30話 ラクロアナ王国
アースティア暦1000年・アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月23日・午前9時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東側地方・ラクロアナ王国・アデニューム州 王都・アデニューム市・カリマンシェロ城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ユーラシナ大陸の東の果てに、ラクロアナ王国と言う国が在る。
北西には、ドラグリア山脈の東端が在り、山脈を国境として、その向こう側には、ドラグリア白龍大帝国の東端の領土が在った。
西側には、アルガス公国へと街道が続いて居り、東側には太平洋が広がって居たが、今はロシア共和国の国土が点在する海域へと変化して居た。
そんなラクロアナ王国の人口は、凡そ400万人で、国土面積は大よそ700kmである。
国土の3割が寒冷地に近い気候を有して居いた。
残り7割の国土が温暖で、日本の東北・関東地方に近い気候で。比較的過ごし安い土地柄であった。
そんな土地柄のお陰で、南部が稲作で北部が小麦と大麦の生産地、野菜類を含めた畑作も大体の物が取れる豊かな農地がたくさん在るのだ。
国土の東側が海に面して居るので、魚貝の加工品が名産でもあり、エールと言う酒も生産されて居る。
特に秋に獲れる鮭漁と一年を通じて漁に出られる海では、比較的寒い地域の魚とイカとホタテが獲れて、それらを干物にして売って居た。
他にも北部で牡蛎、南部で鮑が良く撮れて居る。
王都・アデニューム市の北側にはロアナ湖が広がって居て、多くの種類の川魚とシジミが良く取れて居ると言う。
このラクロアナ王国は、典型的な食料生産が得意な農林水産業主体の国家である。
金銀銅の鉱山と鉄の鉱山も在り、ファンタジー世界の国家としては、あまりにも典型的な普通の国家なのでパッとしないと国家とも言えるだろう。
首都であるアデニューム市は、王国国土の中央に在る。
北西にドラグリア山脈が広がって居て、その山脈から大河であるドナルク川が、流れ幾つもの湖を経てロアナ湖を通って下流へと注いでいる。
そのロアナ湖の側に王都であるアデニューム市は在るのであった。
国土の南部には、パイプ・ライン大河を挟んで二つの貿易拠点の都市が二つある。
北部に在るのは、グラッグ州のゼングリラ市と南部のシャン・ライア州領のロウデニィオン市である。
シャン・ライア州はラクロアナ王国の飛び地にして、無主の土地で無開拓だった所の土地を対帝国の防波堤として、100年掛けて開拓した地方である。
主要都市
王都・アデニューム市・アデニューム州。
湖畔の有る王都 湖畔近くにカリマンシェロ城が建って居る。
ロアナ湖が大変綺麗で、川魚が沢山獲れ、特にしじみとサケが良く獲れる。
ニュウヤーク市・ニュウヤーク州。
北西から流れるドナルク川の側にある都市にして。水運と漁港の町。
首都の往来と南北の町を水運と街道が貫いて居り、倉庫街と水産加工の工場が在る。
ゼングリラ市。
グラッグ州 パイプ・ライン大河北部の貿易港。
西へと向う為のハブ港。街道も西に延びていて、たくさんの倉庫街が立ち並ぶ港町。
此処で多くの荷物は馬車と船に分かれて運ばれて行く。
ロウデニィオン市・シャン・ライア州。
ゼングリラ市の南部に有ってパイプ・ライン大河から南側への貿易港。開拓と貿易の町。
コヨミ皇国と南部諸国、亜人国家との重要な拠点。帝国に対しての防壁の役目を担っている。
アデイリード市・トリドン州。
ドナルク川の上流にある都市で、鉱山の町、北西のドラグリア山脈周辺の山々から鉱物資源を掘っている。
サイグロブス市・シュナィーダー州。
冬になると豪雪地帯と成り、港は在る物の、冬には凍結してしまう。
北部の辺鄙な都市である為に、これと言った産業が無く、毛皮と石炭しか無いと言われていた。
後に日本が天然ガス・石油・アルミ・レアメタルの産地とし開発が進むと、日本と変わらない町へと変貌して行く事に成る。
政体は国王制を敷いて居るが、国務行政の頂点の長として、宰相と宰相府を行政の筆頭に置いている。次に元老院、その下に官僚制度を採用している。
爵位は勲功受賞制度を採用して居て、権力的な意味合いは無い。
中央集権制で中央から州知事が派遣されて来る。
普通選挙制度や民主主義と言う考え方ないので、国家試験をパスして5年から10年ほどの実務経験と政治経験が無いと特定の上位の長官職や元老院の議員に付けないのである。
軍は陸軍と最近になって沿岸と河川の防備に当たっていた水軍を海軍と警備隊に分けられている。
海軍と言っても出きたばかりなので、ちゃんとした物では無い。
