123話 イツクシマ作戦の行方 6
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月15日・午前10時18分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖・アルガス公国・レジェンダリア州・ レジェンダリア諸島東部・カントルナ島・カントルナ砦・ローラーナ帝国軍・グリクス地方軍団・グリクス地方艦隊占領地・カントルナ砦及び・仮設基地司令室にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
海自の洲崎綾奈二佐以下、日シベ合同作戦軍・ダバ派遣艦隊の第3艦隊とグリクス地方軍艦隊の偵察哨戒艦隊とが衝突した、セイローグ島・セイローグ聖堂砦での戦いから、更に4日が経過した。
日シベ合同作戦軍は、防御陣地の完成を急がせ、グリクス地方軍団は野戦や追撃戦での疲れを癒しながら、日シベ合同作戦軍がガッチリと守りを固めて居る要塞陣地の攻め所を探って居た。
グリクス地方軍団の司令官であるガミトフは、必勝の策の準備に時間を掛けて居り、指揮下に在るグリクス地方軍団の動きが鈍く成って居た。
そして、遂に戦局に変化が起ころうとして居た。
先に動いたのは、ガミトフが率いるグリクス地方軍団の方である。
その日、ガミトフはシベリナ連合の西の果ての一角であるオローシャ帝国と対峙して居るローラーナ帝国軍・ユーラシナ大陸中部管区・第二方面軍団・ゾルモン要塞司令官であるアーノルド・ドズール大将と、その配下の諸将に対して密使を送り、密かに有る頼み事して居た。
その事に関する返事が、今日に成って、ようやく返事が返って来たのである。
「何!?それは本当か?」
「はっ、ガミトフ閣下のご要望通り、派遣が決まりまして、到着が今夜と思われます。」
「アーノルド・ドズール大将は、こう申されて居ります。」
「ガミトフが苦戦するのも頷ける。」
「化物の様なロリババアと未知の軍勢相手に、苦戦をしながらも善戦をして居るのだ。」
「わしがしてやれる事は、何でもしてやろうぞっ!」との仰せでした。」
「おおっ!!何とも有り難きお言葉だっ!」
ガミトフは、シベリナ連合からの間者の動きに警戒し、ゾルモン要塞へと派遣させて居た、密偵の使者の士官にも、万が一に備えて敵のスパイにも悟られない様に、隠蔽語を用いて、この密会場での会話を話させて居た。
ガミトフはニホンの動きが素早いのは、何らかの手段で偵察か、シベリナ連合系国家からの情報提供が有るのでは無いのかと、疑って居たからである。
だが、真実は違って居た。
高度な通信機器とレーダーと言う探知警戒装置。
それに加え人工衛星からの位置情報等と言うチート過ぎるやり方で、ガミトフが率いるグリクス地方軍団と戦って居るからだった。
異世界人には想像も出きない様な情報戦術を駆使して居るので、理解と想像の範疇を超えて居るのは、仕方の無い事である。
「そうか、そうか。」
「ではアーノルド・ドズール大将閣下、デナンズ・フリーザー中将閣下のお二人にご苦労お掛けしたお伝えし、同じく我らに協力をしてくれたガルベ・マグベ大佐にも同じく、礼を述べて置いてくれ。」
「はっ!!しかとお伝え致します。」
「それでは、私はこれにて失礼を致します。」
アーノルド・ドズール大将とは、帝国伝統の物量と大兵力による電撃的な蹂躙戦術の体現して居る様な人物である。
常に彼の大将は、某宇宙世紀世界の司令官の様に、自らの兄に対して、常々戦いは数だと言って居る様に人物と似た様な風体と軍事思想を持った御仁なのだ。
しかもゾルモン要塞に駐屯・駐留する軍の強さは凄まじく、如何なる国の軍隊であろうとも敵わない帝国の東へから来る脅威に対して、強力な盾にして強力な槍でも有るのだ。
「ふっ、これで我らが戦いの勝負は決まった。」
「後は戦場での采配で決めるのみ。」
「もう、忌々しいロリババアであるエリノアとニホン軍、それにアセリナの頭の可笑しな聖天使騎士どものエクスプロトンバスターを恐れる必要は無い。」
「有象無象のアルガスの騎士共は、追撃して来るであろうが、それもアレが来れば只の烏合の衆に過ぎぬ。」
