96話 激闘!レジェンダリア諸島 カントルナ砦近郊上陸撤退戦 (グリクス地方奇襲戦 12)
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月6日・午前5時10分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖畔南部地域・グリクス地方・ローラーナ帝国・ローラーナ帝国領・グリクス地方州・グリクス地方軍団・グリクス地方西方戦線区・グリクス市・グリクス要塞から西へ凡そ、60キロ付近・日シベ合同作戦軍とアセリナ王国空挺艦隊合流地点にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
明け方、日の光が東から差し込み始めた午前5時を回る頃、スミレイン・デコモリン少佐は、アセリナ王国空挺艦隊12隻を引き連れて、日シベ合同作戦軍との集結地点へと現れた。
「合流予定の時間通ーりデース。」
置鮎一佐は、作戦開始前にアセリナの聖天使騎士の1人に伝令を頼んで置いたのである。
奪い取った敵の補給物資の輸送の為に、輸送船を出して欲しいと。
その要請を受けたアセリナ王国政府上層部は、総長が不在の中で、しっかりとした体制で動いて居る文官や将校らが、日シベ合同軍支援の為に、空挺艦隊の派遣を決めたのであった。
日シベ合同作戦軍の第一・第二合同作戦軍らは、その後は、更に2ヶ所の砦を陥落して、引き上げを決定する。
捕虜と成った帝国軍の者達は、武器を取り上げて最低限の水と食料類を残して放置し、縄は解いてやって解放してある。
生き残りの将兵らは、とにかく奇襲を知らせ様と、無事な近隣の帝国軍の砦か宿場町へと直走り、兎に角、この危機を知らせられば、何でも良かった。
彼らがガミトフへと知らせたのは、日シベ合同作戦軍が撤退を終えた後であった。
デコモリンは、自衛隊に頼まれた、ローラーナ帝国軍から奪い取った戦利品を積み込んで行く。
「助かりました。デコモリン少佐。」
「此方も逃げる時間も有るので、余分な荷物を積み込んで貰う船の心当たりが、アセリナ軍くらいでしたので・・・・・・・」
「いえいえ、それは構いマセーン。」
「此方も出立前に、普段なら使わない魔導通信水晶の通信が入り、西方で大きな動きが、有ったとかを聞きマーシタ。」
「詳しい内容は知りマーセンが、貴国のが絡んで居るのでは?」
「ええ、この作戦に併せて、我々自衛隊の一隊が、大規模な陽動作戦を展開中して居るらしく。」
「どうもそれに便乗する形で、ダバ・ロード王国・スッコッチアイランド州方面軍の全面攻勢にまで発展したとの報せを聞いて居ます。」
「オオッ!ソコマデの規模だったとはっ!?」
「いやーっ、本当に実戦とは、何が起るかは分かりませんね。」
「その通りだと思いマース。」
デコモリンと置鮎一佐の二人は、作業が終わるまでの間、しばし雑談をして居た。
その向こうで、リナが魔法を使って木箱をアセリナの空挺戦艦に荷運びの手伝いをして居た。
「ふーっ、次はあっちっと。」
「ご苦労さん。」
「クリス、何よ。今は忙しいんだけど?」
「リナ、お前は働き過ぎじゃないのか。」
「まぁね。撤退する時間を少しでも稼ごうと思ってるから。」
「少しは家の兵の連中に任せて、お前は少しでも休め。」
「あんなデカイ広域魔法を撃ち放って置いて、魔力の減り具合は尋常じゃない筈だ。」
クリスは、新友であるリナの身体を案じて、休めと促すが・・・・・・・・
「別に良いわよ、サンダースレイブの1発や2発はへいき・・・っととっと。」
