アースティア大戦史・歴史紀行・第24回
アースティア暦1000年・4月25日当時は、ダバード・ロード王国の宰相であるアイサ・ノートは日本国との交渉準備に追われて居ました。
特にしなければ成らないのは、日本との交通路網と長距離連絡設備の整備でした。
定期的な交易や互いの首脳または大臣や官僚との交流を活発にして行くのには、やはり交通の便や通信設備の充実が良くなければ成らない事は、地球世界でもアースティア世界でも変わらない事は当然のことでしょう。
その点、ダバード・ロード王国と日本との交通路を考えると陸上の街道では、日本国の自動車なる乗り物では、数日掛かってしまいます。
次に鉄道と言う乗り物を整備すると成ると、莫大な費用と時間が掛かるのは明らかでした。
地球世界とは違って、空き地と国有地が圧倒的に多いアースティア世界に措いて、土地の買収費用は然程掛からないですが、大陸間横断鉄道の建設と成ると、本来ならば一世紀以上は掛かる国家事業プロジェクトです。
しかし、この航路は、一番便利で早いが、常にローラーナ帝国の嫌がらせ行為の有る危険地帯を通る事に成ります。
そして、ローラーナ帝国との国境沿いを流れるパイプ・ライン大河を使うのが、今考えられる現実的に最も日数が少ない方法でも有るのでした。
それでも大河沿いには、数多くの港が在り、各地へと続く川が流れているパイプ・ライン大河と繋がって居る所が多く、とても使い易い大河なのは、今日の太平の世に措いても、それは変わりありません。
ダバード・ロード王国でも、アルインランド州の州都・ベルクラネル市の近くのアイリッシュ湖もその一つでした。
アイサは、それとは別に有るもう一つ地点に目を付けました。
ダバード・ロード王国の国土交通管理省が管理して居る地図では、ガイダル諸島と書いて在るだけでしたが、
此処には400年前まで使われていた飛行場施設である旧ロード・コスモ資本連合国ガイダル諸島空港が遺跡と成って残って居ました。
何でもその場所には、空挺魔導戦艦専用の飛行場が在ったと記録には残って居ましたが、州都・ベルクラネル市の北へ50キロの地点へと飛行場が移転した事により、航路の変更が行われて、その当時では。全く使われずに放置されていたそうです。
それ以来、その飛行場は長い年月の間、忘れ去れて、誰にも気に留められず、荒れ果てるのに任せて居ました。
アイサは国土交通管理省から上がって来たガイダル諸島の旧飛行場の資料に目を通します。
国土交通管理省とは、ダバード・ロード王国に措ける日本国で言えば、国土交通省のことで、王都インディクスの官庁街に在る省庁の一つです。
彼女は、此処なら古い建物を取り壊すだけで済むかもと考え、新たな飛行場として日本政府に誘致をして見ないかと、アーヤ・シュチュ―ド女王に上申するのでした。
ダバード・ロード王国の宰相であるアイサ・ノートとアーヤ・シュチュ―ド女王の二人は、国王執務室で、日本国へと飛行場として貸し出し提供する予定のガイダル諸島に付いて話し合います。
「それで、600年も前の飛行場・・・・・本当に利用価値が有るのかしら?」
「はい、新しい所を探すにしても、多額の買収に費用が掛かりますし、候補地の選定も手間となるでしょう。」
「これから更に対帝国戦が激化する中で、食料生産に必要に田畑や木材の生産に必要な野山を下手に削る訳にも行きません。」
「その点、遺跡同然の旧ロード・コスモ資本連合国時代に作られた旧時代の飛行場を改修または建て直す方が良いか・・・あの遺跡は、確か巨人戦争が終わって暫くは使って居たわね?」
「はい、旧ロード・コスモ資本連合国は、第2次転移国家の一つで、宇宙なる所へ飛び出すほどの超文明を持って居たと聞き及びます。」