「それに今回の戦での奴らの抵抗具合を見るのに、奴らは我が軍団が、対岸のアルガス本国へと攻め入って来るのを恐れ、それを防ぐ為にニホンやシベリナ連合各国と結託をし、此処で我がグリクス地方軍団を一挙、徹底的に叩き潰す狙いだろうが、そうはいかんぞっ!」
ガミトフは軍団配下の者達に一定数の軍を指揮させて、レジェンダリア諸島西側に陣取り、防護を固めて居る日シベ合同作戦軍の動きや守りの状況を威力偵察で探りを入れさせて居た。
その結果、北はダバ派遣艦隊が見張って居て、近付き突破するのは難しく、南回りもやや、戦力が少ないが容易には軍が侵攻出きないと判断する。
そして、日シベ合同作戦軍が守りに徹して居るのは、単に撤退に手間取って居るのでは無く。
攻め入って来るであろうグリクス地方軍団を半壊滅状態にして、押し留める狙いが有るのだと読み取って居たのであった。
又もや斜め上の予測の読みで有るが、内容の半分くらい合って居ると言えた。
何せ、日シベ合同作戦軍の狙いは、グリクス地方軍団その物の壊滅を狙った作戦で動いて居るからだ。
こうなると、グリクス地方軍団として攻め入るには、力押し、ゴリ押しの中央突破しか無く成る。
この戦局を見るに、常道にやり口ならば、撤退か奇策を用いるのが軍略上の常である。
しかし、この世界には日本には無いものが存在する。
それは浮遊戦艦や浮上航行する陸上戦艦が有るからだ。
日本が長距離兵器をたくさん持って居たとしても、空中や陸上を航行する船が有っては内陸への支援が届かない事が有るだろう。
ガミトフは自衛隊の装備が有する正確な射程範囲を知らない。
だから数の有利と言う利点を最大限に利用し、彼の軍上層部への人脈を活かして何らかの秘策を打てる事にも成功した。
それらの勝利への手札を揃えた今こそ、ガミトフは不適な笑みを浮かべて出陣の準備に取り掛かり、出陣命令の号令を発したのであった。
「くっくっ、これで確実に勝てる。」
「待って居れ・・・・・・・」
グリクス地方軍団は、セイジョン・ローグリア城へと侵攻する為に、軍を動かすべく、隊列や陣形を整え、後方からやって来た追加の補給物資の積み込みが始まるのだった。
ブラキュリオス湖畔紛争での決戦の戦いが此処に始まるのである。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月15日・午前10時20分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖・アルガス公国・レジェンダリア州・レジェンダリア諸島・レジェンダリア諸島西部・セイジョン・ローグリア島・セイジョン・ローグリア城・セイジョン・ローグリア城東側付近・マルダ平原にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
セイジョン・ローグリア城東側には、マルダ平原と言う平原が広がって居る。
東西10キロ。南北8キロの平原の中には、疎らに幾つもの林や丘が広がって居る平坦な場所である。
日シベ合同作戦軍は、此処に凡そ1週間以上かけて、セイジョン・ローグリア城を中心にして、周囲5キロの広さに、砦や野戦陣地を構築した。
その全ての造りは、とても簡素で有るが、防備には様々な仕掛けが施されて居た。
その東口最前線に、この世界では見慣れぬ櫓や防塁に塹壕が張り巡らせてた砦と言うか出丸と言った感じの城砦が、一際目立って居た。
塹壕に防壁、防塁には、全てのヶ所に設置され、その設置には、シベリナ連合の魔導師の魔法や騎士達の尽力と日本の様々な道具が用いられて居る。
例えば、木々の切りだしや簡単な成形にはチェーンソーやとても使い易いノコギリが用いられたり、土の掘り起しは土魔法類を用いたりと、互いに協力し合ってこの戦いに備えたのである。
「立派な砦だな。」
アルガス騎士団・第三騎士団のアルガス戦士兵団の団長であるダンブルド・アーシダが出来上がった砦を見て、その仕上がり具合の感想を述べていた。
「砦?違いますよ。これは言わば城の外郭の一角と言うべき要地です。」
不適な顔つきでダンブルドの言った砦と言う言葉を否定するのは、ダバ派遣隊に派遣されて居る陸自の第7中隊を率いる小山田信彦一尉。
「砦では無い?これが城郭だと?」
「我が国では、過去に一度だけ大軍を相手に、無類の強さを発揮した幻の外郭ですね。」
