174話 新たなる嵐の前触れ 2
アースティア暦1000年・6月20日・午後21時05分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・アイリッシュ湖畔・ダバード・ロード王国・アルインランド州・州都・ベルクラネル市・ベルクラネル城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
話の時間は少し遡り、激闘と苛烈を極めた、ブラキュリオス湖畔紛争が終った日の夜の事である。
ダバ派遣艦隊は整備と補給、積荷や車両の積み込みに加え、レジェンダリア諸島全体の防衛関連の施設や陣地の復旧作業を行うと共に、機雷や対車両用の地雷の設置作業に追われ、ようやく一息を吐いた頃合いの時刻。
丁度同じくその頃、ブラキュリオス湖畔紛争での顛末が如何なって居るを今か今かと待ち続けてダバード・ロード王国政府とその女王達。
その報せと同じく、ダバード・ロード王国・州都・ベルクラネル市・ベルクラネル城の一室で、日本で開催される国際会議たる東京サミットに参加するべく。
ダバ派遣隊の迎えを待ち続けて居るダバード・ロード王国の女王であるアーヤ・シュチュ―ド女王。
アーヤはブラキュリオス湖紛争の結果報告を近衛隊の隊長たるカリン・カインザーキーン少佐から受けて居た。
「流石ね。ローラーナ帝国内でも野心家で有名な。あのガミトフ率いるグリクス地方軍団を退けるなんて、これで安心して日本に行けるわね。」
「はい。ニホン艦隊は、二ホン本国から依頼され派遣されて来た。フローレイティア第二商船艦隊と合流し、補給と整備を済ませた後、4日後までには、現地を出発し、此方に向う予定との事です。」
「後は味方が多い地域たがら、何も起こらないと思うわ。」
「本当に何も起こらなければ、だけど・・・・・・・・・・・」
アーヤは、本当に何も起こらないだろうかと不安を覚えた。
彼女は「本当に・・・」と、何度も自問自答を繰り返して居た。
詳細な情報は、報告書として、今受け取って居た物を一通り目を通しながら、カリンと話し込んで居る所だった。
「移動要塞戦艦デストロイヤーが4隻ね・・・・・・・・・」
「はい。諜報局からの報告書を見聞きする限りでは・・・・流石にアレは、まだ量産させられるほどの物では無いとの話です。」
「投入された物は、一隻は古代兵器の発掘物だと思われ、残りの3隻は恐らくは先行試作機で無いかと諜報局で分析して居ります。」
「ですが、幾ら未知の兵器・武装を有して居るニホン軍が相手とは言え、果たして4隻もの戦略級の移動要塞戦艦を高が辺境の一紛争に投入する理由に、成り得るものなのでしょうか?」
「其処なのよ。この事に関して、妾が引っ掛かると感じて居る所は・・・・・・・・」
「果たして、ガミトフが移動要塞戦艦デストロイヤー4隻を動かさせられるだけの政治的な手腕が有るかと聞かれても・・・どう考えても微妙な所なのよ。」
「負けそうに成るからと、ガミトフが移動要塞戦艦デストロイヤー4隻を動かせる人物に借りを作るとしても、多額借金をするような事にもなり兼ねないわ。」
「それに加えて、如何しても疑問に思う事が有るのよ。」
「アーヤ様は、この紛争の裏では、誰かが手を引いて居ると思われるのですか?」
「これはあくまで可能性の話よ。」
「でなければ、ローラーナ帝国が虎の子の兵器の一つでも有る移動要塞戦艦デストロイヤー4隻もの戦力を簡単に投入する理由が分からない。」
「それに反帝国を掲げている西方諸国の元首に大臣、それに外交官等が日本へと向かうと言う話は、何れの各国の間中でも、絶対的な秘密厳守とされて居るのに、この事がローラーナ帝国に筒抜けの筈が無いのよね・・・・・・・・」
「私の私見ですが、ローラーナ 帝国が、デストロイヤーをレジェンダリア諸島の戦線に投入した本当の理由は、此方に向って居たニホン艦隊では?」
カリンはダバード・ロード王国に、魔導機兵の受け取り輸送とサミット参加者の護衛輸送行う秘密任務の為に向って居たダバ派遣艦隊の動きに対して、ローラーナ 帝国が過敏に成って居たのではないかと推察した。
何せ、自衛隊はレジェンダリア諸島での戦いを含めると、三度もローラーナ帝国軍の大部隊や大艦隊を撃退して居るのだ。
その報せを逸早く察知して居るローラーナ帝国軍の幹部が居たとしても、何ら不思議は無かったと言えたからだった。
「そう見るのが妥当と言いたいけれど、理由が少々弱いと言わざる負えないわね。」
敵側に知られて居る筈も無いサミット開催の動きと自分達を含めた重要人物の大移動の話。
ローラーナ帝国は、如何なる理由からデストロイヤーと言う貴重な兵器を動かしたのか?
