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このアイテムは呪われています!  作者: マリー?
7章.学園編
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93.オブリビー森林とおじいちゃん

 

「それがナオのやりたいこと?」

「う、うん……」

 オブリビー森林に行きたいのは事実だから戸惑いながらも答えると、ライは苦しげな表情の後何かを決意したような顔になった。その顔を見て、何で急にそんなことを聞いてきたのか、今朝からの態度は何だったのか、何を決意したのかといった今日一日の疑問を投げかけることが出来なかった。

「行くよ」

 いつの間にか手を握っていたライの言葉が聞こえると同時に光に包まれた。


 ***

 目を開けると視界いっぱいの緑が飛び込んできた。森林というよりも草原という言葉の方がしっくりきそうなほど木が少なく、その幹には苔が生えているのか緑に見える。地面に咲いている花は無く、ただただ(くるぶし)丈の草が生えているのみだった。あたしはさっきまでの疑問も忘れ、その光景に見入ってしまった。すっごい綺麗。

 どれくらいぼーっとしてたのか、視界の端で何かが動いたと我に返るとそれはライだった。どうやらここ最近恒例となってる昔話をしようと座る場所を探していたらしい。それより調査したいんだけど。

「……やっぱりナオは忘れないのか」

「ん?」

 ライに連れられて歩いてると何かを呟くのが聞こえた。特に何も返す気が無いのかどんどん先に進んでいく。すると一際開けたとこに出た。そこは誰かが木を切り倒したようで、朽ちかけの木が隅の方にまとめて置かれていた。

 ライはその木の方へ行くと手前の木の幹の皮を剥いだ。すると何かの幼虫みたいなものがびっしりとくっついていた。緑が蠢いてる……。その幼虫みたいなものは急速に動きを鈍らせると、羽化した。いや、さなぎはどこ行ったの? っていうか蝶かと思ったら羽は葉っぱだし、なんか丸い……何これ。

「これは精霊だよ」

「精霊?」

 空中をフワフワと浮遊する精霊っていうものを見ながらライの説明を聞く。

「精霊っていうのは世界を形作っているといわれているものだよ。大抵は見えないけど、こういう所では人によっては見えるんだ。水、大気、大地の精霊がいて、ここは大地の精霊が居る所なんだけど……」

 ライにつられて周りを見回すとさっきライが剥がしたとこから出た数十匹以外は見えなかった。

「少ないね」

「もとは何百、何千といたらしいんだけど、急に減っていたらしいよ」

「なんで?」

(ナオ達)が消えたから」

 ライの即答された言葉にびくりとなる。あたしにその記憶はなくても、なぜか悪いことをしてしまったという感じがする。叱られた子供のようになったあたしを見て、ライは「詳しいことはレンに聞いて」と言うと昔話を始めた。


 ***

「――それでよく風神の御使いである風鈴様に連れていかせるって言われてたんだ……っとそろそろ調査しようか」

 昔はライはやんちゃをしていたらしい。

 それはそうとやっと本来の目的の調査に取り掛かれた。似たような話ばっかりで、最後の方は聞き流してて退屈だったから数字をひたすら数えてた。16543……16544、16545、16546じゃなくて調査、調査。

 確か地図によると、ってここどこ?

「ライ、ここどこか分か……って、居ない」

 ここに転移出来たってことから一回は来たことがあるだろうライに聞こうとして、ライのいた場所を見たけど忽然と消えてた。あれ、置いてかれた? 先に帰ったとか? あたし帰る手段ないんだけど……。

 手分けして探してくれてるんだという考えに辿り着くと、取り敢えず右を真っ直ぐ行くことにした。

 静かだなと思いながら薬草や変な実のなる木を探して真っ直ぐ進んでいくと、木が倒れているとこに出た。どことなくL字カーブな気がしなくはないけど木の幹を跨いで真っ直ぐ進む。すると今度は草が不自然に伸びきってるとこに出た。それでもあたしは頭より高い草を掻き分けて真っ直ぐ進む。次は丸太が積み重なってた。意地になって真っ直ぐ進もうと登る。けど、途中で滑って尻もちをついた。

 立とうとしていると、目の前をさっき見た精霊が通って行った。進んだ先に何かありそうな予感がして精霊に付いて行った。

 しばらく道っぽい所を進むと赤い実がなる柊みたいな木が数本あった。本によるとオオクスクっていう名前らしい。ついでに今居るとこも分かった。さっきの開けたとこはベースキャンプとして使ってたとこらしい。

 いくつか取ろうとすると、誰かに手を叩かれた。驚いて叩いた犯人を見ると、ライが居た。

「あ、ライだ。見て、オオクスクっていうのがあった」

「毒があるかもしれない物に素手で触らない」

 子供に言い聞かせるように言うライに「あ、はい」と返す。

 それにしてもこの実はどんな効果があるんだろ。……食べてみようかな? 毒ないよね?

