表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

神様との対面

「なんぞこれ……?」


 ハイネがたどり着いた先、そこには見知らぬ天井、ではなく真っ白な空間が拡がっていた。


 体には特に異常は無いようで、五体満足のようだ、辺りを見回すと同じような真っ白な空間が拡がっているだけ。


 この空間全体に拡がる浮遊感、前後左右は判断が出来て、下に落ちていたりする訳ではないようだが、前に進もうとしても不様に足をバタバタと動かすだけである。


 その場であぐらを組み、胸の前で腕を組んで首を傾げ考える。 


 学校帰りに、友人達と遊びに行きその帰りに、女子高生二人が不良に絡まれていたので、それを助けて帰路に着いたはずだ、家の前まで帰ったところで、突然変な光が広がり、意識がなくなった。


 いつの間にか目を瞑ったまま、両手を正面に向けて前後に動かしつつ、片足を上げたり下げたりを両足で繰り返す、ランニングマンをしながら、うんうん唸っていた。


 ふと気配を感じ、目を開けるとそこには、きらびやかな金髪のロングヘアー、大きな瞳も綺麗な金色で、艶やかに潤った唇、小さな顔に、日焼けなど一切無い真っ白な肌、染みなどつくこともないような純白のワンピースを身に纏い、まさに天使と思わせる完全完璧なる美少女が、目の前で同じようにランニングマンに勤しんでいる。


「・・・・・・」


 お互い目を逸らさず、ランニングマンを行いながら暫く沈黙していたが、とりあえず現状を把握したいハイネはこの美少女が何か知っているならと、ダンスをやめた。


 少女はそれを確認すると、同じようにダンスをやめて汗はかいていないが、ふぅと額を拭う仕草をして


「あ~楽しかった!」


 と、大変ご満悦な表情だった。

 それを確認したハイネが声を掛けてみる


「えーと……君は誰で、ここがどこかわかるかな?てゆうか日本語わかるの?」


 完璧なる美少女は、少なくとも日本人では無いのはわかる。

 だが、先程の言葉は理解することが出来たのだ。


「ん?ああ、ニホンゴ?は判らないけど貴方の中に直接話しているから、そう言った意味なら判るって言うのかな?」


 んーと、片手を顎に置いて悩んでいる少女。

 気になることを言ったが、先に自己紹介する。


「いや、話が通じるならそれで構わないよ。俺の名前は神代 灰音、ええっと君は?」


「私の名前はアルフィミリア、アルミアでいいよ~、誰かと聞かれると神っていった方が早いかな」


 思わず苦笑いを浮かべるハイネ、それをみたアルミアが頬を膨らませて睨みを効かせる。


「むぅ、素直に信じられないのは仕方ないとして、痛い子は戴けないわよ」


 目の前に突然現れた少女がいきなり神様だと言い出すので、確かに頭が痛い子だと思ったが、口に出してしまったかなとアルミアを見る。


「口には出していないわ、でも神だからね。さっき言ったように貴方の中に話しているから、その程度なら判るのよ」


 グッと親指を立て、ウィンクをかましている。

 そんな馬鹿みたいなことがあるのかと唖然としていたが、アルミアはそのまま話を続ける。


「ここが何処かと言う内容だけど、貴方がいた世界と、私が創った世界の狭間みたいなものね」


 いわゆる創造神と呼ばれる神様だったのだ、どうしたらいいのか解らない状況に陥った為、謝るハイネ。


「すんませんでしたぁ!」


「そういうの要らないから、解ってくれたら別に構わないし」


 床がないので額を地面につけることが出来ないが、土下座である。

 アルミア自身は特に怒っている訳でもないので、謝らなくていいと言っている。


 さて、ここが何処で、創造神(アルフィミリア)が何者かは解ったが、そうなると気になるのが何故ハイネがここに呼び出されたかである。


「正直呑み込めてないです、その創造神様が、俺にどういった用があってここに呼び出されたのか、理解出来ないんですが」


「あら、意外と話が早くて助かるわ、納得出来ないって駄々をこねると思ってたから。それと、話し方は気にしないで、見た目こんなだし、畏まられても困るから」


 ハイネとしてはアルミアが神である証拠をみた訳ではないので、納得仕切れていない部分があるが、家の前からこんな場所に移動して、頭の中に直接話し掛けている時点で只者ではないことが理解できた。


