外伝5話 動き出す者たち
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月11日・午後19時00分頃・ユーラシナ大陸・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・コヨミ半島・コヨミ皇国・皇都・星都市・星都城・謁見の間にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この日、日本政府から対馬の陸上自衛隊対馬駐屯地経由の通信で、南西国藩の加古島市内にいる外務省職員を中心として駐在員に無線連絡が入る。
国交開設に向けて、南西国藩の加古島市には、外務省職員と陸自隊員の連絡員が派遣され、駐在していた。
政府から送られた通信の内容には、日本政府からコヨミ皇国への要求と要請が書かれた書状と紅葉が両親宛てに書いて送った書状の二通をコヨミ皇国皇政府へと届ける様にとの通達であった。
程なくして2通の書状は対馬に届けられ、加古島市いる駐在員の下へ届けられた。
直ぐに外務職員等は南西山城へとお向き、日本から送り届けられた書状をコヨミ皇国の皇都である星都市に滞在している嶋津義隆に届ける様に頼んだ。
それに対応した藩士は、その日の内に早馬を出立させると、次の日の朝には早馬が星都市に到着する。
日本からの書状を受け取つた嶋津義隆は、すぐさま宮中に参内し、日本からの報せをコヨミ皇国の国皇である力仁国皇に届けたのであった。
星都城の中央の巨大な天守閣の真下に在る謁見の館と言う建物にて義隆は、力仁国皇に謁見する為に座って居た。
「主上様。ニホン国政府よりの書状と二ホン国に滞在中の姫様よりの書状が参りまして御座います。」
義隆は近衛の従者に封筒に入った2通の書状を手渡す。
それを受け取った力仁は真剣な表情で日本政府の書状を読み、続いて娘からの補足説明と日本国内の情勢や自身の近況等に付いて書かれた手紙を読んで、その表情は、徐々に柔らかな物へと変わる。
「・・・・・・うむ・・ふむふむ。おおっ!遂に彼の国の政局がようやく定まったらしい。」
「左様で御座いますか?」
「ニホン国は、我が皇国の万代港と加古島港の2港の借り受けと拡張改築工事。星都市と万代市と繋ぐ街道である万星街道の拡張改築工事。」
「万代市南東に在る平野に港と併設して飛行場なる施設を含めた巨大なニホン軍の基地建設。星都市にも東側の土地を基地と大使館、飛行場を建設したいと言って来て居る。」
「我が国の国内の土地に、他国の軍事基地をですか?しかし、国内の大名領主や国民から不満の声が出る恐れが有るかと・・・・・・・・」
昨今の国内の帝国との不戦講和と徹底抗戦の開戦派に分かれているコヨミ皇国。
その情勢を鑑みて居る義隆は、大きな心配と不安を感じてしまう。
「確かに、それも有るだろう。」
「しかしだな、紅葉の手紙では、ニホン国の申し出を受けて置いて損は無いと言って来ておる。」
「後々の太平の世と成った時には、それらの土地や施設は必要に応じて無償で返却、又は一部の経費を負担する事で返却する事と成ると有る。」
「詰まりは、大半の施設が日本政府の支援投資と言う形で造られるのだ。」
「オマケに道普請までして貰えるのだから、此方としては損は無いし、得しかないだろう。」
「帝国との戦争さえ片付けば、経済発展の効果は莫大な物と成るだろうと紅葉の奴も言って来ておる。」
「それは我が藩にも関わりが有る事ゆえ、嬉しい話で有りますが・・・・・・・・・」
「それでも不安は拭い切れないですな。」
「やはり、心配なのはコヨミ皇国の国内が、どう言った形で荒れるのかが、心配ですな。」
日本国内の国政と民意が荒れるのは一先ずは収まったが、義隆は今度は、コヨミ皇国の国内の政局が荒れ、二大派閥の政治闘争に発展し、最悪は内戦に突入するので無いかと不安になった。