「やっぱりな。お前、ここ最近の間に、何が有った?」
クリスは、よろけるリナを支えると、耳元で事情を聞きだす。クリスは、まだリナの過去の事情を知らない。
「どうせ、その辺りの事情を報せるのに、大方の所はハンナの奴はうっかりして、事情を私達には、報せて居なかったんだろう?」
「紅葉や私にも言えないのか?特に紅葉は、お前との付き合い長いだろうに・・・・・・・」
「・・・・・姉さんが攫われた。」
「ええっ!?あのレナ姉ぇがか?」
「おいおい、何の冗談だよ、嘘だろう?」
ダバード・ロード王国の王立総合技術研究所の研究員にして、稀代の魔導師でもあり、魔導関連技術の技師でもある。
そして、かなりの戦闘系統魔法の使い手でもあるレナ。
リナの姉のレナ・ミーサガ・リンバースは確かに強い。
数年前まで交流の有ったクリス達を含めて、レナの当時の事を知って居る者は、攫われたと知れば、確かにクリスと同じ反応するだろう。
「もう、攫われてから四年が経って居るし、あたしは、この二年間の間、ずっーと姉さんの行方を探してる。」
「だからか?こんな無茶な鍛え方で得た様な力を、お前って奴は・・・・・」
クリスは知って居た。
最後に会った時のリナは、学力や魔法学と使える才能は、中程度であった。
とても姉であるレナには、遠く及ばない実力で、何時も才覚を比べられて居たが、姉妹仲は決して悪くは無かったのだ。
「姉さんが居なくなって、リンバース家とその親族は、身の安全の為に離散させられて、魔法の成績がソコソコ良かったあたしをアーヤ陛下は、事件の犯人から遠ざける為に、敵の手が一番に及ばないエリン様の所に国外追放させられた。」
「あたしは、着の身着のままに、過酷な白竜人族の国へと遠ざけられた。」
「面倒を見てくれたエリン様は、衣食住と勉強を見てくれを見てやると仰られ、とても良くしてくれた。」
「でもあたしは、あの時に決意して居たの。絶対に姉さんを取り返すってっ!」
「だから、エリン様が、あたしの事を軽く鍛えるだけと言われて居たけれど、そのエリン様に頭を下げて、姉さん達と同じ様に弟子入りした。」
「ばっ、バカかっ!あの化物染みた姉さんらは才能と才覚、恵まれた身体が有ったから平気だったんだぞっ!!!」
「そんな人達が、その才覚を異常なまでに伸ばさせた、あのお方の修行なんて受けたら、並みの才覚の奴なら命が幾つ有っても足りないし、それこそ死ぬぞっ!!!」
「仕方が無いじゃんっ!!!誰も頼れなかったんだからっ!!!」
「あたしには、誰も味方が居なかった。誰も巻き込めなかった。」
「だっ、だからっ!あたしは・・・・・」
「まぁ、いいさ、これからは頼れ。頼れば良いのさ。」
「えっ?!」
「口が悪くて、半泣きの地味な奴が、その馬鹿げた体付きと力を手にしたんだ。」
「私達、幼馴染みをこれからは頼れっ!なぁ、リナ。」
「クリス・・・アンタ・・・・」
「べべべっ、別にっ!私に1人だけ心配した訳じゃ無いんだからなっ!!!勘違いするなよなっ!!」
クリスが言ったのは、赤面する定型的なツンデレの台詞である。
「くすっ、ありがと。」
昔から何か有るとこうして、何時もの様にクリスの成れない励ましをリナは、思わず微笑しながら小さく呟く。
隣では赤面の親友が立っている側で・・・・・・・・・
「ほら、たがら今は休んでろっ!」
「今から部下たちを呼んで、お前の分までやってやる。」
「この後も稀代の魔導師、雷帝リナの活躍は、此処からが本番だっ!」
「分かった。大人しくして居る。」
リナは休息の為に、客間として割り当てられた部屋へ行く為に、かがへと向った。
