16話 ゼロから始める異世界の外交政策 1
西暦2030年・4月10日・午前10時30分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・日本国・中部地方・東海地域・静岡県・伊豆地域・熱海市・ヤマハトヤホテルにて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
内閣官房長官の高橋裕貴の呼び出しを受けた高見竜史は、故郷である霧野市から東京へと向かう為に、地元から東京へと行くべく。
地元から東京の浅草までを繋ぐ私鉄である東方鉄道株式会社が運営して居る路線である東方線・上州号に乗り込み、東京の浅草駅に到着する。
其処で日本政府の出迎えを受けると、今度は熱海に向かうとの事。
何でもさる御方の身の安全を守る為とか。
半日ほど掛けて目的地である温泉地で有名な熱海へと向う。
鉄道で熱海駅に到着すると、其処から熱海にある宿泊予定のヤマハトヤホテルまで、政府が用意して居た送迎用のバスで向かう。
ヤマハトヤホテルは、伊東市に拠点を置くホテルグループで、1961年頃から放映されたCМソングが有名と成ってホテルである。
「伊東と熱海に行くならヤマハトヤ♪電話は・・・・」と言うフレーズは余りにも有名過ぎて、著名なお笑い芸人にネタとして使われて居た程である。
総理官邸付きの職員の話では、安元総理との面会は夕食を食べながら行うと説明を受けて、夕刻まで温泉に浸かる等をして、ゆっくり過ごす竜史。
夕方に成ると、いよいよ安元総理との面会が始まるのであった。
「高見竜史君、わざわざこんな遠くに来て貰って済まないね。」
「社交辞令は良いですよ。」
「それよりも僕みたいなしがない青年に、国家の重鎮たる総理大臣に呼び出される覚えも、知人に持った覚えも無いのですけど・・・・・」
ホテルの小部屋一室で安元総理の出迎え受けた。
しかも、この部屋は食事を静かに楽しみたい客の為の個室だ。
事前に予約をして置けば、誰でも使えるが、チョッとだけお高い値段でも在る所だった。
「確かに君と俺には接点が無い。これは事実なんだが、共通の境遇を持っている。」
「それって日本の時空転移ですよね?」
「それも有る。が・・・もう一つある筈だ。」
「それは・・・・・強いて言って、有るとすれば、あさくら号の異世界軍の襲撃くらいしか無いと思いますけど?」
「そうだ。直接の被害者でも有る君に、ある事を是非、頼みたいと言って居る人物が居る。」
「そんな人物に心当たりは無いのですけど・・・・」
竜史は安元の問いの答えに付いて、まだ分からなかった。
しかし、脳裏には一つだけ、そう・・・・たった一つだけ心当たりが有る様な気がして居た。
「有る筈だよ。一人だけね、君とは一度だけ会って居る。」
「あ・・・・でもなぁ・・・・・・」
「分かったみたいだね。」
「ええ、でも・・・・・正直言って関わりたくないと言う・・・いや、関わるなと言う嫌な予感と言う物が、直感でひしひしと感じて居るのですが・・・・・・・」
「その元凶がまさか・・・・・・ヘリコプター搭載型護衛艦ひゅうがで出会ったあの・・・・お姫様。」
そのお姫様は竜史との別れ際に、「また会いましょう」何て言葉を言って居たのを思い出した。
それが、まさか・・・本当に成るとは・・・・・・・・・
竜史は正直言って面を喰らって居た。
だって、アレっ切りの関係だと思って居たからだ。
丸で彼の首に首輪とリードの紐で繋がれて居る気分だった。
当の紅葉からすれば、お告げの相手であり、祖国の未来を救うかも知れない人物をそのまま見逃す筈も放置して置く訳も無く。
しっかりと紐で縛って置く気、満々であった。
ある意味、これは他者からすれば大変に嫌なラブコールであり、運命の赤い糸では無くて、赤い紐を首輪付きでガッチリと縛って置く様な物である。
だが、コヨミの女系皇族を舐めてはイケない。
狙った獲物は確実に捕獲し決して離さないのが遺伝として受け継がれているし、歴代全てが、そうして来た居るのである。
紅葉も、その血の宿命と本能に従う事だろう。
「彼女の目的は故国を救いたい事なのだろうが、君を選んだのは、コヨミ皇国の女系に受け継がれて居る超能力の一つである予知能力から、君が選ばれた存在であるらしい。」
「まぁ、本当ならば、そんなオカルトめいた力が如何こうと言ってたとしても、そんな事で国を動かすのも不味いんだろうけど、その力の一端を目の前で見せられては、我々としても信じざる負えない。」
「そんな訳で俺と紅葉皇女殿下とも話し合って、この混乱する異世界で事態の収集する仕事の一旦を君にやって貰いたと決めた。」
「本当の所、日本政府としては、学者や政治家、官僚がやるべきなのだが・・・・彼女はね、彼女の力で見出したと言う君にやって貰いたいと言って居る。」
