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このアイテムは呪われています!  作者: マリー?
7章.学園編
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94.おわり

 

 オブリビー森林に行ってから数日が経った。結局レンとは連絡付かないし、時間もなくて研究所から盗……借りてきた本を見るくらいしか出来無い日が続く。

 今日も学校か、と憂鬱になりながら着替えをしていると、ノックもなしにドアが開いた。

「ナオ、ちょっと付いてきて」

 そんなことをするのはライぐらいしか居ないんだけど、あたしの着替えを何も無かったかのようにスルーされて出かかっていた文句が引っ込んでしまった。あたしそんなに魅力ない!? ショック!

 急いでいたみたいだから、下着を見られた仕返しとばかりにゆっくり着替えているともう一度ドアを開けて「早く」と急かしてきた。……あたしは無言で着替えをして後をついて行った。


「ライ、学校あるんだけど……どこここ?」

「安心して、学校はもう行かなくていいから」

 いくら時間があるといっても忙しい朝だから、ちょっとした内緒話だと思っていたらいきなり転移で荒野のようなとこに出た。っていうか学校行かなくていいってどういうこと?

 ライは?マークを飛ばしているあたしを無視して綺麗な装飾のされた短剣を渡してきた。あたしの頭上にさらに?マークが浮かぶ。

「刺して」

 手を広げながらなんでもなさそうに言うライ。こんどは!?が頭上を支配した。

 ライはそんなあたしを放っておいて話をする。

「オレから一つ言いたいことがあるんだ」

「……急に一人称変わったなあ、設定が安定しない人だ」

「まあ、人格が戻ったからね。瞳が青いでしょ?」

 そう言われて平静を取り戻してきたあたしは、ライの瞳を覗き込む。確かに青くて、不思議と見ていると落ち着く。

「実は、神見習いの実験をしたのはオレなんだ。だから、オレを殺してほしい」

 だからか、突然の告白にも驚くことは無かった。というか、それより気になることがあった。

「じゃあ、いままであたしと話してたのはライじゃないの?」

「いや、やや性格が自分の欲望に忠実になるだけでオレはオレだ。けど、ナオに会った当初は嘘かな? 記憶が殆どないし」

「じゃあ、実験の――」

 あたしが次に気になっていたことを聞こうとすると、ライは何かに耐えるように歯を食いしばると急かしてきた。

「それより、時間がない。オレの人格がしっかりしているうちに早くこの短剣で……!」

「え、い、嫌だ。どこにも行かないでって言ったよね?」

「ナオの試験だから、オレは協力する……いや、こんな恩売ったような言い方じゃなくて……敵対したくないんだ、ナオと。……オレの手の文字が変わったんだ」

 なんで、というのが顔に出てたのか、ライは言いながら手を見せてきた。

 shinsekaiwo kowasumono

 ……新世界を壊すもの?

「きっと、この世界の神であるナオとは敵対することになる、けどそれだけは嫌なんだ」

「あ、あたしは神になりたいと思わない! 皆が――」

「ナオ、神なのは事実だから自分の役目を果たせ」

 あたしが敵対について否定しようとすると、ライはきつく、次いで自分の夢を託すように優しく言った。

「次にオレがこの世界に生まれた時は、今よりいい世界になっていることを祈るよ」

 ライは導くようにあたしの手に短剣を握らせてゆっくり切っ先を自分の喉に近づける。

 あたしはいつもみたいな素早さで避けることを祈って、でも叶わないと知りながらされるがままになっていた。

 手に柔らかいものに触れた感覚が伝わる、一瞬躊躇すると、ライがあたしの手をしっかり握った。大丈夫だと言われている気がした途端、手がライの方に引き寄せられた。ライを刺したのだと理解するのに時間が掛かったが、手に付いた生暖かいべたっとした液体――血の所偽かお陰か、動転することなく現実だと自覚させられた。