「全く、面倒なや、じゃ無いな・・・・・ホンとみんな、面倒な奴等なんだ。」
クリスは、自分を含めて、幼馴染達は、本当にめんどくさい奴だと思いつつ苦笑し、リナの境遇を助けてやろうと決意を新たにするのであった。
朝日が差し込む中を揚陸護衛艦のおしか おが まつまえに入って行く10式戦車や16式戦闘車、89式装甲戦闘車のエンジンが響き渡る。
ヘリコプター搭載護衛艦かが、ひゅうがの甲板上では、ヘリが荷揚げ作業やギリギリの時間まで哨戒活動に出て居る姿が見られて居た。
日シベ合同作戦軍の各部隊は、午前6時に成る前に、合流地点から引き上げを完了し、堂々凱旋して行ったのである。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月6日・午前7時10分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖畔南部地域・グリクス地方・ローラーナ帝国・ローラーナ帝国領・グリクス地方州・グリクス市・グリクス港・グリクス地方軍団・グリクス地方中央戦線区・ローラーナ帝国軍・グリクス地方軍団官庁舎にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この日の早朝6月6日・午前7時10分頃、グリクス地方軍団の司令官であるガミトフ・バイマン中将は、グリクス地方西部や近隣の基地や部隊から届いた第一報の報告を受けていた。
「くそっ!!抜かったわっ!!!」
ガミトフは、多くの伝令官や緊急魔導通信からの報告や援軍を求める声に忙殺されていた。
「ニホン軍めっ!西方への大規模な攻勢に見せかけた陽動作戦の展開。」
「しかも、ダバ・ロード王国・スッコッチアイランド州方面軍が、我が管轄する軍管区への前面攻勢に出ると言う。馬鹿げた作戦まで仕掛けてるとは・・・・・・・・・・・」
悔しがるガミトフのその隣には、傭兵業を生業にしている海坊主かタコ坊主と言った感じの丸い眼鏡を掛けた大男であるババロスク・オバム大佐が立って居る。
「我がグリクス地方西部方面ゼルダ門要塞戦線地区の軍の反撃体制が整うと、ダバ・ロード王国軍は、さっさと占領地を放棄して、我が軍の物資を奪うだけ奪って逃げられるとは・・・・・・・」
「何とも鮮やかと言うか、完全にしてやられましたな。」
「全くだっ!ゼルダ門要塞ですら空爆を受けて、中枢機能が麻痺状態だっ!」
「向こう半年は、マトモな機司令部能を失うだろう。」
「糞忌々しいダバ・ロード王国の女狐めっ!」
ガミトフが言う女狐とは、アーヤ・シュチュ―ド女王の事である。
彼には片手で煌びやかな扇を仰いで、高笑いして居るであろう彼女の幻影が、垣間見えた気がして居た。
「更に気に食わんのは、わしの庭たる目と鼻の先の第七要塞などの防衛拠点を襲撃された事だっ!」
ダバ派遣艦隊を中心とした合同軍は、2部隊に分かれての奇襲作戦に見事成功し、少ないながらもローラーナ帝国軍・グリクス地方軍団から、補給物資の奪取に成功を収めていた。
ガミトフに取っては、顔に泥を塗り去り、面目を丸潰れにすると言う事態に陥る事に成ってしまう。
2部隊の奇襲だけに。
文字通りのダブルパンチのダメージを彼の名声や出世コースにヒビが入り兼ねない出来事と成ってしまって居た。
「ニホン艦隊に手を出したツケが、わし自らの判断では無いとは言え、火傷程度で済まなくなった。」
「くそっ!・・・・・」
重傷の大怪我だと言う言葉を飲み込んで、大損失と成ったガミトフの心中は以下ばかりか。
それを例えるのなら地を這う獣に手を噛まれての怪我では無く、竜に噛まれで手か腕1本を失うに等しい物と思われた。