「それに俺としては、予知能力の話とは別にして、初接触の国の要人と相手国の機嫌ぐらい取って置きたい。ってな感じで国益も絡んで居ると言うのが本音でもあるんだ。」
「まぁ、詳しい指名の理由の話は本人から聞いてくれ。」
「取り敢えず政府として、我々は君を内閣特別担当大臣として、この異世界での対応をどうすべきなのかを検討する省庁である異世界国家交流統合支援省を設立し、担当大臣として任命する積りで居る。」
「この仕事を是非、君に仕事を頼みたい。」
「勿論、補佐は大量に付けるから、その辺の事は心配しないで欲しい。」
「それに君は、これから就活と聞いて居るが、今の国の状態では、無事にまともな仕事に就けるのも難しい筈だ。」
「此方の君に関する素行調査では、就職先から採用の撤回が通達されたと聞いている。」
「この話は悪い話では無い筈だよ。」
安元は事前に調べた竜史の個人経歴から高卒の無職であるから、この話を受けないかと、やんわりと切り出す・・・・・と言うか受けないと生活が厳しいぞと、脅して居るとも取れる選択肢を提示されて居る。
異世界の冒険者をしている光の巫女様も言って居る。
選択肢が有る様で無いのは、相談とは言えないと・・・・・・・
「でも、そんな仕事を突然、任されても困りますよ。」
「第一、僕なんか居なくても世は回る筈だし、安元さんでも在任中に何とか出きる筈ですよね?でなければ総理なんてやってる意味は無くなりますよ。」
「あははっ、そりゃ耳の痛い事を言うね。」
「もしかして・・・・・ニュースでやってる事が原因ですか?」
「ああ、あれね。確かに今、各省庁は迷走している。」
「何せ前例の無い事だらけだ。」
「通例の仕事内容なら問題なかったのだが・・・・何せ空想の。しかもアニメの様な二次元世界に似た異世界じゃね。」
「現実主義が基本理念の政府機関に混乱が生じるのも無理は無い。」
「だからこそ、あのお姫様が君を選んだのかも知れないね。」
「そんな冗談は、キャスターやコメンティターとかが、笑えないジョークとか言って居るだけにして下さいよーーーーっ!!!」
ニュースで秋葉原のアニメショップの店舗に並ぶ政府機関の職員と自衛官等が並ぶ?とニュース流れていた。
何れの番組の出演者らは苦笑な顔立ちで、笑えないリアルなジョークの様な光景だと言って居た。
「それはそれで全くだよと言いたいが、只のオタクをこの騒動を解決させる大臣に据えるんじゃない。」
「理由と過程は如何あれ、この事件の発端に関わったオタクである高見竜史君に頼みたいと俺と紅葉皇女は言って居るんだよ。」
オカルトめいた力と冗談みたいでふざけている様な経緯から来る理由であれ、内閣総理大臣が冗談や御ふざけで一介の青年に頼み事何て事はしない。
安元は本気で頼んでいるのである。
「ですが、どんなに頼まれてもお断りしますよ。」
「仕事が少ないし、当面は困るのは目に見えて居ますが、国家の大事に素人が関わるのは良くない事ですしね。」
「それに面倒な事と厄介な事には、関わりたくはありませんしね。それでは・・・・・」
一国の総理大臣である安元が頭を下げて頼んで居るにも関わらず、竜史は頑なに安元の申し出を断り、退席しようとする。
竜史は、何よりも自由で居たい性分であるので、めんどくさい事が大嫌いであった。
何処かの某有名一騎当千で敵を薙ぎ払う爽快感が味わえる事で有名な無双ゲームキャラの一人が「めんどくせっ!」と言うのと同じ考えである。
そんな彼が部屋のドアに手を掛け様とした瞬間だった。
安元は、ある事を言うのであった
「あっ、そうそう。この提案をして来た紅葉皇女殿下が、こう言えば断れないとも言って居たな。」
その瞬間、竜史はピタリと足が止まった。
その一言に竜史は、猛烈に嫌な予感がした・・・・・・・・・・・・・
「君が好きで大事にしてる物を作って居る人々が、このままでは何れ1人も居なくなるだろうと・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
竜史は顔を引き攣り、冷や汗を掻き始める。
「原作と作り手と役者が潰れて・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
(まさか、まさか、まさか・・・・・・・・・・・)
安元が言って居る事は何なのかは、竜史は自分が最も大事にして居る趣味のアレに付いてだとは直ぐに分かる。
それも紅葉による的中率が8割くらい有る未来視から来る予言なのだから、性質が悪いお告げのお言葉だった。
「次に動画を作って居る会社とゲームの会社が・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
(何でっ、そんな事が分かるんだよっ!」
(うーん・・・・・それに僕の大事な物の事を何で知ってるんだ?安元さん達があのお姫様に僕の経歴や個人に関する資料を見せてたのか?)
