36話 自衛隊西方への大遠征。発動!輸送艦隊護衛大作戦・・・・・・なのです! 6
アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月30日・午後23時12分・ユーラシナ大陸・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・コヨミ半島・コヨミ皇国・万代藩・万代港・防衛省・新世界アースティア・ユーラシナ大陸調査自衛隊派遣隊総司令部・万代支部・日本国及び自衛隊専用区画港にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大陸派遣隊として派遣配備されていた2機種の戦闘ヘリ部隊が、かがに着陸を始めていた。
その指揮を執っているのは東地秀矢一尉、戦闘ヘリ部隊の総指揮を任されている黒田一尉とは同期の入隊だが、任官の順番の関係で、AH-1S戦闘ヘリコプター(コブラ)隊を扱っている第二部隊の隊長をと成って居る。
かがの艦橋には、普段はひゅうが艦長している成田剣侍一佐が、積み込み入れ替え作業の総指揮を出発前の事務作業中で忙しい置鮎一佐に代わって指揮を執っていた。
各部隊の幹部達は、今は会議で居ない上司に代わって無茶なスケジュール調整の辻褄を合わせる為に、懸命な作業を行っていた。
他の所も同様である。
「よし、着艦完了だ。やってくれ。」
「了解。」
東地一尉は、自分の隊を先にかがに詰め込んだあと、黒田一尉の部隊を順番に甲板のエレベーターで内部へと誘導する作業を海自隊員と共に行っていた。
ひゅうがの甲板では井上一佐の部下達が作業をしていた。
「ふうーっ。」
「どうした?疲れたなら交代しろ。」
「いいえ、ハードですがまだやれます。」
「そうか、だが無理はするな。事故に成るからな。」
「はい。」
艦橋の艦長席では成田一佐が、かがの隊員と共に工程表を見ながらの作業管理に追われていた。
「あと30分したら、今の連中を休憩させろ。」
「はい、分りました。」
「スケジュールに遅れは無いか?」
「はい、何とか午前三時には終わりそうです。」
「翌日に艦を動かすまでに交代させられそうだな。」
「はい、それは問題無く。」
「まったく、無茶な事を言って来るもんだよ、雑用大臣様は・・・・・・・・・」
その雑用大臣に対しての皮肉と悪態を言いつつ、成田は作業を進める。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月31日・午前6時00分・ユーラシナ大陸・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・コヨミ半島・コヨミ皇国・万代藩・万代港・防衛省・新世界アースティア・ユーラシナ大陸調査自衛隊派遣隊総司令部・万代支部・自衛隊宿舎にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、明けて翌朝のこと。
それは突然に始まり、彼らに取って当たり前の日常の風景の一つである。
起床ラッパが、万代港に建てられた自衛隊基地の各地で鳴り響き、職業病とも言われる規律正しい彼らが行動を始める。
「総員起こ~し。」
「起床、起床、急げーっ。」
ベッドのシーツ、毛布、布団、制服、ロッカーの中身に至るまでキチンとして居ないと、怒られるだけでは済まない。
一発で全てを終わらせ集合場所に来ないと後が怖い。
何故ならば、怖ーい上官達に、怒鳴られるからだ。
「ふあぁぁーっ、なぁ~に?」
「あら、瑞樹、起きちゃった?」
眠そうに目をこする瑞樹。
普段、彼女らはこんなに早く起きたり、騒がしく起床したりしないのであった。
まだ、この世界の軍隊は近代的な考えを持って居ないからである。
作戦や軍事行動をして居る場合を除いてたが・・・・・・・・・・・・・・・・
「何なの?」
「どうも、これが自衛隊のやり方らしいのよ。さっき女性の士官が来て、起しちゃいましたかって言われたのよ。」
既に着替え終えている同僚が目の前にいて慌てた。
「もう、出発?」
「違うわ。あたしは何時もの時間に起きただけよ。瑞樹はいつも夜が遅いでしょう?」
「それでも凄いわね。毎日、それも非番以外では、これを何時もやって居るのですもの。」
「出港50分前。」
港から出港時間に付いての放送が、館内と館外に向けて放送が流れて来る。
「もう少ししたら、お迎えが来るって言われてるわよ。」
日本側は自衛隊の規則を知らない彼女達に気を使って起こしに来ると事前に説明していた。
するとドアをノックする音が聞えた。
「おはよう御座います閣下。」
やって来たのは三石2佐だった。
女性が使っている部屋なので、男性には任せられない事であるからだ。
女性自衛官が増えたとは言え、全体から見ればまだまだ少ない事には変わりない。