 それもライが空気に溶けるように粉々になり始めると消えていく。そして最後には服だけが残った。

 あたしは服を手に取る。悲しく思うものの、不思議と涙は出なかった。


 ***

 あの後、何故か近くにいたレンにタイムリミットのことについて「ライから聞いてないの」と驚かれ、ライは実はあたし達が居なくなったからどうにかしようとレンと協力して代行をしていた、とか色んな話を聞いた。

 そして、いつかの会議の部屋にレンの転移を使って行くと、会議のときのメンバーが勢揃いしてた。

「ふむ……どうやら神に完全になる前に終えたようだな。では、肉体と記憶を消すぞ」

 お爺さんに白い髭を撫でながら言われ、あたしが記憶を消す必要はない、と抗議すると、

「記憶があれば、情に流される」

 と返された。否定できないけど否定しないと消されるとしどろもどろになっていると。

「まあ、ええじゃないか。身体と記憶がありゃあ(あれば)下に調査にいける(だろう)? 何より、成長の証じゃ。消すのはもったいないからのう」

 やりたいことをと言ってくれたおじいちゃんがフォローしてくれた。他の二人はまだ、だが、とか、もし、と言っていた。あたしが「それなら基準を設けるのは?」と言っても、しかし、と言う。……こうなったら。

「基準の効果を見をもって知ればいい! 雪様! よろしくお願いします」

 と言って作ろうとしている基準(法律)でがっちがちの世界(日本)に飛ばしてもらう。レンじゃなく雪様なのはただ単に力の問題で。

 果たして、雪様はあたしの考えてることはお見通しとばかりに、やれやれと肩をすくめると元老の三人を飛ばしてくれた。いや、別に味方ポジションのおじいちゃんは飛ばさなくてよかったんだけど……。


 ***

 その後。

 戻ってきたお爺さん達に怒られた。こっちでは数分だったけど、向こうだと数か月位経っていたらしい。怒られたというか、一日目の苦労話が大半で、あたしも他の人にお爺さんの話そのままを伝えられるほど繰り返し聞かされた。

 で、結局基準に賛成してくれた。けど、これから数カ月か数年は仕事漬けで主サマやロイさん、地球の頃の学校の皆やヘルベル学園の皆には会えそうにない。……早く終わらせよう。

 おじいちゃんによると、レンには謀った罰として仕事を沢山任せるらしい。打ち首とかじゃなくてよかった、と言うと「そんなことはせんわい」と苦笑いされた。


 それから少し経ったある日。三日連続徹夜をした次の日。

 気配を感じてふと横を見ると、

「わ&@#%*+!!??」

 な、な、な……!

「どうかしたのかい?」

「なんで、……ら、ライが居るの!? 化けた!」

「あ、ライくんやっと来たんだ」

「お陰様で? っていうかナオ、化けたって酷くない?」

 ライが何か言ってるのをスルーしてレンに詰め寄る。するとレンはにこやかに言った。

「実はタイムリミットは君がライくんと話しているときでね、それを過ぎたら神になるのさ。おじちゃんが認めてないから仮だけれど。一応、神なわけだし下層生物(ヒト)一人の輪廻とか変えられるんだよね。まあ、あの剣にも色々あるんだけど……」

 レンはざっと説明すると、分かった? 理解できた? と言いたげな目であたしの顔色を窺っていた。

 今度はライに「全部知ってたの?」と詰め寄ると、ライは目を逸らしそっぽを向いた。口元がにやついているということは知っていて言ってくれなかったっていうことかな……。

 あたしはライに飛びかかった。そして抱きつく。

 口元の緩みを隠すため、ライの存在を確かめるため。そして、

「あ、でも無事だったんなら仕事手伝ってね」

 ライを捕まえて一緒に仕事(強制労働)させるために。


読んでくださりありがとうございます。

ようやく完結しました! やったね!

次に登場人物達のお祝いパーティの様子を書いています。

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