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対極地

 マコト少年は自分の人生に悲観していた。

 別になにか悪いことをしたわけでもなく,いじめられているわけでもない。成績も悪いわけではなく、顔も悪いわけではない。

 朝起きてご飯を食べ、学校に行き授業を受ける。放課後は部活をし,帰ってきて遅い夕食を食べ,眠りにつく。そしてまた朝…そんなメリハリのない人生に彼は飽きていたのであった。

 家に帰り,気持ちを紛らわせるため,マコトはとりとめもなくテレビジョンのスイッチをつけた。画面に下品な笑い方をするお笑い芸人たちが現れる。

 僕はこんなものが見たいんじゃない。またとりとめもなく,チャンネルを変えてみる。すると今度は「キャプテン・マックス」と大きいなロゴが画面いっぱいにあらわれた。

 それは最近何かと流行りになっているSF超大作ドラマだった。特に興味はなかったがマコトはすぐに大迫力の映像と音楽に圧倒された。

 広大な銀河を飛ぶ宇宙船、宇宙海賊との熱い銃撃戦、濃厚なラブロマンス…全てが平凡な日常とはかけ離れている世界。

「あぁオレも一度でいいからこんな体験をしてみたいな」気づけばマコトはその世界観に引きこまれていた。少なくともこちらの世界よりは楽しそうだ。

 おもむろに彼は窓を開け,星空を眺めだした。

 あの星のどこかで,今もドラマティックな出来事が起こっているかもしれない…そんな空想にふけるマコトだったが,時計を見て再び現実に引き戻された。明日も早起きしなければいけない。

 窓を閉め,部屋の明かりを消し,ベットの中に潜り込む。平凡な人生に対する不満でいっぱいだった頭のなかが徐々に空っぽになっていく。

 こうして,平凡な世界に退屈していたマコトは,平凡なベットの上で,平凡な夢を見て,平凡に眠りについた…



 宇宙警備隊は銀河をまたにかける長き戦いから解放され,つかの間の休息を過ごしていた。しかしまたいつどこで争いが始まるか分からない。彼らに心の余裕はなかった。

 今回もまた宇宙海賊を壊滅させることはできなかった。ギリギリのところでいつも逃げられてしまう。一体,いつになったら銀河に平和が訪れるのだろう。皆それぞれが大なり小なり,不安を抱いてこの宇宙船<リバーラック号>に乗り合わせていたのであった。

 当然隊長であるマックスにも同じような不安はあった。彼には妻と二人の娘がいる。早く故郷に帰り家族の顔が見たい,という恋しい気持ちと,いつまた星が襲われるかわからないという心配な気持ちとで板挟みになり,ここ数日は夜も眠れていない。

 しかし彼は隊長という立場上,弱気な姿を隊員に見せることは許されなかった。

 だから彼は涙をこらえ,平静を装い,談話室へと向かった。

 何やら楽しそうな音が外に漏れてくる。中では数人の隊員たちが何かを囲っていた。船員たちは隊長が入ってくるのにも気づかず,その何かを食い入る様に見ているようだった。

 やあ,とマックスが声をかけて初めて,隊員たちがこちらの方を向く。慌てて礼をしようとする彼らをマックスは優しくなだめた。

 「それよりみんな,何を見てるんだ?私にもちょっと見せてくれ」そういうと若い二人の隊員がソファから立ち上がり席を譲った。

彼らが夢中になって眺めていたもの,それはテレビジョンだった。

 放送内容はマコトという少年を主人公にした心温まるホームドラマ。平和な朝を迎え,平和に学校へ行き,平和に汗を流し,平和に眠りにつく…

 「そうか,テレビドラマか。私は初めて見るな」隊長は全身の力を抜き,ソファに腰を下ろし,世界観にどっぷりとはまっていった。

 「しかし平和というものは素晴らしい。私の父がまだ生まれたばかりの頃は,こんな世界が残されていたらしいがなぁ。今の世の中は殺伐としすぎているよ。ああぁ私も一度でいいからこんな体験をしてみたいな」

 宇宙船の丸窓からみえる無数の星々。この中のどこかには平和があるのだろうか。どこかでマコト少年は平和に暮らしているのだろうか。

 そんな空想にふけりながら,マックスはただただ画面を眺めていた…





僕もよくこんな妄想をします。大富豪だったら,天才的な芸術家だったら,明晰な頭脳を持っていたら…でも自分自身を満足させられのって与えられたものではなくて,後から自分で手にしたものだと思うんです。

受験勉強のために塾に行ったり,パラレル・ワールドについて考えていたら思いついた小説です。結局はどんな道でも,努力ってやつは必要なんですね…

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