(・・・・いや、あのお姫様に、僕の弱点を知られて居る訳がない。でも何でだっ!何で知って居るんだっ!?)
竜史は足りない頭と知恵を絞って考える。
「出資と出版をして居る会社が・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
(しかし、有り得る話だっ!)
(だが、それはあの趣味をしているファンでも分かる事だ。潰れたとて数十社くらいだが、それでも統廃合されたとしても業界的にはかなりの痛手に成る筈・・・・・・うーん・・・・)
「最後は何も残らないとか・・・・・・・・・・・」
「そんな馬鹿な事がっ!!!」
止めの予言の一言に思わず竜史が声を張り上げていた。
「まぁ、君が動いてくれるのなら経済が早く良くなると思うぞ。」
「そうすれば、君の好きなモノを作っている会社やそれらに雇用されて居る社員や作り手の個人の人達のこれからの予定と人生が狂わず済むと言うモノなんだが・・・・・・・・・君は如何するかな?」
それは悪魔の囁きだった。
直接は関係無いが、景気が悪ければ竜史が愛して已まないモノが徐々に消えて行くらしい。
しかし、そんな先の事がお姫様に分かるのかと竜史は思ったのだが、紅葉の予言が有る意味、怖かった。
アレなファンなら、このまま日本が不景気な時代が続くと如何るのか?
それは容易に想像も出きるし、その話の予言も妙に信憑性が有ると言えた。
紅葉が竜史へ言った脅しと言うのは、さる自衛官の主人公が登場する物語中で、主人公の自衛官の上層部らが、彼にお決まりの脅しとして言う台詞がある。
「夏休みと年末の休みはやらんぞっ!!」とである。
そして竜史は、その主人公たるオタク自衛官と似た台詞を心の内で言うのであった。
(このままでは日本のアニメ業界関連の企業が終わってしまうぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーっ!!)