そう成れば南北朝時代や応仁の乱の乱や戊辰戦争の様な大乱に成るのは必定だろうと予想された。
日本史の中でも戦国時代を除いて、この時代は特に二派に別れて戦い合った酷い時代とも言える。
最もコヨミ皇国内では、徹底抗戦の開戦派が有利で、帝国との不戦講和は帝国との密議や寝返りの誘い。
更にはは賄賂の送り合いをして居るとの黒い噂話が絶えない為か、賛同する者が少ないので、数的な不利な状況に陥って居た。
そんな理由からコヨミ皇室とコヨミ皇国政府、徹底抗戦の開戦派の諸大名に対する反乱や決起挙兵を起こそうする動きは今の処は抑えられていた。
「まぁ、そう心配するな。ニホン国は民が政治を決めている。そう簡単には侵略など出きないと書かれている。」
「80年前の異世界での世界大戦で、こっぴどく負けたのが余程堪えて居る様だ。」
「下手をすれば腰砕けにもなり兼ねないとも紅葉は言って居るが、国防の意識は高いとの情報も書かれて居る。」
「それに先ほども言ったが、帝国との戦争に片が着けば、一部を残して撤収させるともある。」
「我が国がニホンの手を本当に要らないと言えば、基地からの引き上げにも応じるとも有る。」
「然したる大きな問題は有るまい。」
「それに残った施設等は、我が皇国がニホン国の指導の下で運用が出きる様にしてくれるそうだ。」
「其処までアフターサービスが良いのなら、基地の誘致や貸し出しを受けて置いて損には成るまい。」
力仁の判断は間違って居ないだろう。
日本は某赤旗のぼったくり国の国策で世界中に軍事基地を造って居座ろうとする考えを持って居ないからである。
だから安心しても問題ない。
日本からの申し出は、第二次世界大戦後のアメリカ形式に近い提案を提示して居るのだった。
駐留契約を白紙に又は見直しと言えば、日本は応じると言って居るので力仁は安心して契約書にサインが出きると思って居るし、何よりも娘本人と娘が秘めて居る力である星読みの巫女としての力の保証付きなのだから・・・・・・・・・・
「それで主上様・・・・・」
「誰か居るか?」
「はっ、お呼びで御座いますか?」
力仁の側に近衛の近習が現れる。
「紙と筆を持て、そして書いた書状を万代藩主である伊達愛海に届けよ。」
「畏まりまして御座います。」
「これから色々と忙しくなるな。」
「義隆殿、近日中に閣僚と諸侯を集めた御前会議を招集する。」
「その方にも色々ニホンに付いて聞く事も有ろう。」
「はっ!!お任せ下さりませっ!!」
コヨミ皇国の力仁国皇は、日本からの申し出を全面的に受け入れるのを決めたのであった。
力仁は紅葉からの手紙にも書かれていたアドバイスを参考に日本が使用したい土地の無償提供を決めたのであった。
コヨミ皇国内の道路・鉄道・港湾・空港・各種鉱山を日本国から齎された新技術を用いた開発と再開発は、提供した土地以上に御釣りと儲けが出ると踏んだからであった。
人件費と一部の物資だけはどうしてもお金が掛かるけどね。
まぁ、日本国内で建設するより格段に安くなる事だけは間違いない。
更に半日・・・・午後3時くらいであろうか。
万代国の万代藩を治める藩主の伊達愛海は、力仁国皇から書状を受け取って居た。
万代青葉山城の3階層の館の3階から城下を見下ろしつつ、別ルートで送られてきていた紅葉の手紙を読み、次いで力仁からの書状を受け取って居た。
「紅葉からの手紙が届いてから4日、もう少し掛かると思って居たけど、主上様が動かれたのは、私が思って居たよりも、思いのほか早かったわね。」
「はい。」
「主上様は、ニホン国に全面協力せよと伝えて来たわ。」
「例え皇国が内戦になっても、帝国との全面戦争に突入しても、ニホン軍と彼の国の国力を背景にした私の万代の町はこれで絶対的に安泰と成ったわよ。」
愛実は扇子を大きく広げていた。
描かれて居るのは、赤と藍色と金の色で描かれた孔雀に似た鳥の絵図である。
