ようやくの食事
途中からシェルティミィの呼び名がシエルに変わります。今後はそうなりますのでよろしくお願いします。
里への帰り道、馬車の中ではシェルティミィに報告がされていた。
「いや~正直焦ったぜ、森で素材集めしてたらリビングアーマーの集団を見つけちまって、装備も戦闘用でも無いし報告に戻るか考えたんだがな」
言いながらちらっと、腕を組んで座っているウルモスを見るラッセル
「旦那がいたからいけると思ったんだがな、まさかブラッドアーマーまで出てくるとは予想外にもほどがある」
「まあ、俺の足では報告に戻るにも時間が掛かりすぎるからな。片付けてしまった方が早いと思った訳だ」
実際にリビングアーマーを最初に二体倒したのもウルモスだったらしい。パワーだけならメンバーの中でも飛び抜けて高いためリビングアーマー程度なら一撃で屠ることが出来た。
だが、背後からブラッドアーマーが現れ、ジーナに斬りかかってきて、それを庇いラッセルが負傷したのだ。
それを見た案内役のエルフの男性が里に報告に走ったらしい。
「ごめん」
ジーナが申し訳なさそうに兄のラッセルに頭を下げる。
「あーあー、気にすんな可愛い妹を助けるのも兄の勤めだ」
ニカッと歯を見せて笑うラッセル、ハイネはその光景を見て、自分の妹が同じ状況に陥ったら自分も身を挺して守っただろうな、と考えて頷く。
それをみてラッセルがハイネに話しかける。
「ハイネだったか、お前も妹がいるのか?」
「ああいるよ、やっぱり兄貴は妹を守るべきだ」
「そうだなそれは間違いねぇ。んで、ちょっと聞きたいんだがお前歳はいくつだ?」
「17だけど、どうかしたか?」
「嘘だろ!?全然みえねぇ!」
何故かシェルティミィとジーナも驚いていた。
「え、何かおかしい?」
「ごめんなさいねハイネ君、さっき戦闘は初めてって言ったでしょ?普通は成人の前までに魔物を倒すことが主流になっているから、まだ成人してない歳だと思ってたの」
「はい先生!質問です!」
ビッと勢いよく手を挙げるハイネ。
突然のことにシェルティミィがたじろぐ。
「先生って……何かしらハイネ君」
「普通とはそうじゃないことがあるんですね?また、成人は何歳でしょうか」
「えーと、王族とか貴族の子供、後は海の向こうの国では無いみたいね。ただこれは共通で、成人の年齢は15歳からなんだけど本当に知らない?」
「そんなことも知らねえのかよ、どこの国の田舎もんだよ」
ラッセルが手を叩きながらゲラゲラ笑う。
少しカチンときたハイネだがジーナが首を傾げながら声を出す。
「どこかの王子様とか?」
馬車の中が静まりかえる。
ジーナ以外が何故か険しい表情をして警戒をする。
「いやいや、違いますよ?こんな王子なんかいるわけないでしょう、普通の人ですよ」
必死に違うことを説明するハイネ、それもそうかと表情を緩める三人、本当に王子だったらどうなってたんだと額の汗を拭う。
「マジで何もんだ?」
「私は命を助けてもらったし、悪い子には見えないけど……まあ、長老の家で詳しく聞かせてもらいましょう」
シェルティミィが話を切った所で、荷馬車が止まる。
「皆さん付きましたよ、荷物を降ろしましょう」
ムルトリスが運転席から下りて声を掛ける。いつの間にか里まで帰ってきていた。
荷馬車から降りたハイネにムルトリスが声を掛ける。
「すいませんハイネ君、シエル達も悪気があったのでは無いんですが、ハイネ君が何者なのかまだ判らない以上警戒してしまうんでしょう」
「随分と王子様は嫌われてるんですね」
「人族の王家に対してですね。ある国では他種族を捕らえて奴隷にしたりしますから、僕達は知りませんが昔には大量虐殺なんて事もあったみたいですよ」
「なるほど、その国の王子とかだったら何されるかわかりませんね」
「ハイネ君はそのような事はしなさそうですし、僕は危険ではないと思ってますよ」
肩を竦めるムルトリス、その後ろではウルモスとラッセルが甲冑を荷馬車から降ろしている。