そう、彼の好きなアニメの関連の業界は娯楽の商売である。
当然、顧客の懐が悪くなる又は、失業と言う状態が長く続けば、連鎖的に娯楽とサービス業の会社は、次々と倒産の憂き目に遭うだろう。
日本は原料を輸入して加工する会社が主力である。
今や取引相手の国の有る所は、2割程度まで落ち込むだろう。
当然ながら都道府県の殆んどの工場が止まる。
日本政府が公共事業や自衛隊優先の政策を取って軍事関連の装備の生産を促したとしても、雇用を安定させるには、まだまだ足りないのだ。
安元と紅葉は、各々の国と世界の平和の為に、一般人である竜史を日本政府関連の仕事に強引にでも引き入れる為の交渉に、竜史に取って一番の痛い所を突いて来たのだ。
これは大袈裟な事かもしれないが、彼にとって自身の就職と心の癒しを守るのは、命の次に大事な事でもあった。
(くううっっ、あのお姫様めっ!!僕の一番に痛い所を付いて来るとは・・・・・・・・・・・)
プルプルと震えながら、悔しがる竜史。
紅葉は今頃、ニヤニヤとしながらコイツ堕ちたと思って居る事だろう。
「あのぅ・・・・・それで、その仕事の内容は?」
引き攣った顔と微笑な笑顔で竜史は振り返り、話だけでも聞いて見ようと思った。
アレが危ないと聞いたからでも有るが・・・・・・・・・・・・・・・・
竜史の嫌そうな顔付きで話を聞こうとして来た事に、安元は事が上手く言ったと核心した。
「おおっ!?取り合えずは話を聞いてくれる気に成ってくれたのか?」とわざとらしい物言いを言う安元。
「まぁ・・・・・・・」
「仕事はだね、この異世界での諸問題を抱えた各省庁の補佐。異世界国家と事前交渉と会談と異世界国家に対する支援政策。現地での直接の視察と対応。」
「防衛問題と治安問題に関連して最高司令官代理権限も考えて居る。」
「まぁ、簡単に言えば無所属の君に政府と国会議員に即断と対応し辛い案件の対応を肩代わりにして丸投げ・・・・・では無く・・・・そうだ、雑用だな。雑用係的な仕事だ。」
今、チョットだけ丸投げって言わなかった?と思った竜史だが、此処で大人の事情にツッコミを入れる様に聞いたら負けな気がするので、此処はスルーする事にした。
「それって必要な事ですか?しかも自衛隊まで動かす権利まで与えるのは、チョッとなぁ・・・・・・・・・・・・」
「雑用仕事を舐めてはいけない。」
「雑用をこなせる人材が居るのは、ある意味、色々と仕事が溜まって困る状況なんだ。」
「今の政府と省庁に欠けて居るのは、この異世界の諸問題に対して、どれだけ柔軟な対応を取って、間に入ってくれる仲介の機関組織が要る事だと思うんだ。」
竜史はそんな事は、どうせ建前だろうとは思うが、政府機関が困って居るのも事実。
今の政府機関は、本当に混乱して居た。
政府が何時もの様に、専門家を招集しての有識者会議や有識者委員会など作っても恐らくは付け焼刃。
そこで安元達と政府機関は、いっその事、異世界政策専門機関を立ち上げた方が無難と紅葉に高見竜史の推薦を言われてから、どう言う風に彼を扱うのかを話し合った結果、様々な人材を学歴・経歴など問わず様々な方面から公募と応募・推薦採用などする事とした。
これなら一般人である竜史一人を無理やりに採用しても、強引ながら採用が出きる良い訳が立つだろうと考えて居た。
例えるならゴジラと戦う政府専門機関と言った所だろう。
「新しい省の名前は異世界国家交流総合支援省、略して交援省になる。」
「交援省の活動拠点は福岡市に設置するが、国内での多様な対策に当たる為に支部を設置する事に成って居る。」
「最初に接触したコヨミ皇国を大陸交渉の窓口として利用するが、国家対策の支部に東京支部を置き、大陸北方対策支部として札幌支部を置く事とする。」
「国会や内閣での対応には、副大臣が主に国会を始めとする日本での業務する事に成り、官邸と国会との連携と連絡を密にする。」
「交援省大臣の役目は、最前線での事務処理や多方面での外交対策や国防安全保障の対策に当たる事を含める内閣専属の異世界対策雑用対策部署に成る。」
「自衛隊の権限を与えるのは、福岡と新世界の大陸を往復し続ける大臣と外交団の護衛に対する命令権と国外における軍事行動や政府機関が万が一にも機能不全に陥った場合を想定したりと、色々な諸事情の対応を円滑にする為だ。」
「どうしても東京では、この手の事を決め様とすると揉めるし、いざと言う時の決断がやり難い。」
「また、現場での意見も貴重であり、即決が求められる事態も有るだろう。」