その裏側には「私の人生はボロ儲け」と自分にしか見えない様に茶目っ気のあるふざけた文面が書かれている。
「我が藩に取って、どっちに転んでも儲かるだけね。」
「うふふっ、何だか面白く成って来たわ。」
「万代藩を店仕舞いして、伊達商会として南の亜人中立連合にでも移民しようかと思っていた所に、トンでもない儲け話がやって来たわ。」
「ホンと持つべきものは親友よね。」
「愛海さま、余り金儲けばかりを言って居られますと・・・・お友達が・・・・・・・・」
「何か言った?」
「いえ、何も・・・・・」
片倉喜多が苦言を言っても、愛海の目は金貨と成って居て、完全に上の空であった。
「喜多、数日中にニホン海軍の艦隊と物資を満載にした貨物船の船団が来るそうよ。」
「港の警備を万代藩の陸水の両藩軍に伝えて。」
「皇国の地方軍にも同じく。それと足柄一葉大将軍閣下が、ニホンの先遣隊を出迎えに来るそうよ。」
「えっと・・・後は・・・そうだわ。家の商会も含めて職業斡旋商会に対して、何時でも対応出きる様にと、各商会の寄合に触れ回って置いてくれる?」
「畏まりまして御座います。」
片倉喜多、仕事を真面目にこなすが、時より苦言の中に毒舌の台詞が混じって居た。
万代藩は日本国の先遣隊と使節団及び自衛隊の受け入れ準備に入ったのであった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月12日・午後13時45分頃・ユーラシナ大陸・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本国・九州島地方・長崎市・長崎港付近に在る喫茶店にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
高見竜史は一旦、自宅に帰えると両親に事情を説明した。
今度、内閣に新たに新設する省庁が出きるらしく、自分はその省庁のトップたるどの党にも属さない無所属の民間採用の内閣特命担当大臣に任命されたと・・・・・・・。
母からはバイトよりはマシだが、何時クビに成っても可笑しくないバイトよりもブラックな職業だと息子を空かって居た。
父は何も言わなかったが、東京へと出て行く前に、霧野市内に在る全国大手スーツ専門チェーン店のスーツの赤木・霧野市店で、値段が高いスーツを一式を買ってくれていた。
そして、異世界国家交流総合支援省の設置と開設が、国会での議決が決まると、内閣に列席している議員の先生方は、今にでも何だかんだで逃げられそうな竜史を皇居に来させ、天皇陛下から交援大臣の任命状を受け取られさせられるのであった。
「はぁ~。これでいよいよ、逃げられなくなった。」と彼はボヤいたと言う。
そんな竜史ら陛下は、大変でしょうが頑張って下さいとお声掛けして下さったと言う。
後年、竜史は天皇陛下とのご縁は、この時から始まったと言って居る。
晩年に成ってアースティア大戦での功績を称えて、勲章を賜った際にも、完全に公職から離れた今の自分と陛下とが、またお会い出来るとは思ってませんでしたと語って居る。
そして、 竜史は紅葉のお供の為に、飛行機で長崎市に来ていた。
紅葉の視察旅行と言う名目での接待と言う名のお守りを押し付けられて居た。
長崎市は江戸時代の鎖国政策での日本国唯一の貿易港であり、幕末から明治に掛けては、頻繁に外国との貿易と倒幕志士達の活動拠点としても知られていた。
特にこの地には、旧日本海軍の巨大戦艦や自衛隊の護衛艦を作り続けている有名な会社、三葉造船重工業が在るからでもあった。
今日の紅葉達は、貨物船の造船ドッグを見に来ていた。
・・・・・と言うか急に見たいと言われて三葉造船重工業に問い合わせると、最初は渋っていたが、新大臣の高見とコヨミ皇国の皇女の二人が、視察の為に見に行くと伝えると、その態度がガラリと変わった。