「さて、僕達は討伐報告をしてから長老の家まで向かいます。シエルとジーナはハイネ君と先に行ってください」
「そうね、私とジーナは討伐してないし。私は長老に今回の説明でもしておくわ」
それじゃあと移動しようとした時にハイネがムルトリスから預かっていた剣を返す。
「これ、ありがとうございました。少し乱暴に使ってしまいましたが」
「後でもよかったんですが、剣自体はかなり頑丈なので大丈夫ですよ。ではまた後程」
「行こう、ハイネ」
「うわっ引っ張るなよジーナ」
ジーナに腕を掴まれて引っ張られるハイネ、やれやれとシェルティミィが殺気を飛ばしているラッセルに大丈夫だからと言って付いて行く。
「あんにゃろう」
「ハイネ君なら大丈夫ですよ。少なくとも僕達に偏見などは持っていないですし」
「いや、それはわかる。俺達の姿をみても馬鹿にしたり下に見ることも無いからな。ただ、ジーナにくっつき過ぎだ。見ろ、鼻の下を伸ばしやがって」
「あぁ、そっちですか」
別に鼻の下は伸ばしてないでしょうと思いつつ、余計な心配はしているみたいだったが、ラッセルもハイネに対して悪い印象を受けていない事に安心した。
「こちらもさっさと片付けて僕達も向かいましょう」
倒した甲冑を持ってギルドに向かうムルトリス達だった。
里の中で中心に存在している大きな樹の麓に存在する家、それが長老の家だ。木造の家ではあるがしっかりとした造りになっていて二階建て、体の大きな人も訪れる事もあってかなり大きな玄関が見える。
「戻りました、シェルティミィです」
玄関の扉を叩いて声を掛けると、少しして精霊族の女性が扉を開けて中に案内してくれる。
家に入ると広間から二階に上がる階段がある、いくつか扉が見えて、玄関から真っ直ぐ向かう扉に通される。
部屋の中心に大きな長机が用意されていて椅子に掛けるように言われる。
ハイネが奥から二番目の席に座り、シェルティミィがその反対側に、ジーナがハイネの隣の奥の席に座ると、少々お待ち下さいと言って案内してくれた女性が奥の扉に入っていく。
「皆が来るまでそんなに時間はかからないと思うから、もう少しだけ我慢してねハイネ君」
「わかりました。シェルティミィさんはずいぶんと落ち着いてますけどよくここに来るんですか?」
「産まれたのは別の場所だけど、育てられたのがこの家だから馴れてるかな、あと、今更だけどシエルでいいわよ」
「じゃあ、シエルさんはここに住んでるんですね」
「今はギルドのクランメンバーとしてあちこち動き回ってるから住んではいないわ、私達に里から指名依頼があって、その依頼の最中に空から飛んで、というか落ちてくるハイネ君を見付けたのよ」
たまたま近くに居合わせたのでハイネを見付けられたが、そうでなかった場合はまだ湖に浮いていたかもしれなかった。
「あのバカ神様、やって来ていきなりデッドエンドになるところだったぞ」
「どうかしたハイネ?」
ブツブツと文句を言っているハイネに隣に座っているジーナが声を掛ける。
「次に会ったらある奴を懲らしめてやろうと思っただけさ」
「そ、そうなんだ、怖い顔してるよ」
「おっ?ごめんごめん」
悪い顔をして笑っていたがジーナには普通の笑顔を向ける。
「すまん、待たせたの」
そういって奥の扉から長老が現れて席に着く。
「ふむ、ムルトリスはギルドに報告かのう?」
「ええ、現れた魔物は退治したけど、他にいるかも知れないから、その事も警戒するように伝えてると思うわ」
「しかし、ブラッドアーマーとは……えらい大物が現れたな。この辺りではあのような魔物は生活できん筈じゃが」
この周辺では魔力が豊富で魔物が産まれにくい、さらにブラッドアーマーのようなアンデッド系の魔物は生活すら出来ないので、現れることなどまず無いのだ。
シエルが頷き口を開く。
「これは憶測に過ぎないけど、今回私達に依頼があった内容の不審な人物が関与してるかと考えられるわ」