 仮に本物の神様だったとしても本人が気にするなと言っているのでお言葉に甘えさせてもらう。


「じゃあ……納得はしてないが、こんな場所にわさわざ連れて来て嘘なんかついてもしょうがないだろ、それにさっきの話からすると、俺はそっち(・・・)の世界に行くことになるんだろ、そこで何をすればいいんだ?ーーん、何を驚いてる」


 アルミアは余りにも砕けた口調と、現状を把握しているハイネに対して何と言ったらいいのかと困惑していた。


「ああ……いや、そうなんだけど、思っていたより話が早くて……でもまあ、変に気を遣われるよりいいか、気を取り直して本題に入るわね」




 アルミアの話では異世界の名前はアルフィミリアと呼ばれていて、創造神の名前がそのまま使われている。


 世界には魔力マナと呼ばれる物が存在し、全ての生命の源になっている。魔力マナを使うことによって魔法が使えたり、新たに物を造り出す事が出来る。


 その中で、人族ヒュマリス獣人アニマス精霊人エルフ妖精フェリス魔族マギリス天人ルピア、が生活していた。


 世界アルフィミリアが出来た当初は、皆が手を取り合って仲良く生活していたが、価値観の違いによって、別々に暮らすようになった。

 当然、別々に暮らすとなると土地の問題や食料の問題が出てくる。まあ、簡単に言うと戦争が始まったのだ。


 そういった負のエネルギーが魔力マナに悪影響を及ぼす事によって黒魔力リマナとなる。それの濃度が濃い場所で、魔物ウルグが産まれてしまった。これはアルミアも想定していなかった事で、魔物達は他の種族を襲う事によって黒魔力を増やし、その数を増やしていった。




 腕を組んで大人しく話を聞いていたハイネだが、気になることがあった。


「だったら黒魔力が溜まらないように創り替えればいいんじゃないのか」


「そうなんだけどね、私が出来るのは新しく創ることで、存在している何かを改変とかは出来ないのよ、それが出来るなら種族間の争いを無くせばいいんだし」


 あくまで創るから創造神であって、何かを変化させたり壊したりすることは出来ない。

 納得したようにハイネが首を振っていると、アルミアが頷き話を続ける。


「それでね、黒魔力を無くすことが出来る何かを作ろうと思ったんだけど、魔力も黒魔力も結局は同じ魔力だからそんな物作ってしまうと、世界から魔力その物が無くなっちゃうのよ。魔力が総ての生命力で在るからそうなると……」


「ああ、そういうことか」


 途中でハイネも言いたい事に気付いた。

 生態系を狂わせる黒魔力を消そうとすると、生き物に必要な魔力がなくなる、下手すると世界が消滅ということにも繋がる。


「うん、魔物自体は死んだら体内の黒魔力が魔力に戻る、それがまた生命に力を与えるから、そこまでは良かったのよ」


 アルミアが溜め息を吐いて肩を落とす。


「最初は魔物が暴れまわった事によって、他の種族が戦争どころじゃなくなり、種族の間で協力してどんどん減らしていってたんだけど……」


「時が経つに連れて魔物も学習して、狩られる数が減った」


 生き物である魔物も、自分達が生き残るために環境に適応していったのだ。


「本当に察しが良いわね。魔物の中にも知性を持った子達がいて、知性がある子の中で魔族として生きることにして、お互いの生活を脅かさないと誓ったの、そうじゃない子達は魔物として今まで通り黒魔力を増やそうとしていたの」


