114話 激闘!レジェンダリア諸島 カントルナ砦近郊上陸撤退戦 (闇夜に燃えるカントルナ砦 16)
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月7日・午前3時55分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖・アルガス公国・レジェンダリア州・ レジェンダリア諸島東部・カントルナ島・カントルナ砦から約6キロ付近・ゲースター島・ケーマスター島中心部にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
87式自走機関砲隊8両は、砦を挟むようにして左右に展開し、敵に対して十字砲火を浴びせ様と待ち構えていた。
クルクルとレーダーを回転させ、敵地上部隊に空爆を仕掛け様とやって来たワイバーンは、視界が悪い夜の暗闇の中で、一方的に撃たれる事と成る。
更にはワイバーンの放つ火炎弾は、この夜では自衛隊側には有効な一打にも成らず、中りもしないだろう。
「此方87AW隊。」
「敵射程圏内に捕らえた。これより射撃を開始する。」
「此方日シベ合同作戦軍っ!前線作戦指揮所っ!」
「アルガス公国軍の魔導師隊共に照明魔法、照明弾で視界を確保の為に支援を開始する。」
「了解っ!」
自衛隊とアルガス公国軍の魔導師隊は、共に照明魔法、照明弾をグリクス地方竜騎士航空隊に向けて撃ち放った。
「何だっ!?」
「こっ これは照明魔法だと?」
「しまったっ!待ち伏せされて居たのかっ!?」
「何所だ?何所からだ?」
「この暗さでは正確な敵の位置は・・・・・」
罠に気付き、慌てた所で、事態は時既に遅かった。
暗闇の中に照明魔法ライトの閃光が輝き、左右から光の光弾が砲音と共に木霊し、撃ち放たれる。
「目標っ!ワイバーンっ!距離一千っ!撃ち方よーいっ!」
「撃てっ!!!」
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
光の閃光は、グリクス地方竜騎士航空隊を容赦なく襲い撃ち貫く。
「うああっ!?」
「キャンっ!」
ワイバーンも何所から分からない攻撃に怯んでしまう個体も居た。
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
「ぐわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!!」
「ぐはぁっ!」
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
「たっ、たた退却だっ!退却ううううぅぅぅぅーーーーーっ!」
「退けえええぇぇぇぇーーーーーーっ!!!退けえええぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!ダダダダダッ!!
グリクス地方竜騎士航空隊の追撃隊は、300騎の内、130騎は討ち取られ、地上追撃部隊を残して這々の体で、脱兎の如く撤退して行くのだった。
更に日シベ合同軍の攻勢は続き、三国志マニア自衛官らは調子に乗って敵を畳み掛けて行く。
「敵航空隊は、87AW隊により撃退、退却して行きます。」
「良しっ!孔明と言えば、アレだ。」
「その通り、彼の御仁が得意とする。敵軍を一ヶ所に纏めつつ罠に掛けてからの火攻めだっ!!!」
「ふふっ、敵集団の罠で嵌め集めた場所の周囲には、油をたっぷりと仕込んであるっ!!!」
「今だっ!!!奴らが逃げ込んだ先にっ!火矢と火魔法を撃ち込めっ!!!」
「お土産の油壺もっ!有りっ丈投げ入れろっ!」
87式自走機関砲隊の砲撃が止むのを見計らって、アルガス公国軍の竜騎士航空隊100人が前進を開始する。
ヘスティア騎士団に所属のセッテ・オーワダンに率いられ油壺を空から次々と放り投げて行く。
それに続くのは、CH-47JA 輸送ヘリコプター4機、UH-1H 多用途ヘリコプター4機の陸自の輸送と多用途ヘリ部隊による油壺の投擲である。
