ギルドに登録してみよう
大変遅くなり申し訳ありません。引越しなどでバタバタしていたため時間がかかってしまいました。相変わらず文章力が低いですが、矛盾点などがあればコメントいただければと思います。
バルドの店を出てギルドに足を運ぶ二人。
ジーナは満足気に腕を振りながら歩みを進めている。
ハイネの方は、考え事をしているようで、どこか上の空のまま歩いていた。
「どうしたのハイネ、やっぱりその武器が嫌だった?」
目の前を歩いていたジーナが振り返り、首を傾げる。
「そんなまさか、武器に関しては大満足だよ。防具の方もひとまずは問題ないだろうし」
「じゃあ、何が気になるの?」
「今更ながらやっていけるか心配になってきたんだよ。こっちには来たばかりでわからない事ばかり、戦う事も必要になる。家族達にも何の連絡もしていないし色々考えちゃってね」
ハイネ自身少し不安に思うこともあるのだが、過去に異世界からやってきた人物が気になっている。
自分はある程度知識があるが過去にやってきた人物は結局元の世界に帰ることが出来たのか、アルミアがその事について伏せていた事も引っかかっているようだった。
実際のところ異世界からやってきたという人物についても機会があれば調べておきたいとも思っている。
うーん、と悩んでいるとジーナが声をかける。
「大丈夫、私達が色々教えてあげるし、元の世界にも連絡すればいいんだよ」
「そうだな、元の世界に帰る方法もあるみたいだし、まずはこっちの世界に馴れることにするか」
「そうしよう」
二人して頷き、顔を合わせて笑う。
今悩んでもしょうがないことだと割り切って、ひとまずは出来ることをやっていくことにしたのであった。
しばらく歩いているとギルドに到着した。
中に入ると特にだれも見当たらない、カウンターに昨日シエルと話しをしていた、精霊人の女性ギルド職員が作業をしているだけだった。
ハイネ達に気付いたようで、挨拶をする。
「あらジーナちゃん、いらっしゃいませ」
「登録をしにきたの」
「ということはこちらの方?」
ハイネを見て首を傾げる。
ジーナが頷き、ハイネを見る。
「神代灰音です。よろしくお願いします」
「初めましてギルド職員のリルです。よろしくお願いします。では登録するにあたってこちらに手を翳していただけますか」
そこに置かれたのは赤と青の水晶のようなものだった。差し出された青い水晶に言われたとおり手を翳す。
「では、そのままステータスカードを出して頂けますか」
ステータスカードを出してみると、水晶の中にカードが出てくる。
リルはそれを確認すると、今度は赤い水晶を出される。
「こんどはこちらに手を翳して、承認とおっしゃってください」
言われたように手を翳して、承認と口にするハイネ。
それぞれの水晶が光ったと思うと青い水晶に入っていたステータスカードが消えていた。
それを確認したリルが水晶を片付ける。
「以上で手続きは終了です」
「ずいぶん簡単に終わるんですね」
「そうですね、ギルドの登録は本人の同意が得られれば出来てしまいますので、難しい事はないですね」
ハイネとしては色々質問などを受けて登録をするのだと思っていたので少し驚いている。
「とりあえず、ギルドの事がよくわかっていないんですが教えてもらえますか」
この世界ではギルドはもっとも身近な職種で、誰でも知っている内容なのだが当然ハイネは知るわけがない。リルは少し驚いた表情をしたがすぐに笑顔になり。
「かしこまりました、では一通り説明させていただきます」
と説明を始める。
ギルドとは、この世界で一番有名で、原則として、貴族や国の王でも登録が可能な職種。ギルドの登録作業は自身の情報を開示して承認するだけで出来て、辞めることも出来る。一度辞めてしまうと再度登録しなおす必要があるので基本は辞めるようなことはない。
その仕事内容も複数あり、人探し、アイテム収集、ダンジョン攻略、魔物の討伐など、ギルドに依頼を出し、その依頼を引き受けて達成させるといった、何でも屋に当たる。