「それに、今の日本は完璧な国外の監視が、出来るほどの設備と装備も無いし、それに不意を突かれたり、準備不足や無対策不備での不慮・不足の事態は避けたい。」
「自衛隊の命令権の拡大は、国会でも問題視されるかも知れないが、内閣と国会で悠長な事をして居たら間に合わない事も有り得るしね。」
其処で異世界での対外政策政府機関である交援省が総理大臣と防衛大臣に自衛隊の出動要請または、出動すると報告する形での体裁とする事を盛り込んだ法案を作成して居る。(既に内閣と与党や味方に付き様な議員と政党との根回しは済んでいる)
少なくとも、この法案に関する案件作成に付いては、自国党との連立与党である国内の第二勢力である公明民権党、通称公民党。
そして中立政党である日本一新党、通称日新党との話し合いが付いて居た。
特に日新党は連立の話は断るものの、前向きに、この国難に対して、出来うる限り協力したいと申し出ていた。
僅か1日足らずで根回しが決まったのは、日本国が崖ぷちに立たされて居ると理解して居る政党と政党支持者が多い事と、多くの企業が早く何とかしてくれと言って居る事も有ったりするからだった。
その影で多くの政府機関の職員が、死に掛ける程の仕事を成し遂げた事も付け加えて置く。
「はぁ、アレの危機の件は、別として、僕の就職出きない危機には違いないですね。」
「この仕事を引き受ける条件として、突然の辞職しろと言われたり、行き成りの大臣交代を言い渡されたりしたりしたら、再就職先の斡旋が絶対条件です。」
「例え自国党が選挙で負けて政権交代したとしても、次なる政権を担う次期政権政党も、この再就職の斡旋は必ずして下さい。」
「これが受け入れなければ、何が有ろうとも、この仕事はお受け出来ません。」
「それ位の要求ならならば、近い将来に措いて、何処かの各政党が選挙で勝って、政権を手に入れた場合でも、君の要求は受け入れ易いだろう。」
「まぁ、これは天下りでも無いしね。」
「こちら側から無理を言って閣僚入りを頼んでいるんだし、国会議員でも無いから当然の処置だろう。」
「この件の話は通して置く。」
かくして、後の歴史書に雑用省と雑用大臣と世の人々に揶揄された民間人採用の内閣特別任命された高見竜史交援大臣の誕生であった。
彼はこの後、数多くの歴史的な事件に次々と出来事に立ち会う事となる。
後に彼は自分の事を道化師か猿回しであり、国家の司会進行役と言うのである。
今、歴史の歯車は新たな段階へと回り始めたのであった。
アースティア暦1000年・西暦2030年・4月11日・午前11時00分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・日本列島・日本国・東京都・千代田区・永田町・国会議事堂にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「新世界及び新大陸調査団派遣法の採決を取りたいと思います。」
「賛成多数、よって本法案は可決とします。」
「続きまして、異世界国家交流総合支援省の設置案の採決を取りたいと・・・・・・・・・」
衆議院議席に座る議員らは、手元のボタンで、提出されて居る法案に対する賛否を決める。
野党側は完全に反対票を投じて居た。
野党側は、与党の用意周到な根回しに後手に周り、抵抗らしい抵抗を出きずに居た。
この日、国会では日本の運命を左右する法案が修正と加筆、追加法案と共に提出されていた。
先の新世界及び新大陸調査団派遣法の修正法案と異世界国家交流総合支援省の設置案が与党である自国党から出された。
この法案は即日国会召集された衆院と参院で自国党、公民党、日新党の3党が賛成し、議決が成されたのであった。
一方の反対派は、何時もの面々である民憲党をはじめとする反戦・反与党主張する野党達だった。
国会の外では何時も以上に、反戦を叫ぶ運動家達が「戦争はんたーい」「戦争する国との国交樹立はんたーい」を五月蝿く騒いで居た。
この運動家の中には、反戦運動家に雇われた思しき無職の人達が混じって居た。
如何やらこの異世界転移の災害で職を失った人達らしい。
生活に困り果て、金に成るなら形振り構っては居られないらしい。
だが、彼らの活動行為は、何れ自分達の首を絞める行為に成ると言うのにだ。
何故なら日本が異世界を調査し、異世界国家群と会談交渉をし、条約に調印しなければ、貿易が開始されないからだ。
政府は逸早く国外の新国家との国交正常化を急ぐとして居た。