「みんなーっ!適当にばら蒔くのは、陸自さん達に任せて、わたし達は偉そうな人達が居そうな場所に油をぶっ掛けに行くよーっ!」
「全く、何でこんな策を本当に実行に移すとはな・・・・・・」
「まぁまぁ、井上一佐。ぼやかない、ぼやかない。」
井上一佐も大規模な作戦の実行中であり、乗り降りの作業と荷の詰め替え作業をして居たら、何時の間にか作戦実行の手伝いに駆り出されて居たりする。
これには訳があって、交代で休む体制を整えて居たのだが、陸自隊員の1人が作業中に木箱の蓋で怪我を負ってしまうと言う事態に陥る。
作戦進行中であり、交代要員を探す時間も用意する時間も無く。
作戦遂行して行く関係から仕方が無かった為に、その場に居合わせた井上一佐が代わり行く事に成ってしまう。
しかも、井上一佐は、第二足止め作戦の内容を聞いて呆れてしまい、それに引っ掛かるグリクス地方軍団にも更に呆れてしまうのだった。
「それにしても、全く以って敵も、存外に間抜け過ぎるっ!!」
「罠だと悟って悠々と引き上げる事も出きたろうに・・・・・・・・」
「まぁ、絶対に軍勢の数で有利と言う相手に、彼の孔明の策略は、ある意味、とても効果的ですからなぁ・・・・・・」
「一佐、時に手口が単純で有れば有るほどに、存外に間抜けな形で罠に引っ掛かる事は有り得るのですよ。」
「其れにしたってなぁ、間抜け過ぎるってもんさ、でも三国志って言えば、今時の歴史家の間では、曹操の方が色々と優れてるって話なんだかなぁ・・・・・」
曹操は孫子の兵法の書の注釈の本を書いたりと、政治・軍事・文化面に関して、色々と芸達者な所が有るらしいと言われて居る人物としの一面が、近年の研究などでは有名に成って来て居た。
それまでは創作である三国志演義の方が面白かった事から、劉備玄徳なんかの活躍の方が面白かったと言うのが日本国内では一般的だったからである。
「日本人のマニアは、三国志演技や有名漫画家が書いた作品やゲーム、更には近年ドラマや映画の影響のせいか、何かと劉備・孔明の事を持ち上げ過ぎますからねぇ・・・・」
油壺を地上へと放り込みながら、井上一佐とヘリに同乗していた隊員の1人は、同じく罠に掛かった相手に呆れつつも、同情して居た。
何せ、三国志マニアがノリと勢いで練り上げた嫌らしい手口で有名な諸葛亮公明の策を手本として居る作戦に引っ掛かってしまう敵に・・・・・・・・・
「全くだよ。」
井上一佐は呆れ顔で、その事に同意するのだった。
「今だニャーっ!火矢を射ち込むニャアアアアアァァァァァーーーーーーーっ!!!」
「くくっ、我がアプリコット魔導商会が作りし、魔火炎弾砲の威力を篤と味わうが良いっ!!!」
この待ち伏せには、ヘスティア騎士団の特戦魔弓兵中隊長にして、猫獣人族のユイ・ナンジョルノ。
何時もニャーっニャーっ言ってる自由でロリ巨乳の猫娘で、団長職などの高位の指揮職にも就けると言われて居るが、めんどくさいと言って現場職に留まって居る変わり者である。
そして、その配下には、彼女の魅力に魅了された人々は「全てはユイ(ナンジョルノ)様の為にいいいいぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーっ!!!!」と声高に叫び、敵をなぎ倒して行き、自らの命を捧げて、死ぬ事すら厭わぬ猛者達である。
ユイは通常の弓も使うが、最近は魔法を使った弓兵隊も率いて居るのだが、信者が集まりすぎて、様々な業種が集う特殊部隊と化して居た。
もう一人は、実家がアプリコット魔導商会と言うマジックアイテムや魔導兵器の生産や開発を手掛けている商会の生まれである魔導師隊の隊長マオ・アプリコット大尉。
彼女は実家の財力や人脈に豊富な郵送網から、今回の戦に間に合う様に様々な物資を仕入れていた。
特に火計専用に特化した魔火炎弾砲は、火属性魔鉱石である赤色魔鉱石で精製した特殊魔砲弾を撃ち放ち、粘着性の高い炎で敵を焼き尽くす代物であった。
其処に普通科中隊を乗せた96式装輪装甲車隊5両と50人の陸自隊員共に、一斉に小銃、ファイヤーボール、火矢、魔法弾が撃ち放たれて行く。