「その名は?」
「敢えて言うなら真田丸・・・・・・・」
「サナダマル・・・・・・」
このやり取りの中でカメラでも有れば、その目線を彼の名脚本家が描いた大河ドラマ・真田丸のワンシーンの如く、カメラに向けて決め台詞を此処で決めて居たであろう。
決まったと言う感じで台詞を述べた彼は、幻にして伝説の外郭とも言うべき名を述べた。
このセイジョン・ローグリア城の南に広がる開けた平原に向かって、彼の大阪城に在ったと言う伝説的な逸話が伝えられて居る城郭真田丸を陸自派遣隊は、見事に再現して築いてしまったのだった。
その恐ろしさと鉄壁な防御力は、日本人なら語るまでも無い言うべき強さを持って居た。
何せ、大軍を有する前田利常軍と井伊直孝軍を罠に掛けて挙句、その堀へと踏み込んだ、その将兵達の殆んどをあの世へと叩き送り込んだ城郭である。
「このセイジョン・ローグリア城は南北に狭く、東西に広い平原が広がって居ます。」
「そして、この東口には、小高い丘が有り、出丸に適した土地が在りましたので、それを利用させて頂きました。」
「目の前をご覧ください。」
「丸馬出しと言うもの造らせて頂きました。」
「あれなら弓兵でも自衛官でも一時的に少し前に出て迎撃し、危なく成ったら撤退して更に内側から射撃すると言う建物と地形を組み合わせて利用した仕掛けです。」
「確かに、これは凄い発想の仕掛けだっ!」
「我らは今まで敵を城で防ぎ切る事しか、頭に無かったが、迎え撃つには、この様なやり方も有るのだな。」
西洋風の城が多い国々が多いこの世界では、高い塀や堅い城門等で敵を防いで粘るか、討って出て戦い、何らかの戦果を上げて戻って来るかのが当たり前であった。
それが少ない予算と兵で戦う日本や東アジアで特有の戦い方を知り得たシベリナ連合の面々は、その発想と戦い方に、只々驚くばかりだったのである。
「これならば15万以上の大軍にも耐えられる事でしょう。」
「他の要地にも似たような設計の野戦築城式の外郭型城郭を増設しました。」
「何れの城郭や砦も、そう簡単には突破されないでしょう。」
「それは心強い。後はどれだけ、この戦いに参加して居る俄か連合軍である我が軍が、連携が出きるかに掛かって居るな。」
「はい。」
日シベ合同作戦軍は、決戦に向けて合同訓練も行って居るが、如何せん決戦までの期間がとても短く、一朝一夕には行かず、形だけに近かった。
だが、自衛隊の装備類とその質が、それを補う形で各所に配備されて居る。
通信機器や各砲台に加え、護衛艦からのミサイルやレーダー装置も強力な支援と言えた。
グリクス地方軍団との戦いは、何方かが根を上げるかで、決まるとも言えた。
グリクス地方軍団の兵力が尽きるか、それとも日シベ合同作戦軍の弾と気力が尽きるかの何方かである。
日シベ合同作戦軍の準備も、万全に近い形で整いつつ有るのであった
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月15日・午前10時30分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖・アルガス公国・レジェンダリア州・レジェンダリア諸島・レジェンダリア諸島北西部・セイジョン・ローグリア島・セイジョン・ローグリア島北部水域・ロー・デッニッシュ港・ダバ支援艦隊停泊地にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ダバ派遣艦隊へと合流を果たしたダバ支援艦隊は、ロー・デッニッシュ港に停泊して居た。
ロー・デッニッシュ港は、レジェンダリア諸島北西部・セイジョン・ローグリア島・セイジョン・ローグリア島北部水域に在る軍港の事である。
主に北側対岸のアルガス公国本国との連絡と防衛にの為に使われて居る軍港の一つして、アルガス公国軍に使われて居る軍港として、レジェンダリア諸島の開発事業の一環として開かれ港であった。
その主力艦隊である航空護衛艦しょうかく・ずいかく。
護衛艦はるな・ひえい・あさひ・しらぬい・まつゆき・あさゆき・じんつう・おおよど。
そして、試験改修艦あすか等の陣容にて、北部地域を警戒し、間も無く始まる決戦に備えていた。
