下へと降り立つ。
格納庫一階と外の指揮所では、カメラから送られる映像をモニターで見ていた。全員に緊張が走る。
これまでとは違い、丸で未知の何かを発見するかの様な雰囲気が出ていた。
「こちら前田、地下に到達した。」
「此方でも見えて居る。慎重に行けっ!!」
「はい。」
此処は400年間も放置された建物である。
こんな所で未知の生物が隠れて居るとも限らない。
出発前に説明でそんな話がされて注意されて居た。
特に竜史が官庁街の省庁の職員らに、国外へと出掛ける者達に注意喚起で言って居る。
例え安全圏な場所でも油断するなとね。
彼が入ったのは、調査団が第五格納庫と仮呼称した格納庫だった。
必然的に第五格納庫の真下に成る所だった。
基地と島は横向きで北側に建物が集中して建てられて居た。
滑走路は西向きに延びている。
従って格納庫は南に向き成って居た。
前田一尉は、ライトを南の方角へと向けると、其処には・・・・・・・・・・
「うわぁ、これは・・・・・・凄い。」
前田一尉が見た物は、アメリカのF-14・トムキャットに良く似た戦闘機であった。
「こちら前田、地下格納庫にて戦闘機らしき物体を発見しました。」
ライト急いで持ってきた隊員に明かりを灯させると、その戦闘機の全容が明らかに成る。
「2機ほど、格納されて居る様だな。」
「佐々木君、もう降りても良いかね。」
吉村は佐々木一尉に、地下室へ行く事の許可を求めた。
「前田、他には何も無いか?」
「ええ、大丈夫です。此処はどうやら戦闘機の格納庫区画の様です。」
「吉村先生。」
「分かった。みんな、急いでカメラや機材を持って行こう。」
学者組みが荷物を纏めて地下へと降り立った。其処には、宇宙戦争に出て来そうな戦闘機が置かれていた。
「吉村先生、見て下さい。まるでアメリカのF-14の様ですよ。」
「確かに、これは考古学とは別の意味で凄い発見だな。」
吉村が発見された物を見て感慨く答えた。
その横でSF作家で空想科学関連の参考人として召集され、調査団の顧問に付いて来て居る板川二郎と科学者である岩本昭彦博士が、戦闘機の側で何か気付いた様である。
「これは宇宙で飛べる様な設計に見えるな。岩本さんどう見ますか?」
「確かに、後部の二つの噴射口は小型だが、良く造り込まれたロケット噴射口だね。」
「それも未知の技術が使われて居るかも知れない。」
「ひょっとしたら、これを研究すれば、飛行技術が数十年は進む大発見に成りますね。」
「そうだな、だが、そうなると所有権利の問題も有るな。此処はダバード・ロード王国の領土だ。断りも無く研究の為だと軍事兵器を持ち出せるかね?」
「そうですね。上手く交渉が出きたら良いですね。」と板川は目の前のある意味、技術のお宝のを如何するのかが心配の様だった。
「状態は?」
その二人の側に吉村はやって来た。
「吉村先生。かなりと言うか、良すぎて不思議な位ですよ。」
「ですが、燃料か動力炉に関連する部分が意図的に外されて居ますね。」
「それはもしかして・・・・・・」
其れに付いては、吉村にも予想は出来て居る様だった。
「恐らくは小型の核エンジン関連かと。それも放射能の拡散を抑えている技術が用いられるか、似た動力炉を使用して居るか、それとも全くの別の物かは分かりませんが・・・・・・」
これはSF作品を良く見ていたりすれば、ある程度の齧った知識だけで誰もが予想が出来る事だった。
「吉村先生、エンジンや燃料部分のパーツがワザと外れさて居るのは、将来に措いてその部分が劣化する事を恐れた事だと思います。」
板川は、知って居る知識や自分の作品でも書かれて居る事から予測して、私見を皆に述べて居た。
「確かにな。後世の発見者が不意にエンジンを動かして、何らかの暴走や劣化による施設大破爆発。」
「それに伴う周辺地域の汚染は気を付けるべきと思ったのだろう。」
「しかし、良かったですよ。事前に放射能の計測をしましたが、問題は有りませんでしたし・・・・・」
念の為に調査前に放射能検知器で放射能を計測した結果、全ての数値が正常値を示していた。
「此処を放棄する前に、全てのパーツを取り外して何処かに破棄・放棄したのでしょうね。」
岩本も、倉庫内の状況を見る限り、そう結論付けた。
「しかし、一体、何処に・・・・・・・」
不可解な疑問が残る中、その謎は半月後に宇宙ステーションで勤務している宇宙飛行士らに由って解かれたのである。
何でもこの惑星の周囲では、見た事も無い巨大な建造物が漂って居るらしいとの報告が為されたからだ。
それも、どうやら何れの建造物は全てが無人だとの予測が成されて居た。
どうやら先人達は、宇宙技術や宇宙での生活を早々に放棄したらしい。
地球系転移国家の学者達は、恐らくは金が掛かるのと、何らかの理由で国力の低下が原因ではないかとの報告を纏めたのである。
しかしながら、後に発覚したのは、ルナルノワール・ブラックドラグリア族、通称名は黒竜人族が、放棄された月面都市や宇宙コロニーに居住して居る事が分かる。
直ぐに調査団を送りたかったが、大気圏突破の術が殆んど無かった為、転移ししてから初期の時代では断念せざるを得なかったと言う。
ガイダル諸島調査団は、日本とダバード・ロード王国へと、この事を調査結果を報告ず終わると、飛行場の改築工事を本格的に進めるのだった。
ダバード・ロード王国は発見された戦闘機を旧ロード・コスモ資本連合国の物と断定し、解析をする為に発見された物を日本国へ譲渡する事を決定した。
見返りは将来の発見された飛行機から齎された新飛行基本技術の譲渡と各種人材の育成である。
画して戦闘機の発見と魔導機兵の運搬、それとダバード・ロード王国のアーヤ・シュチュ―ド女王の思惑も有って、日本は自衛隊による西方方面輸送作戦の発動が、この後に発令されるのであった。