それに女性の部屋を無闇に覗くと、少年ラブコメ漫画の様なラッキースケベなーんて、イベントのフラグをリアルに立てると色々大問題でもある。
「あら、琴実さん。お迎えご苦労様です。ちょっと待ってて下さいね。」
「はい。」
手荷物は事前に纏めてある為に、瑞樹の方は、後は着替えるだけだった。
着替えが終わると洗面所で顔を洗い身だしなみを整えて、二人揃って部屋を出た。
「お待たせしました。」
「では行きましょうか。お二人は、かがに乗船して頂きます。部屋はあちらの女性自衛官と相部屋になります。」
「ベッド等が狭いですので、ご注意を。」
「あらあら、あたしの胸が閊えなければ良いのだけれど・・・・」
三石は千棘の胸に目をやると、アニメ漫画の様に言う擬音が聞こえそうなくらいにボインと主張する大きなバストが聳え立つ、それを見て確かにと思った。
3人は、かがの停泊地で別れると瑞樹と千棘の二人は、そのまま三石は自分の艦であるきりしまに向かって行く姿を見送りながら、かがの艦内へと入る。
かがの艦橋で置鮎一佐に到着の挨拶をすると彼は、内線電話で食堂の状況を聞くと出港後の方が空いていると言い。
どうせなら出発前までの時間を使って一緒に朝食と言う話に成った。
3人の食事が済む頃合いには、いよいよダバ派遣艦隊の出港時間と成って居た。
「汽笛・警報機試し方開始。」
汽笛及び警報機の点検の為に警笛等を鳴らす。ブオオォォォぉーッと言う音が各艦から鳴り響く。
湾内から響く大きな音に万代市民はビックリするが、何だ出港かと二度寝に入る者が居る中で、作業準備は続けられた。
「機関試運転よーい。警戒配置に就けーーっ!」
慌しく進む出港準備、置鮎はある指示を出した。
「湾内の沖合い停泊する各艦に通達、航行予定の進路上の漁船、商戦、民間船の位置の報告、誘導を求むと伝えろ。」
「はい。」
「はやぶさ隊は10分早く先行し、進路を確保!」
「了解。」
「機関試運転終わり、結果良好。」
「舵・通信異常なし!」
「周辺に接近するものなーし。」
「いせから入電、進路上の船舶の誘導を完了。現在の所、船舶は確認されずとの事です。」
「出港30分前。」
「司令、出港30前になりました。各艦出港準備作業に入ります。」
今かがの指揮を執って居るのは、笹沼彰二佐である。
これは置鮎が全体指揮を執って居る為、副艦長の職に在る彼が、かがの仕事をしていた。
護衛艦それぞれの航海科の海士長が全艦放送のマイクで放送を流す。
「出港準備!」
警戒閉鎖は『警戒閉鎖』を行う。
艦内閉鎖は『警戒閉鎖』と『非常閉鎖』があり、『警戒閉鎖』は通常航海時に事故が起きた場合に備える閉鎖で、まだNBC攻撃や通常型ミサイル等での攻撃による被弾や火災、浸水には備えていない状態である。
よって通風口やウィングのハッチは閉じない。
非常閉鎖は合戦準備がかかると実施しなければいけない。
「艦内警戒閉鎖。前部員錨鎖つかめかた。」
投錨し、海底に埋まっていたメインアンカーの巻き上げ作業が開始される。
ガタガタと音を立てながら重い鉄鎖をウインチが巻き上げて行った。
艦内では、暫くしてから報告が上がって来る。
「艦内閉鎖のチェック終わり、不良箇所なし。」
笹沼と各艦の艦長らが一斉に指示を飛ばす。
「航海当直番配置につけ。」
「出港10分前、はやぶさ隊、先行出港するとの通信あり。」
指示を出している艦長らは腕時計を見つつ出港時間を待つ。
錨の巻上げが終われば出港となる為、時間になるまでは途中で錨を止められるのだ。
各艦の艦長の声がスピカーを通して響き渡る。
「出港3分前、ラッパ用意。」
ラッパは若い航海科の海士が担当するる出港準備を終え、出港へと直結する出港用意と同時にラッパを吹奏するのは、旧海軍からの伝統である。
「出港一分前・・・・・・・」
「ラッパ用意よし。」
ラッパ手がラッパを手に用意する。
港には外交団の要人、竜史や自衛隊幹部、万代藩のコヨミ皇国関係者が見送りに来ていた。
「出港用意。」
艦長の一言の声に、各艦のラッパ手が一斉に勢い良く、それでいて軽快に出港ラッパを吹奏した。
そして、一斉に当直の各艦の海曹が全艦放送で叫んだ。
「出港よおおおぉぉぉぉーいっ!」
数秒の短いラッパ号令だが港と艦内の自衛官、皇国軍人らの気を引き締めた。
各艦の艦長が命じる。
「錨を上げーっ!」
甲板で錨の巻上げが再開し巨大なメインアンカーが船首に収まる。
「甲板片付け。」
「錨甲板よろしい。各艦共に分かれて通常航行を開始します、司令。」
しばらくして作業が終わり、手の空いている者達と艦の操舵に関わりの少ない者達は港に向って敬礼と帽子を振って見送りの感謝と航海の無事を誓って出港して行った。
程なくして艦隊は、万代湾を抜けて海上にて合流、艦隊陣形を取り一路をパイプ・ライン大河の入り口へと向うのである。