それに共同作戦と言う考えは有っても統合運用の概念はまだ無い。
これは何処の国でもその様な発想に至っていない。通信技術が未熟な故である。
さて、この国に付いての紹介はこれ位だろう。アデニューム市の周囲には、所々に宿場町と農家の家が立ち並び、麦畑と畑作地が広がっている。
城の北側はロアナ湖があり、ドナルク川が北側から西回りにアデニューム市の南を回って東へと続いて流れている。
都市の近くには、港と海軍と水上警備隊の基地が在る。
城の城壁や海軍などの基地には、ドラグリア山脈から豊富に採掘された鉄を加工して作られた大量の大砲が配備されて居た。
ラクロアナ国王の軍事力は、兵力が60万人。歩兵20万人。騎士甲冑を許された騎士身分(少尉以上の軍人)が30万人。
その内訳は、騎馬隊10万人、重騎士10万人、近衛隊3万人、飛竜騎士1万人、騎士団4万人、海軍が全軍で22万人である。
海軍はその特殊性的な組織である為に、乗船経験と先任制の士官が指揮権の優先となる為に、戦争でや訓練成績が優秀な者が、例え学力が劣り、生まれが農民で有ったとしても優秀な者の出世が出きる様に成っている。
陸軍は体力と試験と士官学校の出来の良さだけで人事の査定と出世コースが決まってしまう事が多く、高い学費が払えるお金持ちがの家柄が多く、貧乏人が官僚や軍部の中枢や指揮官に上り詰める為には、その門徒がとても狭かったのであった。
それ故に、海軍と陸軍の仲は、お互いに悪いと言える。
貧困層(海軍)対裕福層(陸軍)
無論、これは表面的な事であり、海軍にも裕福な者もいるし、その逆も然りである。
湖畔に聳え建っていて、灰色の石材を使い、屋根が赤く染まっているカリマンシェロ城。
その国王の部屋には、ラクロアナ国王であるレビル・アブヒム・ラクロアナ国王がベッドで横に成っていた。現在60歳で、この王は決して死に掛けている訳ではない。
ただ、長年の政務に於ける激務が祟り、床に伏せる回数が多くなっていた。彼の王は、余り戦場には出て居ないが、政務と来れば大半が座り仕事である。
仕事は立っているのと座っているのとで、どちらが楽かと問われれば、人それぞれに由るが、前者と答えるのが大半ではなかろうか?
座っての仕事は一見して楽に見えるが、かなり腰に来きて疲れるのだ。トラックやその他の乗り物の運転の仕事や旅行でのドライブも、そうと言える状態だろう。
レビル王は腰と過労に長年の間、悩まされて来た人物であった。
「ふぅ、フランよ。済まないな。父がすっかり年老いたばかりに、もう少しだけと思っているのだが・・・・どうにも体が言う事を聞かんのだ。」
「いいえ、お父様の長い間のご苦労を思えば、わたくしも臣下も、民草も国の為に尽くして来たそのご苦労を良く存じております。」
国王の寝室には、1人娘で次代の女王となるフランシェスカ・アブヒム・ラクロアナがベッドの横で、椅子に腰掛けながら父の手を取ってその身体を労わっていた。
現在、彼女は20歳。あと数年すれば王位を譲られるだろうと言われて居る。
しかし、国王が年老いて生まれた王妃は、余りにも不憫な時代に生まれ、国の後を継ぐには、遅過ぎるとも言われている。
レビルの妻であるジェシカ王妃は産後の具合が悪くなり、フラン王女が生まれてから一年で亡くなっていた。王妃の亡くなった当時の年齢は35歳であった。
せめて男子が生まれていたら、王妃が生きて居たらとも言われていたが、二人は結婚してから10年も子宝に恵まれないと言う悲運が続いていた。
年老いて生まれた跡継ぎに、多くの臣下と国民は不安視していた。レビル王はあと少し、あと少しと、言いつつ、愛娘が25歳を過ぎるまでに国政の引継ぎと婿探しを済ませる積りであった。
だが、彼の身体は、長年の激務で蓄積された疲れが蝕み、言う事を聞いてくれなく成っていた。
帝国が目の前に迫ったこの時代に、フラン王女は過酷な船出をしなければ成らなかったのである。
「王女殿下。そろそろお時間で有らせられます。」
控えていた女性の従者に公務の時間を告げられる。
「フラン、もう良いから行きなさい。」
「はい。」
フランは名残惜しそうな感じで、レビルの元を離れた。
「お父様、では後ほど・・・・・」
フランが部屋を出て行きドアが閉まる。
「本当に不憫な時代に生まれた子だ。」
「せめて・・・せめてあの子がもう少しだけ、早く生まれていれば・・・マシな形で国を継がせられたものを・・・・・ごほっ、ごほっ、この国はあの子の代で終わるのか・・・・・・・・」
「うううっ、うううっ・・・・・・・・」
誰も居ない王の寝室で、その主のすすり泣く声が漏れてきた。
それを聞く者は誰も居ない。
間も無くこの国にも、激しく吹き荒れる激動の時代と言う名の嵐が吹こうとしている。