「しかし、転移して暫く経ってから巨人戦争が起きてしまっ為に、彼の国を始め、多くの超技術を使った兵器や飛行船が転移国家に由って、この世界に齎されたとと言われて居ります。」
「今やその技術の一旦は見られる事も在りますが、今現在に措いての現状では、その殆んどが失われ、我々の様な政府関係者や知識人以外では、昔話や御伽噺とされて居ますね。」
「それに我が国や隣国のオローシャ帝国は、巨人戦争後に第2次転移国家との戦後復興を早める為に、隣国の大国の国家との合併をする事と成りました。」
この世界は、第1次転移国家群と第2次転移国家群が在ります。
第1次転移国家群は王制国家と近代または現代的な民主国家で、前者が剣と魔法が主体の国家と後者が機械工業の発達していた民主国家でした。
第2次転移国家群は巨大なロボットと宇宙戦艦、そして巨人タイプの宇宙人がこの世界に転移して来て居たそうですが、今では遠い昔の話なので、第2次転移国家群は巨大なロボットと宇宙戦艦と言ったロストテクノロジーを再現する事は困難だと言われて居ます。
第1次転移国家時代の戦争を創世戦争、第2次転移国家時代を巨人戦争と呼んで居ました。
その後に邪神戦争という異界からの化物と対峙した戦争があり、邪神戦争の終結した後にローラーナ帝国は、当時国王であったギルバート・メリッシュ・ローラーナは、皇帝を名乗って世界統一を宣言、周辺国に戦争を仕掛けたそうですが、真意の所は分かりません。
その直接的な原因と成った理由は、今もって不明であるとされて居るからです。
この度重なる戦争のせいで、超技術を持った国家は合併したり、国力が傾いたりして徐々に消えて行きます。
それでも商業国家や都市国家連合には、代表選挙制度のみが制度として生き残る形と残って居ます。
そして、邪神戦争以前の歴史は徐々にお伽話と成って、人々の記憶の片隅へと追いやれて行くのでした。
「日本には、別件で飛行場の調査と発掘をして貰いつつ、改修か建て直しを頼みましょう。」
「日本の技師や学者関係者達と作業機材の運搬と迎えには、オローシャ帝国に居るリナの親友が、武装運送商会をして居る筈だから、その子に頼みましょう。」
「ああ、先頃、日本行きに付いてのオローシャ帝国からの返答の手紙を届けに来られたと言う方ですか。」
アイサは数日前にオローシャ帝国から使いとして訪れたシェスカーナ・フローレイティアと言う女性を思い出して居た。
「そうよ、シェスカの所有する私設艦隊ならば、この依頼を十分に引き受けられるわよ。」
「直ぐに魔水晶を要して頂戴、ミランダと直接話すわ。」
「分かりました。」
こうしてアーヤ女王は、オローシャ帝国の妹とも言える存在たるミランダ女皇帝を通じて、フローレイティア侯爵家現当主にして、フローレイティア輸送商船商会を経営して居るシェスカーナ・フローレイティアこと、シェスカに連絡を取り、シェスカの輸送艦隊を日本に派遣し、日本からガイダル諸島の旧飛行場遺跡施設を改築工事をする為に、日本国政府に対して、人員と資材と機材を運び込む手配を頼む事にしました。
シェスカは紅花園の誓い (こうかえんのちかい)の一人で、紅葉の親友の一人でも有った為の人選でした。
シェスカは武装輸送商会を経営する傍らで、オローシャ帝国の海軍にも所属して居る為に、、アーヤも勝手な事が出きないので、隣国であるオローシャ帝国の女帝、ミランダ・ランティーとの間で、フローレイティア武装輸送商会艦隊を使わせて欲しいと嘆願するしかありませんでした。
こうして、ダバード・ロード王国の安全保障問題政策の一つと成った、ガイダル諸島・タバ日統合隊基地の建設計画は、この様にして立案計画が為され、実行する事に成ったのですが、この計画に由って、アースティア世界内でも、まだ世界的に無名だったシェスカも表舞台へと出て来る事に成り、後に高見竜史と出会い、惹かれ合い、結婚する事に成る切っ掛けにも成ったのです。