 魔族として生活しだした魔物達は人と同じように暮らして、寿命を迎える。

 魔物は他の種族を襲ったりするが倒される事によって魔力に変換される。


「何も問題無いじゃないか」


「魔物の暴れる数が減り、時が経って行くと当時の事を知らない子が増えて、結果としてまた争いが起こるのよ」


 人間も戦争が終わって暫く平和が訪れても、時代の権力者によって土地問題や権力争い、それこそ差別などで余計な争いを繰り返してきた。


「それで問題になったのが、魔力が集まると結晶になることがあるの、洞窟だったり、森の中みたいな特別濃度が濃い場所に集まって形として残るのよ」


 ダイヤモンドみたいな宝石の様に、時間が経っていくと形になって結晶化して、大きなエネルギーの塊になるのだ。


「困ったことに黒魔力も同じことになる、黒魔力が集まると瘴気になって、それが特別濃いところで出来るの、そこから産まれる魔物が特に危険で力も強いんだけど、黒魔力を増やそうと争いの火種を投下したり、虐殺などを行うの」


 黒魔力結晶は特別濃度が濃い負のエネルギーになるので、危険思考を持った悪魔みたいな魔物が産まれてくる。


「個々の能力もさる事ながら、さらに問題なのが自分達で神を創造しようとしてるの」


 負のエネルギーを意図的に同じ箇所に集めて、更に力が強い魔物を産み出そうとしているのだ。


「それって、ドラ○ンクエ○トのハー○ン様みたいなのが破壊神呼び出すみたいなことかよ」


「ええっと、それが誰なのか知らないけど、まあ、大体そんな感じね」


 破壊神など世界にいないので呼び出す訳ではないが、それに近い存在を新たに産み出すことは可能なのだ。


「それを止めて欲しいって事ですか」


 ようやく呼び出された内容を把握して、ハイネが半ば呆れ気味に溜め息を漏らす。


「本来なら私が直接止めに行きたいんだけど、この世界は、神が入ることが出来ないように創っているから手が出せないの」


「なんでまたそんな造りに」


他の神(・・・)に手出しされたくなかったって言えば判るかしら」


 アルミアが造った世界に他の神が関与すると、世界が荒れてしまう、自分が造り出した物に横槍を入れられたくない、それならわかると頷く


「こっちの世界でない別世界からなら送れる、神でない貴方ならね」


「他の神はそういったことはしないのか?」


「私の許可がないと出来ないわね」


 自分の世界が破滅に向かっているが自らが手を出せない為、誰か別の人にお願いするしかなかった、それに選ばれたのがハイネだったのだ。


「お願い!私とこの世界を救って!」


 両手を胸の前で組んで、アルミアが頭を下げている。ハイネとしては神様が頭を下げてまでお願いするとは思ってなく、どう対応していいか解らない。 


「そんな、神様が簡単に頭を下げて良いのかよ」


「私が頭を下げて済むんならいくらでも下げるわ」


 どうしたものかと、ちらっとアルミアの顔に視線を移す。


「駄目、かな……?」


 大きな瞳が潤んでハイネを見上げる、元々厄介事に馴れていることもあるのだが、


「わかったよ、女の子のお願いは断れないからな、それに、そんな面白そうな事を断る理由も無いからな」


 毎日の生活に刺激が足りてなく、異世界での冒険と聞いて楽しくなってきたのだ、そもそも、魔法が存在する世界で冒険を行う事に男の子は一度は憧れるものである。


 アミリアは返事を聞くと、パアァァァァっと眩しい笑顔を放ちながら


「有り難う!やっぱり貴方を選んで良かったわ!」


「なんか選ばれる要素があったのか?」


「戦える力があって、臨機応変に対処ができて、邪な考えがない子ね」


 面と向かって誉められてしまい、照れて頬を掻いているハイネをニコニコしながら見ていたアミリアだったが真面目な顔をして口を開く。