「やはりそうか、転移魔法でアンデッド系を送り込んだとなると、人族の線は薄いとなるが」
そこまで言って、長老がチラリとハイネを見る。
「ハイネ君は関係ないと思うわ。魔物が現れたタイミングを考えると転移魔法を使うための時間が明らかに足りないし、今回私は命を助けて貰ったからね」
「なんと!それは謝らんといかんな、申し訳ないハイネ君。シエルを助けて頂き感謝する」
と、長老が頭を下げてハイネに謝る。
「いいんですよ、突然現れて何者かわからない以上、疑われてもしょうがないです。俺もシエルさんには湖から助けて貰ってますから、助ける事が出来て良かったです」
「そう言って貰えると有難い、シエルは儂の友人の孫でな、ここで育てておったんじゃが、ギルドに入って里から出て行ってしもうた。今回里の周辺で不審人物が見られた事もあり、シエルに依頼を出したんじゃが、こんな事になるとは」
育ての親が心配していた事もあり、依頼を出す事を理由に里に呼び出したのだった。
そこでジーナが探索の話をする。
「兄さん達と調べたけど、森の中に誰かが生活した跡があった、足跡が残っていたけど恐らくは二人、既に姿は見えなかった」
「転移の準備をして、終わったから引き上げたと言うことかの、何か目的があるんじゃろうが、まだ何とも言えんな」
誰かが森にブラッドアーマーを送り込んだ事は間違いなさそうだが、誰が何のためにそんなことをしたのかは解らない。
と、そこでお腹が鳴る音が聴こえる。ハイネがお腹を押さえて下を向いていた。皆がそれを見て笑う。
「そういえば食事がまだじゃったな、準備は出来ておるので運ばせよう」
「すいません」
「シエルを助けてくれた以上大切な客人じゃ、遠慮せずにどんどん食べてくれ。おおい、食事を持ってきてくれんか」
そう言うと入口から食事が机の上に運ばれてくる。
白パンにサラダ、鍋の中にはスープが用意されていてそれをお皿に注いでいく。ハイネが目をキラキラと輝かせて見ている大皿には、こんがりと焼き上げられた肉が乗っていて肉汁が溢れている。他にも木の実や芋の練り焼き、果物などが置かれて行く。
「ハイネ君は酒は飲めるかのう?」
「ちょっとおじいちゃん、今からお酒を飲むつもり?」
「命の恩人に酒を振る舞うのは当然じゃろ」
「そんなこと言って自分が飲みたいだけでしょ」
シエルが怒っているが止めようとはしなかった、15歳で成人となるこの世界では飲酒も特に問題がない、そもそもそういった法律なども存在しないのだ。
「飲めない事はないですが、この後に自分のことも説明しますので今回は遠慮しておきます」
当然元の世界では飲酒は許されない年齢なので普段飲んでいるわけではないのだが、家族の誕生日に飲まされたりして酒は飲めない訳ではなかった。
それを聞いて長老がそうか、と残念そうに諦めていた。
結局木のコップには爽やかな香りのする柑橘系のジュースが注がれる。うんまあ、普通のオレンジジュースだ。
「では、いただくとしよう」
長老とシエルは目を瞑り手を組んでいた、ハイネがいただきますと手を合わせるとそれを不思議そうに見ていたジーナが真似をする。
用意された食器は木で出来たスプーンとフォーク、ナイフは銀で出来ているようだった。
白パンを千切ると胡桃が入っており、パンはモチモチと柔らかく胡桃の香りが口の中で拡がる。スープはミネストローネのような物でトマトの酸味と野菜の甘味がよく出ていた、芋をスープに浸けると味が染み込んで非常に良く合う。
サラダにしても瑞々しく、シャキシャキとした食感が楽しめる。
当然、空腹の限界に近かったハイネは無言で口の中に放り込んでいくが、メインは肉料理なのだ。見た目が重たそうなので、軽く胃に物を入れてから食べようと思っていた。
自分の取り皿に切り分けた肉を置きナイフで少し大きめに切って口に放り込む、思わず口元がにやけてしまう。