航空護衛艦しょうかく・ずいかくでは、空自航空隊員と海自航空隊による合同ブリフィーングが始まろうとして居た。
航空自衛隊・航空隊を率いる神谷晶一佐が、中心と成って、決戦に向けての最後内合わせである。
「それでは、グリクス地方軍団との決戦に向けて、最後のブリフィーング行う。」
「先ずは、敵の最終目標であるセイジョン・ローグリア城。」
「此処に誘い出すのが、我らの当初からの作戦目的だった。」
「だが、連中は俺達との追撃戦で手痛い目に遭ったせいか、前進する事に対して、二の足を踏む様に成って居る。」
「陸自の偵察隊やアルガス軍の偵察隊からの報告じゃ、今は戦力の建て直しと再編制を行って居るらしい。」
「だが、此処数日で敵の動きが活発化して来て居るらしい。」
「各種の情報から分析して、そろそろ此方への再侵攻は確実だろうと日シベ合同作戦軍の司令部は、見て居るとの事だ。」
「決戦での俺達の役目は簡単だ。」
「敵の竜騎士航空隊を防ぎつつ、隙を突いてF-2隊で敵艦隊に対艦ミサイルをぶち込む。」
「どうだ、シンプルだろう?」
ニヤリと笑う神谷一佐に対して、来る決戦前の作戦会議たるこの席に居る若い隊員達は、簡単に言ってくれるなと苦笑いして居た。
それとは別に、ベテラン勢が多いF-2隊は、屁でも無いと言った感じである。
「我々空自航空隊は、北側から敵航空隊の侵攻を防ぐため、エアカバーする事に決まって居る。」
「南周りからはドラグリア隊が、受け持つ事に成った。」
「さぁて、誰が大将首を取るのかな。」
青き彗星と称される池田空将補もやる気満々である。
勿論、彼の直属の元部下達も同じくであった。
「池田さん。やる気っすね。」
「手柄、取らないで下さいよ。」
「白竜の大帝様と張り合う気ですかい?」
元部下達からは、軽く揶揄いが混じった野次が入るが、これは親しい仲のご愛嬌と言えた。
「まぁ、お前達も、そう揶揄うな。」
「それとだな。グリクス地方軍団の司令官であるガミトフ・バイマン中将と言う男。」
「恐らく、この次は全力で攻めて来るぞっ!」
「それって、噂に聞く池田さんの冴えた勘んて奴ですか?」
長谷川一尉は手を上げて言う。
彼も含めた空自隊員の間で、伝説と成っている御仁の噂は、神谷一佐等を通じて、耳が痛くなり、更にはタコが出きる位に散々聞いた話しである。
何せリムパックを含めた合同訓練や戦闘機乗りの国際強化模擬戦試合等に派遣された池田空将補は、どの国のエースパイロットや名指揮官の全てから撃墜判定を取って見せた伝説のエースパイロットである。
特にF-2に乗った彼には、誰にも敵わないとの大評判が立って居て、諸外国からは青い彗星と呼ばれる程の腕前と称賛されて居たのである。
それは宇宙世紀世界に登場する似たような異名を持った、エースパイロットと同じく、凄腕だと言う事である
「不確定と言いたいが、此処まで我々に虚仮にされて居るのだ。」
「野心家と言われて居るらしいので、恐らくは、我々が窮地に陥るほどの取って置きの作戦を用意して居るのかも知れないぞっ!」
「それって、もしかして、この前見たいに馬鹿デカイ要塞兵器が出てくるかも知れないのかよ?」
「「「「「「「あっ・・・・」」」」」」」
柏崎二射の一言に、その場の空自航空隊や海自航空隊の一同がハモる。
そして、同じ事を思った。「コイツ、余計なフラグを立てやがったなっ!!!」と。
こう言った状況で思わぬ事を口走ったり、先読みしたりして発言すると、その後にロクでもないオチが待って居るのは、定番の展開と成って居るのだ。
「柏崎。」
「はっ、はいっ!」
「君は案外、鋭く良い勘をして居るが、戦場で長生をきしたくば、発言にはもう少し慎重に成るべきだな。」
「???」
「ふっ、今のは叱責ではないよ。君の為に言って居る助言だよ。柏崎二射。」
「はっ!!謹んで肝に銘じますっ!!!」
お調子者の柏崎二射は、何か拙ったらしい事は理解したが、それが周囲の怒りを買って居ない事にホッとしたが、彼は如何にも腑に落ちない様である。
こうして、最終作戦に向けてのブリフィーング進められて行く。
そして、まさか柏崎二射のブリフィーングでの一言が、現実に成る予感は、彼以外は嫌な予感しかして居なかったであった。
グリクス地方軍団の大軍は、足音や蹄の音、魔導戦艦の推進音を響かせながら西へと向って来ようとして居るのだった。