「食べるとかは絶対にしない」

 心を読んだ一言にまたしても「あ、はい」と返してしまった。

 ライはあたしをフォローするように、

「レンなら知ってるんじゃない? ここの事も知ってたようだし」

 と言うとそろそろ帰ろう、とさっき居たベースキャンプのとこに向かう。

 屋台で食べた朝食兼昼食も何時間も前だったようにお腹が空いてたから、ライの案に賛成して後を追った。


 ***

 ライの魔法で研究所に戻ると城に向かって歩いた。森に居た時は気にならなかったけど、今になって物凄く疲れが押し寄せてきた。

 来る時と同じように、研究所を隠すようにひっそりとした森を抜ける。するとオレンジに染まっていると思ってた町並みは、予想に反して真昼間のようだった。

「オブリビー森林は時間の流れが早いからね」

「本当に流れが違ってたの!?」

 オブリビー森林だと時間を忘れたけど、それはのどかなとこが時間の流れがゆっくりに感じるからだと思ってたのに違った。

 そこからあたしは疲労から無言で歩き続けた。ベッドを目指して。


 ライと分かれて自分の部屋に進んでいると、会議の時のおじいちゃんが隠れるように細い通路のとこに居た。おじいちゃんは柔和な顔に笑顔を浮かべると、こっちこっちと手招きした。

「飴ちゃんやるから、わしの話に付き合ってくだされ」

 あたしは飴を貰うと、レンの事も聞こうとおじいちゃんの話を聞いた。

「そうじゃな、まずは……今出されとる試練の事からじゃな。あれは、まあ、レン様が解薬しょおるからそのうち解決するじゃろ、というのがわしらの見解じゃ。別に実行者を見つけぇゆうことじゃのうて、解決すりゃあええんじゃ。次は……なんでそんな人が出たかじゃな。話によると主な神が居んなったけぇらしいわ。詳しくは知らんなぁ。レン様は今、山の方に行きんさったんか。それじゃあ聞けれんのう。まあええが。他は……何を言わないけんかったかのう……ああそうじゃ、一番大事なこと忘れとった。神界の皆からじゃ。本音は戻って欲しいが、長い間わしらで廻せたからたまに神界(実家)に戻るくらいでやってくれてもいいよ、とのことじゃ。なんでも他の世界では上はあくせく働いとらんらしくてのう、二、三人で廻しとった時もあるけぇこれからは下が頑張ろうかとゆう話になったんじゃ。要は後は任しんさいということじゃな。それから、目の前に出された物じゃのうて自分がやりたいことを見つけんさい」

 そうのんびり言うと「それじゃあ、帰るけぇ」と言い残し、消えて行った。

 あたしは何でそれを伝えたのかとか、実行犯見つけなくてもいいの!? とか、急に何があったのかとか、やりたいこと? とか色々考えたいことが出来たけど眠気に抗えず、彷徨うようにベッドに着くと一瞬で眠りに落ちた。

読んでくださりありがとうございます。

遅れましたすみません!


文中に出たおじいちゃんの言葉が色々な方言が混ざり分かりにくいので訳します。

「そうだな、まずは……今出されている試練の事からだな。あれは、まあ、レン様が解薬しているからそのうち解決するだろう、というのがわしらの見解だ。別に実行者を見つけろということではなく、解決すればいいんだ。次は………なぜそんな人が出たかだな。話によると主な神が居なくなったかららしい。詳しくは知らないがなあ。レン様は今、山の方に行かれたのだったか。それでは聞けれないなあ。まあいいけれど。他は……何を言わないといけなかったか……ああそうだ、一番大事なことを忘れていた。神界の皆からだ。本音は戻って欲しいが長い間わしらで廻すことが出来たからたまに神界に戻るくらいでやってくれてもいいよ、とのことだ。なんでも他の世界では上はあくせく働いていないらしく、二、三人で廻していた時もあるからこれからは下が頑張ろうという話になったんだ。要は後は任せろということだな。それから、目の前に出された物じゃなく自分がやりたいことを見つけなさい」

でした。一番面倒で時間がかかりました。


そして、次の話で完結になります。お楽しみに。

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