大味かと思ったが身は非常に締まっており、噛み堪えがある。噛めば噛むほど味が出てくるのだがその味はしつこくない、焼きあげる前に軽く燻してあるのかも知れない、余分な脂が飛んでいて、肉本来の味が楽しめる。
おろしポン酢があればいくらでも食べれそうだなと考えていると、ジーナが木の実と一緒に食べていた。
「その木の実は?」
「これだけで食べるとすっぱいけどお肉と食べると美味しくなるの」
モギュモギュと嬉しそうに肉を食べているジーナの真似をして木の実と一緒に口にする。噛んだ瞬間はツンとした酸味が拡がるが肉と合わさるとそれが甘くなっていく。
「これは、何とゆうか癖になるな」
「美味しいでしょ?」
ニコッと笑うジーナにそうだなと返事をしながら、今度は木の実だけを食べてみる。
顔をキューっとしかめるハイネを見て、シエルが笑いながら教えてくれる。
「それだけだとかなり酸味が強いけど、お肉と合わせる事によって味が変わるのよ」
「しょうなんですか、ソースにしたら色々合わせられそうですね……だめだ、すっぱい」
涙目になりながらジュースで流し込む、それを聞いていた長老が質問する。
「ソースとは?」
「うぇ?ソースないんですか?」
「訊いたことはない、木の実はそのまま口にするからの」
「マジすか、俺も作り方は詳しく知らないですけど、擦り潰したりしてペースト状にしたり、煮込んで液状化させたりして、こういった肉料理やサラダなんかにかけたりして食材の味を引き立てるんですよ」
「ほう、食材をスープみたいにして他の物に合わせるのか、さっき芋を浸けてたのと同じかの?」
「まあそんな感じですね」
「人族は面白いことを考えるな、是非試してみよう」
スープがあってソースは思いつかないってどうなんだと考えていたハイネだが、文化の違いは何処にでもあるし、醤油も外国では考えられなかったりするからなと納得した。
それよりも気になったのが、
「多分ですけど、俺は人族とは違うと思います。近い存在だと思いますが」
そう、こっちの世界の住人ではないことだ、恐らく人族は人間に近い存在だと思うがアルフィミリアに来てからまだ見掛けていない。
「それは起きた時に言っていた、ニンゲンという事かの?」
「そうですね、それ以外にも説明しないといけないですが、ムルトリスさん達が来てからのほうが……」
「ムルトリス様達がいらっしゃいましたが」
噂をすればなんとやら、グッドタイミングである。
「うむ、連れてきてくれ」
畏まりましたとハイネ達を案内した女性がムルトリス達を連れてくる。
「遅くなって申し訳ありません。報告と甲冑の引き渡しに少し時間が掛かってしまいました」
「里の事で迷惑をかけてしまいすまんな、先に食事を初めてしまったが食べてくれ」
そう言われてシエルの横の奥の席にムルトリス、ハイネの隣にウルモスが座る、ジーナの隣に座っているハイネを見たラッセルがプルプルと震えている。
「おい、なんでてめえが可愛いジーナの隣に座ってんだ?」
「ふぁっ?え、俺のこと?」
「てめえ以外に誰がいるんだよ」
「いや、俺がここに座ったらジーナが横に座っただけで」
「んなっ?ジ、ジジジジーナが、じ、自分から座っただとぉう?」
あんぐりと口を開けてジーナを見るラッセル。
そんな姿の兄に、果物を食べながらこくりと頷くジーナ。
「あ、あああ……ジーナが俺以外の男の隣に……しかもよりによって得体の知れない人族の……」
ガクンと膝から崩れ落ちるラッセル、可哀想な親バカ、もとい、兄バカなのだが。端から見るとかなり気持ち悪い。
「いやうん、席替わろうか、俺はどこでもいいし」
「当たり前だジーナの隣は俺の席と決まって……」
「ハイネはここの席でいい、兄さんは別の席に座って」
「そ、そんな……兄ちゃんは、ジーナの事を心配してだな……」
「あーハイハイ、いいから席に着いて」
ズルズルとシエルに引き摺られてシェルティミィの隣に座らされる。
それを見てムルトリスが頭を下げる。
「申し訳ありませんでした長老、ハイネ君」