登録が完了するとステータスカードとは別の、ギルドカードが出せるようになる。大きな違いとしては、見た目の違いと表示される内容にある。
無色透明なステータスカードに対して、ギルドカードは自身の属性に色が反映される。
表示される部分も変更が可能になっているが、名前と、ギルドランクは必ず表示され。もしも犯罪者の場合ギルドカードに表示される。その他の部分は自由に表示したり隠したりすることが可能なのだ。
また、身分証としても非常に有効で町に入ろうとした場合、通常は代表者の許可を貰うか、滞在期間のリアを支払う必要があるのだが、ギルド側の了承を得られるとそういった部分が免除されるのだ。
依頼を受けるにはギルドにやってくる必要があり、受けられる依頼にランクが存在する。本人のランクに応じてギルド側が依頼を受けていいか判断を下す。
Aランクの依頼を新米が受けると簡単に命を落とす事もあるので、安全面からランク付けがされている。
登録した時は当然一番下のEランクから始まり、依頼の達成数、ギルドへの貢献度などに応じてランクが上がっていく。AA以上になると、ギルドマスターや国の支持を得てようやく上がることが出来る。まさに選ばれし者達の領域なのだ。
結果として、ギルドの依頼をこなして行けばそれに応じて受けられる依頼も増えていき、必然的にランクが高い依頼になると報酬も増えていく。
自身のランクが上がるとギルド側から専属依頼が発行されることがある、依頼主から直接指名をされたり、ギルド側が難易度に応じて特定の人物に依頼をかけることがある。
その場合は報酬金額が高かったり、追加報酬などが支払われたりするのだ。当然ながら、命の危険がある場合もあるので断ることも可能ではあるが、上位ランクの者になるとほとんどの者が断ることはない。
「こんなところですね。何か気になることは御座いますか?」
そこまで黙って話しを聞いていたハイネがいくつか質問する。
「依頼を受けるにはどうすればいいですか」
「基本は掲示板を見ていただいて、カウンターにお持ちいただきます。ただ、文字が読めない方にはカウンターで案内も行っております」
「なるほど、その場合は希望の内容を伝えたり、ギルド側からその人にあった内容を案内したりってところですね」
「そうなります、達成した後はギルドカードをご提示いただき、成功報酬が支払われます」
昨日シエルが行っていた内容を思い出して納得するハイネ。
「成功の判断はどうするんですか」
「例えば、アイテムの収集になると、依頼の品を用意して、ギルドに持ってきて頂く必要があります。魔物の討伐などの場合ギルドカードに勝手に反映されますのでギルドに来ていただければ確認できます」
依頼の達成可否は大体ギルドで管理できることになるので特に難しいことはない。ハイネとしては自動的に討伐数をカウントしてくれることは便利だと思った。
そこでリルが何か思い出した様子で話し出す。
「クランの説明を忘れていました。こちらはギルドが管理してるわけではないのですが、目的をもった方々が集まり行動する組織になります」
「ジーナ達の【平和の探求者】みたいな人達ですか?」
「ご存知でしたか、【平和の探求者】はクランマスターのアルナトム様を筆頭にした、色々な種族の方々が所属している冒険者クランです。正直私が説明するよりもご本人達から聞いていただいた方がいいかと思われます」
「そうですね、後で聞いてみます」
「そのクランですが、ギルド側に申請を出していただき、承認がされるとギルドカードに反映されます。クランマスターの了承を得られるとクラン団員になります、所属クラン団員で同じ依頼を受けていただいたり、内容に応じて適正能力の方にお願いしたりします」
クランに所属していると受けられる依頼の幅が広くなり集団での行動が可能になることによって、依頼の達成難易度が大幅に上がってくる。
ようするにパーティーを組む事によってそれぞれの動きを簡略化することが出
来るのだ。