「ぐはっ!!」
「うあああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」
「あちっ!あちぃっ!!あちちっ!!」
「けほけほっ!!くそっ!!ダメだっ!!」
「何所も彼処も炎と煙だらけだっ!」
「もうっ!もうダメだあああああぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」
罠に掛かったグリクス地方軍団は、攻撃を受けてしまった地点を中心に、四散しながら逃げ道を求めて、それぞれバラバラに逃げ出して行く。
散り散りに逃げ出す者、炎に焼かれる者、煙に巻かれ咳き込みながら息絶える物など様々な最後や運良く逃げ延びる者も居た。
そんな中でグリクス地方軍団の将兵の一隊が希望の道を見つけ出した。
「くそっ!!一体っ!如何したら良いんだよっ!!」
「おっ?!おいっ!!見ろよっ!!!」
「南に何も無い通り道が一ヶ所だけ有るぞっ!!」
「おおっ!!助かったっ!!!」
「くくっ、間抜けな奴らめっ!」
グリクス地方軍団の一隊に所属する将兵らは、炎の中で、南に大きく広がる逃げ道を発見し、雪崩を打って炎の中を駆けて行く。
それも銃砲火の中をだ。
「はぁはぁはぁはぁ・・・・・」
「ひぃひぃひぃ・・・・・・・」
「はぁはぁはぁはぁはぁ・・・・・・・・」
10数分かけて逃げた時間は、彼らに取って数時間ほど走って居る時間が経っている様な気がしてしまって居た。
とても、とても長く、そして短く感じる時間だった。
戦場から300メートルほど南に下った先に、西から流れる湖の水か川の様に流れる小川が在った。
「くはっ!!けほけほっ!!はぁはぁはぁ・・ふうーっ!」
「ひぃふぅ、ひぃふぅ、ひぃふぅ・・・・・・」
「みっ、水だっ!」
「ぷはーっ!!冷たくて気持ち良いいいぃぃぃぃーーーーっ!!」
「ふうーっ、はぁー生き返るううぅぅーーーっ!」
ようやく一時の安息が訪れ、逃げ延びた将兵らは、この場所で一息付く。
「此処は?」
高位の将校が近くの大尉に地理に付いてを尋ねた。
「はっ、西側から東へと湖の水が流れ込んでいる小川の様な場所ですね。」
「まぁ、良い。一息付いたら本隊と合流するぞっ!」
「はっ!」
だが、これも罠だったりする。劉備軍が曹操軍から逃げる為に、新野城を城ごと曹操軍を焼く尽くす策を用いた策の様に・・・・・・
そして、曹操軍はとある川へと逃げ延びると言う話がある。
其処で孔明の命を受けた関羽は、川の上流で水を塞き止めて、軍勢が通り掛かった所に水を流し込んで、更に追撃を食らわすと言う有名な顛末がある。
勿論、自衛官等は、別働隊を編制し、この作戦を水魔法に人海戦術方法とポンプ装置で、川の西側上流に溜池を作り、無線機で報せて水を流し込むと言う策を思い付く。
これは彼の孔明よりも、数段悪どく性質の悪い方法かも知れない。
何せ名軍師である孔明先生は、魔法や機械を用いては居ないからだ。
「んん?!」
「なぁ、この音・・・・・」
「ああ、何だろう?」
「おっおおいっ、西を見てみろっ!」
「みみっ水だああぁぁーーーっ!!!」
「しかも、何だよあれっ!!洪水クラスだあぁぁぁ!!」
「だだっ、ダメだっ!にっ逃げられないっ!」
「「「「「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!!!」」」」」
あっと言う間に、日シベ合同作戦軍の罠から逃げ延びた筈だった者達は、洪水に呑まれて行く。
馬や地竜すら呑み込んで、その場に居た者らは、跡形物無く流されて行ったのだった。
「こちら黒田。敵部隊の壊滅を確認した帰還する。」
マニア隊員達は、更に悪どい事に、洪水の策を生き残った場合を想定して、古事の書物に書かれた如く、止め役として派兵されて居た張飛の変わりに、黒田一尉率いるアパッチ隊に止めを刺させる予定で居たが、その必要が無く、黒田一尉は、出番無く引き上げて行くのだった。