「いやいや、賑やかなのは良いことじゃて」
先程までのやり取りを楽しそうに見ていた長老は気にしていない様子だった。
「俺は何というか、ラッセルが可哀想で」
「いいの、兄さんは放っておけば」
「うわぁぁぁぁ、ジィィィナァァァァ!」
マジで大丈夫なのかこのラッセルは、と白けた目をしていたハイネだったが、ムルトリスが失礼しますと食べ出して、各自も食事の続きを楽しむ。
ある程度落ち着いた所で、長老とムルトリスが話し出す。
「シエルから報告はあったと思うのですが、やはり例の不審人物の可能性が高いと思います」
「そうじゃな、シエルとジーナから聞いておる。転移魔法を使用したと考えると……」
「魔族で間違いないかと」
心苦しそうに顔を伏せるムルトリスとウルモス。
「ああいや責めるつもりはない、お主達の事は信頼しておる。それに魔族と決まった訳では無かろう」
「そうですね、有り難うございます」
「さて、この話しはここまでにしよう、まだ情報が足りないからの」
それでは、とハイネに視線が集まる。
「話を聞く前に改めてきちんと自己紹介しましょう。僕の名前は知っての通りですが、クラン【平和の探求者】の部隊長を勤めています。依頼でこちらに来ていますが本来の所属はガルトニーク王国になります」
「シェルティミィよ、私はもう大丈夫でしょう」
ムルトリスとシエルは簡単な内容だった、短い時間だがハイネの印象として、ムルトリスは冷静で状況判断が良く、周りへの配慮が上手い。シエルは気配りが出来て、視野が広く、何でも話せそうなお姉さんといった感じだった。
続いてウルモス、ジーナが自己紹介してくる。
「ミノタウロスのウルモスだ、武器は斧を扱う、魔法は苦手だ。よろしくな」
ウルモスは話すのが苦手な様でそれだけ言って口を閉じた。
見た目はそのまんまミノタウロスで体も大きく余り話さないので普通なら怖がったりするのだろうが、ハイネからすると、話し方というか雰囲気が柔らかく安心できる、頼りになるおじさんといった印象だった。
「猫の獣人ジーナ、得意な武器はナイフ、ギルドに入ってまだ余り経ってない。歳は12歳」
ジーナは口数が少ないが話すのは嫌いではなさそうで、髪が栗色のショートカット、黒色の猫耳と尻尾が生えている。
身長が低く幼いが、長い睫毛にくりっとした瞳は明るいオレンジ色、小さな口と可愛らしい顔立ちをしている。
何故かハイネに興味を示していて距離が近い、ハイネは世話好きな子なんだなぁ、といった感じで余り気にしてない。
で、最後の一人だが。食事の最中も、ずうっっっとハイネを睨んでいた、悪い奴ではないが問題がある男。
「ジーナの兄!ラッセルだ、ジーナと同じ猫族、得意武器は槍、歳は22で頼れるジーナの兄さん。大切なのはジーナ、好きなのはジーナ、ジーナのためなら毒沼にだって入れる……ジーナの……あぶぅん!」
「いい加減にして……!」
いつの間にか横に移動していたジーナの飛び膝蹴りが、ラッセルの顔面にメキャッと嫌な音を立ててめり込み、背中から倒れるラッセル。
ジーナと同じ栗色の短い髪、茶色の猫耳と尻尾に背はハイネより少し低いが、体つきはガッチリと鍛えられている。普段の顔は笑顔が良く似合ういい男だが、今はめり込んでいてそれも分からない。
ハイネは鼻血を流して倒れている男は大丈夫なのかと心配していたが、他のメンバーは全く気にしていない、日常茶飯事のようだ。
シエルが呆れたように口を開く。
「大体こんな感じよ、超がつくほどの妹好き。仕事は真面目に取り組むけど妹の事になると周りが見えなくなるの。大体ジーナに止められるけどね」
妹の事になると暴走する超シスコンだった。
トコトコと席に戻ったジーナが謝る。
「ごめん、兄さんバカだから」
「みたいだな、じゃあ今度は俺の番かな」
そう言って、ピクリとも動かないシスコンを放ってハイネが説明を始める。
食事が美味しそうに見えない、表現が下手ですいません。しかも結局人物紹介になってる。