その事に付いて、二人が頭を抱えて悩んでいる時に、ダバード・ロード王国外務省の外交官とダバード・ロード王国軍の伝令官が現れた。
「アーヤ陛下。お話の途中ですか、失礼致します。オローシャ帝国のミランダ・ランティー陛下から火急のお知らせです。」
「私も同じく、陛下にお報せを致したい事があるのですが、此処にいらっしゃる外交官殿と同じ案件と思われるので、纏めてご報告を致して頂きます。」
アーヤの顔付が、一気に険しい物へと変化する。
外交官と伝令仕官達からの火急の報せと言われた彼女は、もしやと思った。
アーヤはとても嫌な予感がして居た。
先ほどまで悩んでいた問題の答えが、早速舞い込んで来た様に思えたからだった。
「申せ。」
「はっ!!ミランダ陛下から派遣された使者殿に託されて居る書簡に由りますれば、オローシャ帝国の東南に位置して居る。」
「ウルス山脈地方のジャンブロー平野を守る要塞であるジャンブロー要塞基地に、ローラーナ帝国・ゾルモン要塞軍団の侵攻の気配有りとの報せが入ったとの事です。」
「ミランダ陛下は、東京には向かえないかも知れないとアーヤ陛下に報せて欲しいとの事であります。」
「場合によっては、自分の代わりに外務大臣を向わせるとも仰られて居ます。」
「確か軍部の方にもと言って居たわね?」
「はっ!!先ほど外交官殿の申されて居ましたが、ダバード・ロード王国軍南西地方面軍からの国境線監視師団からの報せです。」
「ジャンブロー平野を守る要塞であるジャンブロー要塞基地に、ローラーナ帝国・ゾルモン要塞軍団の侵攻の気配有りとの報せが入ったとの事です。」
「不味いね。オローシャ帝国のミランダは、西方の顔役と仲介役を担って居る子よ。」
「彼女が来ないと成ると・・・・・リユッセル北欧同盟の者達の足並みも揃いが悪いわ。」
「・・・・まさか・・・これが狙いなの。」
「どう言う事でしょうか?」
「ゾルモン要塞軍団の連中の狙いは、ガミトフとその野望すら出汁にして、オローシャ帝国に大軍を以ってして、一気に加勢に攻め込む算段なのよ。」
「完全にしてやられたわ。今の私は動けない。」
「先にグリクス地方軍団へ総攻撃を仕掛けて居るから、後数ヶ月は動けられないのよ。」
「ゾルモン要塞軍団は。我が国にオローシャ帝国への援兵が出し辛くさせて、我が国とオローシャ帝国を分断して、自分たちが行うオローシャ帝国侵攻作戦の手出しを我が国にさせない気なのだわ。」
アーヤは自国の軍勢は、アルガス公国とダバ派遣隊が戦うレジェンダリア諸島での迎撃作戦の支援するべく、東方の国軍に全力出撃を命じて居た。
その予算も使い尽くしたが、敵地からの簒奪で補填して居るので、実質的な被害は無いと言っても良い。
だが、援軍の派兵とも成ると、今は不味いと言わざる終えない。
何せ、サミットの開催期間中の彼女の留守を全力で守勢に回す事で、如何にかしようと考えて居たからだった。
ローラーナ帝国は、シベリナ連合各国を始めとする反帝国同盟諸国が日本国へと向かい、其処で行われる国際会議・・・・・サミットの事を知らない。
だけど、ガミトフを助けたその理由が、自分達がオローシャ帝国に攻め入る為の事前の露払い作戦だったの為らば、こんな無茶な作戦が結構された事にも納得が行く。
ガミトフの作戦は、ゾルモン要塞軍団の者達に取って、単なるオマケに過ぎないのだ。
だから日本軍艦の艦隊が、ダバード・ロード王国とオローシャ帝国に近付くの嫌がった・・・・・と言うのが事の真相だろうと、アーヤは結論に至ったのだった。
「まま、まさかっ?たったそれだけの為に、戦略級要塞戦艦兵器である移動要塞戦艦デストロイヤー4隻をも生贄にしたのだと・・・・・・・・」
アーヤの推察から来る結論を聞いたカリンは、驚き動揺してしまう。
何せ、大変に貴重な兵器を捨石にしてでも、自分達に取って非常に厄介で邪魔魔物でもある日本艦隊を葬り去りたかったと言う事実に驚愕して居た。
「恐らく・・・・連中は焦ったのよ。」
「元々ガミトフを出汁にする形で、シベリナ中央地方への侵攻を合作していたゾルモン要塞軍団の連中は、何らかの理由で我が国へと訪問する事に成ったと見て取れたニホン艦隊が、彼らに対抗する妾達へと派遣されて来た援軍に、映ったのかも知れないわね。」
「そうか、そうなのか?それなら納得が行きます。」
「是が非でも予定していた作戦を遂行しようとして、ゾルモン要塞軍団の連中は、ガミトフのレジェンダリア諸島への侵攻作戦を支援して居たのですね。」
アーヤの推理で、カリンはようやく全ての話が繋がったと合点が行った顔付きをしたのである。
「・・・・と言う事は陛下、ゾルモン要塞軍団の首脳部は、ニホン艦隊たる自衛隊艦隊の損耗又は撲滅を狙ったと言う事に成ります。」
「併せて東方のシベリナ各国の損耗すら合作をし、優々とオローシャ帝国へと攻め込む。」
「後は西方諸国を一気に包囲と言う所ね。」
「カリンっ!直ぐにガイダル島基地の司令官の秋本洋佑空将殿を呼び出してっ!!」
「日本政府にも至急連絡をっ!事は緊急を要するわよっ!」
後にこれは、この地方の歴史上で、最も激しい戦いの一つと言われるジャンブロー要塞の嵐と呼ばれる戦いの始まりと言われる幕開けの瞬間であった。