「閣下は、この後、どう為さりたいのですかな?」
オバム大佐は、このままでは、ガミトフとグリクス地方軍団の面目が潰されたと感じて、ガミトフが今後、取りたい方針を聞いて見た。
「このままでは、わしの首が飛びかねない。」
「グリクス地方の西は、内陸部の要塞や砦を含む多くの拠点を敵軍に尽く破壊され、ダバ・ロード王国・スッコッチアイランド州方面軍ま全面攻勢に見せ掛けた陽動攻撃を受けて、ロクな反撃も出きずに、まんまと物資を奪われてしまった。」
「更には、我がグリクス地方軍団の眼前で奇襲まで受けると等は、これ等の事を看過する訳にはいかん。」
「オバムっ!グリクス地方軍団の全軍に召集を掛けよっ!」
「直ぐにでも、レジェンダリア諸島に攻め入るぞっ!」
ガミトフは激しく声を張り上げて言う。全面攻勢を仕掛けると。
「閣下、それは・・・・・」
「どの道、悠長には構えては居れん。」
「このまま時が立ち過ぎれば、わしらの立場が危うい。」
「帝国本国やローラーナ帝国東方軍を管轄して居るローラーナ帝国東方軍総司令官である第五皇子ゾイザル殿下や司令部にでも因縁で付けられて見ろっ!」
「事と次第では、我らの降格所の騒ぎでは済まんのだぞっ!!!」
「何もせずに降格し、軍団全てを取り上げられるか、戦って活路を見出すかで有りますか?」
「そうだっ!このローラーナ帝国と言う国で、敗北したとしても何もしない者は、無能の烙印を押されるのが当たり前だっ!!!」
「其処から助かりたければ、立ち上がって這い上がり、それも死ぬ気に成って敵陣に挑み戦って、初めて上からのお許しが貰えるのだっ!!!」
「オバムっ!此度は死んで貰うぞっ!!!」
「致し方有りますまい、未知の敵が相手とは言え、このままで上級将校の首脳部の背責任問題とまでの可能性も有りえると言うもの。」
「このオバム、閣下に散々目を掛けて頂いたご恩も有ります。」
「準備が整い次第、出陣せよ。」
「この旅の数々の戦で、二ホン軍に対しては、中途半端な兵力では、敵わない事は分かっただけは、ある意味、朗報と言える。」
「貴様は、先陣艦隊を率いてレジェンダリア諸島のカントルナ砦へを落とせっ!」
「カントルナ砦は確か・・・・レジェンダリア諸島の東に位置する重要な守り拠点ですな。」
「そうだ、同時に此処を抑えれば、ニホン軍を脅かす事が出来よう。」
「なるほど、ニホン軍が自国へと帰還するには同地を通って戻るか、オローシャ帝国から西へと回り、外海へと出てから大陸の外を大回りをして、北の海であるスノーリュウス海を回っての大航海をせねば成らないと言う事に成りますな。」
「彼の鉄船艦隊の航続距離は、どの位かは想像も出きんが、相当な労力を強いられると考えられる。」
「それを嫌がれば、我が軍に立ち向かうか、強行突破する2択しか無い筈だ。」
「閣下もパイプ・ライン大河を制すると言う悲願も達せらる。」
「何方の軍勢に取っても、正に賭けであり、一石二鳥と言う事に・・・・・」
「わしは後続艦隊と揚陸部隊をかき集めて、後を追う。」
「それまで、貴様にはグリクス地方軍団全軍の指揮を任せるぞっ!」
「ははっ!お任せ下さい。」
ガミトフは、この世で最も恐れるべき人物の1人として恐れられるドラグリア白龍大帝国の白龍大帝であるエリンの襲来を恐れて、後方へと下がらせて居たグリクス地方軍団のグリクス地方軍艦隊の本隊を呼び寄せるべく動き出した。
間も無く後世の歴史書に措いても、レジェンダリア諸島の戦いの序盤での激闘と言われるカントルナ砦上陸撤退戦が、始まろうとして居た。