「本当は作業の危険な事もあってアポ無しでの見学は、お断りをして居るのですが・・・・・・・」と渋々な感じの顔付きで、広報担当者が応対して来たのであったが、どうやら関連グループのお偉いさんから、鶴の一声が有った様である。
「それで・・・・何でまた僕なんですか?」
造船所の見学を終えた一行は、市内の喫茶店に入っていた。
竜史は、そろそろ自分を国家間の騒動に巻き込んだ理由を紅葉に聞きたかった。
「また、会いましょうと言いましたよね。」
「ええ、確かにですね。こうして会えましたよ。その理由も政府の人から聞いますし、何でも超能力が有るとか。」
「では問題は無いでしょう?」
「大有りですっ!!!」
紅葉ののらりくらりとした態度に対して、竜史は怒って叫ぶ。
竜史は自由で気ままに生きる事が信条としていた。
そんな彼は紅葉に自由を束縛された為に、少しでも怒ろうと語気を強めて叫ぶ。
「でも貴女は、お仕事も得られてお好きな趣味の方の現場も守られる。」
「そして、私は祖国と世界の安泰、私の心の平和と貞操も守られる。誰が損をしていると言うの?」
紅葉は祖国の講和派閥に、講和の為に帝国のローラーナ帝国軍の帝国東方制圧軍総司令官を務めている第五皇子ゾイザル・セイダル・ローラーナに嫁げと言われていた。
それは正に、貞操の危機である。
勿論、そんな事はお断りと言って、講和派閥首謀者から関係者の末端と協力者に至るまで、徹底的に痛め付けてやった。
それも相手側から恨まれる位にね。
(僕の心の平和は?)
「貴方の心の平和が、如何かしましたか?」
「ぐっ・・・・・・」
ニコニコ笑顔の皇女様に、苦虫を噛み潰した顔している青年。
竜史は迂闊な考えを想い浮かべないと思った。
彼女はあの日、ヘリコプター搭載護衛艦のいせで出会った竜史。
その彼の未来と自分の未来が重なり共に歩んで行く事を先読みの力で知り得えた。
本当は大臣任命等では無く、仕事に困った彼が政府の臨時職員に応募して活躍する未来なのを、彼女が積極的に推薦したとする未来、その先の未来がどうなるのかを読み進める。
するとその結末は、全く異なる別の未来なるのが見えたのである。
其処で紅葉は決意する。
成らば、その未来をいっその事、思い切って利用してやろうと思い付いたのである。
正に悪どいと言っても良いだろう。
彼女はここ数日の間に一緒に居ていて分かった事が有る。
彼と一緒に事を成し遂げれば、とても良い事とが起こるそんな気がしていた。
もっと先の未来を見たいが、その先の未来が定まって居ないらしく。
それ以上のこの世界と竜史や紅葉、二人に関わる人々の未来が見えて来ないのでたある。
紅葉は、まだ見ぬ未来に思いを馳せてワクワクしていた。
そして、新たな出会いを通じて手元に置きたいと思った新しい玩具である目の前の年下の青年を揶揄いつつ、コロコロと変わる表情を面白がっていた。
(要するに、このお姫様は日本の首脳陣や官僚の連中が、自分の思うように動けそうにない時に動かせる手駒が欲しい訳だな。)
「はい、それ正解の一つ。」
「くうううーっっ・・・・・・・」
「やっぱり、この子、本当に面白い子ね。」
青年は、決して関わってはイケナイ人物に目を付けられた事に後悔していた。
そして、これから先の起きる災難的な日々の幕開けでも有ったりするが、後年のこの二人がすったもんだの末に異世界特別婚姻法を利用した形で、一夫多妻の夫婦に成ろうと言う事を、竜史はまだ知らない。
因みの後年、結婚した二人は、長崎市での視察散策に関して、紅葉は初デートと称して居るが、竜史の方は仕切りに、この事を否定して居り、この事を死別するまで痴話喧嘩のネタに成って居た様です。
何でもシェスカーナ・フローレイティアこと、シェスカとの関係を気にしての事だったと言われて居る。
竜史に取って初の彼女は、シェスカだったと公言しており、初デートはシェスカであると言い切って居るが、負けず嫌いで嫉妬深い紅葉は対抗心をむき出しで反論して居るから始末に負えなかった様である。