アースティア暦1000年・アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月1日・午前9時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東側地方・ラクロアナ王国・アデニューム州 王都・アデニューム市・カリマンシェロ城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ラクロアナ王国 カリマンシェロ城にて・・・・・・・・・・・
この日、国王の執務室でフラン王女は、父に成り代わって政務の代行していた。
赤く染まった髪と物静でお淑やかな雰囲気の王女は、黙々と各省庁の役所から上がってくる書類と睨めっこして判子とサインをしたり、直近くの部屋で詰めている各省庁の担当官僚に、質問をしたりして居た。
そんな彼女の元に外交省経由からある手紙が届いた。
「失礼致します。殿下、王女殿下と国王陛下宛にお手紙です。」
「あら、珍しいですわね。国政に関わらないお父様やわたくし個人に宛てた手紙なら纏めて、公務の後の時間に纏めて持ってくる筈ですのに。一体、何所のどなたからですの?」
「はっ、フラン殿下宛には、コヨミ皇国のクレハ皇女殿下からであります。陛下への手紙は、リキヒト国皇陛下からです。それと見たことも無い紙で出きている箱が送られております。」
「まぁ、クレハから?リキヒト陛下からもお手紙を下さるなんて久しく有りませんでしたわね。」
久し振りに聞く懐かしい友人の名に、ぱあっと顔が明るくなったフラン。
「陛下へのお手紙は、如何が致しますか?」
外交官僚は、国王への取り次ぎに付いてお伺いして来た。
「今日もお加減が余り良くないわ。わたくしが読んだ上で、居りを見てお見せします。」
「はっ、承知致しました。」
外交官僚が執務室を出て行く。フランは目の前の書類に目を通し、適切に処理し終えると、紅葉からの手紙を広げた。
「拝啓、フランシェスカ様。私はとある事をお伝えしたくて、久し振りにお手紙をお送り致します。今私はニホンと言う国に滞在して居ます。」
「ニホン?そんな国・・・・在ったかしら?」
フランはニホンと言う国の名に、首を傾げながら手紙の続きを読み進めて行く。
「ニホンは、ラクロアナ王国から南東の方角に浮かぶ島国です。実はニホンは1月前に異世界から転移してきた異世界の国なのです。」
「異世界?」
「異世界から国家が丸ごと転移してくるなんて何の冗談?信じられないと仰るでしょう。ですが本当の話です。」
「この国の事は、一言ではとても言い表せないでしょう。とにかく見る物、触れるもの全てが物凄い。シャシンと言う絵図と日本の資料本をだんぼーるなる紙の箱でお送りします。」
フランは、見たことも無い紙で出きている割には、頑丈そうな出来栄えのする紙の箱は、見慣れぬ紙の様な物で封がされていた。
彼女は、ダンボール蓋を止めてあったガムテープをペイパーナイフを使って切り裂いて箱の蓋を開いた。
「紙の箱ね・・・・まぁ、クレハ、久し振りに貴女をお顔を見たわ。確かに、これは凄いわね。」
紅葉の写った写真と彼女がカメラで撮影した日本の風景の写真。日本政府が用意した資料本、通称カタログ。
そんな感じの名前で交援省と日本政府は呼んでいる本が30冊ほど入っていた。
「それと近々、貴女のお国にもニホン外交官僚が向うと思います。その時には良しなに。」
「それと東にはロシア共和国と言う国が在ります。ニホンと同じ異世界から転移してき来た国の一つで、東に400キロほど進んだ海上に在りますので、貴国の民と軍との諍いが起こらない様に対処をお願い致します。」
「追伸、お互いに、身の回りが落ち着いたらお茶でもご一緒しましょうね。」
紅葉からの手紙は、簡単にそして、簡潔な手紙であったが、書かれていた内容は、ラクロアナ王国に取って国家の一大事と呼べる内容が書かれていた。
「まぁ、大変。ええと、取り敢えず私は如何しましょう。」
久振りのお友達からの手紙と思って読んて見たら、トンデモない内容が書かれていた。
東と南東に見知らぬ国家が異世界から現れた?
何も知らない王国軍か警備隊、国民が異世界国家の領海をへと進入してしまったら、大変な事になる。
フランは、呼び鈴を鳴らすと取り次役をしている王室職員を呼び出す。
「フラン様何か御用でしょうか?」
「至急、宰相府と軍務省と外交省に使いを、オルバ宰相を始め外交と国防の責任者を王城会議室へ呼び出して、重要な外交事案が有ると伝えて下さいませ。」
「はっ。」
「クレハ・・・・貴女は本当に、何時も何時も、トンでもない事をしますわ。」
フランは執務室からベランダへと出ると、遠く南東の方角を見て、紅葉が居るであろう日本国とは如何なる国であろうと思うのであった。