その日の夕方、安元総理による総理官邸での首相演説が行われた。
「本日、国会議員の皆様のご尽力により、極めて重要な法案である新世界大陸調査使節団派遣法案と特別省庁の交援省の設置法案が認めらました。」
この演説で与野党の皆様とは使われなかった。
反対派の野党と言う単語を出すと反発を喰らうからである。
でも建前上ではあるが、国会議員と言えば、誰とは言って居ないし、後で私は反対してたと野党関係の議員は言えるので、日本政府として内外に発信するこの様なスピーチ文が採用されたのである。
「この新世界大陸調査使節団派遣と交援省の役目は真に重大であります。」
「更に自衛隊の権限拡大。これは簡単に言えば日本国は侵略戦争を絶対にしない、やらせない、支持しないと言う三原則を元に軍事行動を取ると言う物です。」
「この日本に措ける新戦争三原則を元に、これから日本は、この新世界で生きて行くべく、将来に向けて歩んで行きたいと思います。」
「我が国は、自由、主権、人権、生存権を守り、これを共有できる友好国と共に守り育んで行き、平和で豊な明るい未来を築きたいと思って居ります。」
「これに対して大陸では、横暴で身勝手な強大な帝政軍国主義の国家が存在して居ると言う事が、先のあさくら号救出事件で明らかと成りました。」
「そして、新たな隣国であり友好的な国家と成り得ると見られて居るコヨミ皇国。」
「我が国はあさくら号襲撃事件に措いて、彼の国のの要人との接触に成功を致しました。」
「先のあさくら号事件での戦後調査や事後処理での調査結果に由れば、日本の遥か大陸西方に存在するローラーナ帝国と言う国が在り、通称帝国と呼ばれて居るらしく。その国では日常的に侵略戦争をして居るとの事です。」
安元は声を張り上げて言う。
「この帝国海軍によるあさくら号襲撃事件は、日本にとって極めて重大な問題であります。」
「不審船や遭難した船舶は、先ずは臨検をすべきなのに彼の国はあさくら号の造船技術の珍しさに目を付けて、事もあろうに民間船である船を拿捕せんと襲撃したのであります。」
「この時、唯一あさくら号を助けたのは近海を警戒中だったコヨミ皇国・南西国藩の嶋津義隆公率いるコヨミ水軍の一団でした。」
「彼の水軍船団が駆け付けなければ、我が国の海自護衛艦隊はあさくら号救出時に苦戦を強いられたかも知れません。」
更に安元は滞在して居る紅葉にもメッセージを送るのである。
「彼の国の勇敢な行為に対して日本国総理大臣として、また、日本国民を代表して厚く御礼申し上げます。」
「この映像見ていらっしゃる紅葉皇女殿下、貴女様が仰いました対帝国との共同戦線に付いても前向きに検討を致したいと考えて居ります。」
「しかし、日本国は平和国家です。」
「無用な戦争はする積りはありません。」
「先ずは、周辺国の経済支援、農業支援、技術支援、そして旧式軍事装備を中心として軍事支援を柱に、国家の底上げをして簡単に侵略されない強い国にして行こうじゃ有りませんか。」
「最後に成りますが、日本は自由と平和を共有する全ての国家との平和友好条約を必ずや締結をし、平和的な外交と貿易による交流をする事により世界平和を実現したいと日本国民ならびに地球同胞の地方地域及び国家郡の皆様。」
「そして、まだ見ぬ新世界の全ての人種と種族の皆様に誓う事をお約束致します。」
「以上を持ちまして私、総理大臣としての安元宏孝の異世界での対策政策方針演説を終わります。」
「ご清聴有難う御座いました。」
長い演説が終わると、安元は退出し、高橋が記者達から質問が始まった。
その日の夕方、報道各社は政府の報道規制を受けていた情報を一斉に報道をし始めた。
今回の異世界の情報と新隣国のコヨミ皇国及び皇女である紅葉の写真と素性関係の情報は、政府の公式発表が有るまで規制が敷かれていた。
これは余計な混乱を避ける為なのと、紅葉に対する配慮だった。
反戦団体が彼女の事を日本を戦争に巻き込んだ張本人として吊るし上げたり、襲撃したりと過激な行動に出れば、外交問題に成るからだ。
政府の公式発表後の彼女に対する好感は鰻上りで、特に美しい刀を差した和装姿の彼女の写真は、正に大和撫子と多くの日本国民が絶賛した。
予断ではあるが、日本で撮った彼女の写真は本人の希望で、額縁入れられて持ち帰るというエピソードが有った。
この写真は、その後も多くの歴史書や雑誌にテレビ報道で使われて残って行く事に成る。
勿論、紅葉本人が大事に所有し、後世の世では高見家のアルバムや写真立てに居られられて大事に飾られて居る写真の一つと成って居た。