魔物を狩ることに特化した討伐クラン。物品の売買や取引を生業とした商業クラン。ある人物や、村や町などの守りを重点とした護衛クランなど、多種多様に応じたクランが存在する。ギルドが管理しているわけではないので、クランの中で掟であったり、行動理念がそれぞれに存在する。
「クランに所属するかは個人の自由で、新たに自分でクランを立ち上げてしまうことも出来るということですね。そうなると個人で動くのは難しくなってしまうと」
「はい、クランの方針にもよりますが、自分の勝手な判断で動くことに支障が出てしまいます。ただ、生活の為に依頼を受けるということであればクランに所属しておいたほうが命を落とす可能性が下がりますので大抵はクランに登録されることが殆どですね」
「成程、覚えておきます」
ハイネとしては黒魔力を集める者を見つけて神を創造するのを止める事が目的になるので、可能な限り個人的に動きやすい状況のほうがいいので、無理にクランに所属する必要はないのだ。必要であればクランに対して依頼を出すことになるかもしれないと考える程度だった。
それとは別に気になることも出来た。
「クランに関してはわかりました。気になることが出来たんですが、依頼に対して不正をした場合どうなるんですか、たとえば、依頼のアイテムを奪ったりとか」
犯罪を行った場合どうなるのか、依頼内容によって対立することもあれば、ひとつの目標を取り合う可能性もある。そういった場合に争いになったりする事も考えられる。
「ギルドのブラックリストに上がります。相手がわかればすぐに処罰が下ります。ギルドに登録していれば名前がすぐに挙がりますからね。当然ながらギルドで依頼が受けられなくなります」
ギルドが発行していることもあり、犯罪者には厳しい罰が与えられる。クランに所属していればクランが責任に問われたり、ギルドから登録抹消されたりする。
ただし、相手がわからなければどうすることも出来ない。道中で魔物に殺されてしまい別の人がアイテムを拾って届けたりすれば犯罪にはならない。
「てことは、殺人もあるんですよね」
「はい、ございます。その場合は、国に追われる形になり、ギルドからも懸賞金が賭けられることになります。捕まると犯罪奴隷になったり、最悪死刑になります」
当然ながら相手も大人しく捕まる訳ではないので相応の危険が伴う。ただ、懸賞金の金額も非常に高額のため、そういった人物を捕らえて生活をしているクランも存在する。
だがハイネはそれより気になることがあった。
「あの……奴隷って、いるんですか?」
元の世界でも昔は存在していた奴隷、現代社会では認められてはいないが知識として聞いたことがある。
「そうですね、この里ではそういった方はいないですが、世の中には奴隷は存在します」
精霊人は平和的な考えを持っており非常に奴隷制度に反感を持っているが、国によって奴隷制度が存在する。当然ながら奴隷と聞いてあまりいい顔は出来ない。
そんなハイネをみてリルが補足する。
「この国では奴隷制度は廃止されていますので、他国の話しになりますよ」
「そうですか、一応そういうこともあると覚悟しておきます」
いずれ他国に渡った時の知識として留めておくことにした。
特に他に気になることもないので切り上げることにする。
「大体わかりました。ありがとうございます」
「またご不明点があればおっしゃって下さい」
ジーナに声を掛けようとすると、掲示板の前で依頼を見ているようだった。ジーナからすると当然わかっている内容なので特に面白いこともなく、暇を持て余していた。
「おまたせジーナ、ごめんな遅くなって」
「ん、終わった?」
「今のところは大丈夫かな」
「簡単な収集依頼でも受ける?」
「またにする、他にしておきたい事もあるし。そろそろ昼飯も食べたいからね」
時間にしてお昼過ぎになっており、ハイネとしては依頼を受けるよりも先にやっておきたいこともあった。
「わかった、ならご飯食べにいこ」
「それじゃあ、リルさんまた来ます」
「お待ちしております」
手を振りながらジーナに引きずられるハイネに、笑顔で手を振りかえすリルに挨拶をしてギルドから出るのであった。