「先に言っておくけど、帰る方法はあるわ。こっちの勝手な都合で連れてきてる以上、帰れませんって訳には行かないからね」


 一応帰る方法は考えてくれていた、世界に入ることが出来ないと言っていたので帰りの心配をしていたハイネだったが少しほっとした。


 異世界を救ったがそのまま生活が出来るかわからない、元の世界には家族も待っている筈なのだ、世界救って、はい終了とはいかない。


「さっき言ってた、魔力結晶だけど、特別な力を持った転移石があるの、その結晶石に手を翳して元の世界をイメージしながら魔力を流すと帰ることが出来るわ」


「あー、魔力を流すとは、どうすれば?」


「魔法の使い方と一緒で……そっか、そっちの世界には魔法が無かったわね。体の中から外に力を出すイメージで……口では説明しにくい、ちょっと手を貸して」


 素直に手を出すと、手を握ったアミリアの全身が淡い光に包まれる、その光がハイネの手から全身に移動して、光が身体の中に吸い込まれるように消えた。


「どうかしら、一応こっちの世界で使える言葉や文字なんかも一緒に流したけど」


「うん、大体わかった、魔法はイメージした物を外に作り出す感じだな」


 そういって、ハイネの手の先から炎の塊が現れて自らの体の周りを移動させて、明後日の方向に飛ばす。


「うん、筋がいいね。イメージ出来る範囲でなら色んな事が出来るわ、注意して欲しいのは魔力の総量も有るから無限に使用は出来ないってこと。使った魔力の量によって、持続時間が違ったり、威力なんかも変わるわ。一応使っていくと総量も増えて行くから要練習ね」


「レベルアップみたいなもんか、最初のうちは出来ることが限られてるってことね、上限もあると思った方がいいよな?」


「そうね、上限は元々の素質によるものが強いから無限ではないわ、使い過ぎると意識が朦朧として体が動かなくなるけれど、魔力を補充する事が出来る食料もあるし、基本的に休めば回復するわ」


 身体に影響がある精神力みたいなもので、実際に魔法を使った後に少し体が重たくなった気がしたのだが、テンションが上がってきたハイネには余り感じられない程度だった。


「呪文とか詠唱とかそういったのは必要ないんだな」


「本来はイメージして使用するけど、今の子達は予めマジックサークルに魔法の効果を簡略化してるの。サークルを経由して魔法が使えるって感じかしら」


「サークルがあった方がイメージしやすいって事か」


 頭の中で考えるより予め準備した物を再現した方が解りやすいということらしい。


「ふむ、じゃあ早速行ってみるか、どうしたらいい」


「えっと、武器とか防具とか色々と反則じみた物も用意出来るけどーー」


「あ~、チートアイテムとかはパス、自分であれこれ考えながらやりたいのに、そんな物あったら面白くないからな」


「お、面白くないって……一応、世界の命運が掛かってるんだけど……まあ、貴方がそれで構わないならいいわ」


 呆れた顔をしながらアミリアが目の前に手を開くと、ハイネ後ろの空間が歪んで白いワームホールみたいな物ができた。


「忠告しておくと、場所によっては捕まる可能性もあるわ。世界に入った後は私も手を出せなくなるから覚悟しておいて」


「いきなり、捕まって処刑とか勘弁だぞ」


「大丈夫、比較的穏やかな地域の近くに飛ばすから」


「ちょっと待て、今飛ばすとか……」


 言い切る前にワームホールに吸い込まれる。

 頑張ってね~と、見た目天使の美少女が屈託のない笑顔で手を振っている


「ちょっ…おま…!っふざけんなよぉぉぉぉ……!」


 ワームホールが閉じて真っ白な空間に残った少女がぽつりと言葉を漏らす。


「この世界を救って」


 文字数は5000文字前後で更新していきたいと思いますがかなりばらつきがあると思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