87.呪術と呪いアイテム
「……昇種プロジェクトの実行者探しはまだ終わらぬのか」
「ごめんなさい」
あたしは来てすぐに呼び出され、いつぞやの会議の部屋に来ていた。おじいちゃんに呪いアイテムと昇種プロジェクトの進捗状況を聞かれてからずっと謝り倒してる。流石に忘れて遊び呆けていましたって言えないし。何か相手偉そうだし。
「ふむ、一刻も早く終わらせるのじゃ」
あたしはおじいちゃんの言葉に真剣に見えそうな顔で頷くと「いまだ手がかりすら見つかっていないのですか」という誰かの嘲りの言葉から逃げるように部屋を出て階段を下りてく。
放課後は遊ばずに図書館とかで調べ物をしよう。
放課後になると早速図書館へ向かう。入口近くに置いてあった機械を操作して探す。タッチパネルに触れて関連する言葉を入力してく。呪いアイテムと魔王の関連にしても、呪いアイテムにしても、世界の核にしてもそれらしいものは見つからない。
一応、出てきた呪われた物に関する本と呪いに関する本を数冊持ってイスと机のある方に行く。勉強してる人が多く、本を見てはノートに書き込んでる。あ、歴史の先生がいる。
一番手前にある六人がけのテーブルに近づいて、端の席に座る。前にいた人がちらりとこっちを見てくる。目があったからニコリと笑うと、ふいっと目を自分の持っている本に向けた。
あたしは呪われた物についての本から読みはじめた。
呪われた物を作るには、魔導具を使う場合と呪術を掛ける物に直接魔方陣を描く場合がある。魔導具を使う場合は、効果は弱いものの呪術を掛けるのに使った魔導具を破壊されない限り発動し続ける。直接魔方陣を描く場合は、効果は強いが魔方陣に一本線を入れられたり消されると効果を失ってしまう。よって、魔導具を使う場合は多様な呪術を入れ、魔方陣を大きくさせいかに効果を出すかが、直接描く場合は魔方陣を小さくし、いかに隠すかが重要になってくる。
……ってことは、この呪いアイテムには魔方陣か魔導具が在るんだよね。あたしは指輪を目の高さに持ち上げて目を凝らす。露出してる部分には何も無かった。あったらとっくの前に見つかってるか。魔導具はどこだろ。この呪いアイテムは世界を飛び越えて散らばったらしいし、魔導具もどこかに散らばったのかも。……どうしろと!? まあ、いいや次。
呪いについての本を手に取る。さっきの本では大部分が魔方陣の組み合わせや魔方陣の縮小に関連する内容だったから飛ばした。勉強、嫌い、次。
呪術は相手を呪うというところから嫌われがちだが、かなり便利な魔法だ。ただ相手を動けなくさせたり力を弱めたりする定番から、外見を変えたり精神に作用させて惚れ薬の代用にしたり、怪我や病気を治す手助けをしたりする応用まである。呪術には呪うという字が使われているが、呪うだけでは決してない。これらの効果は魔方陣や呪術を使う人はもちろん、魔導具や呪術を掛ける物、呪術に使う媒体によっても変わる。魔方陣に比べると微々たる差だが、組み合わせ次第で相乗効果を生むこともある。代表的な例は、相手を動けなくさせる場合は媒体に電気草を使う、というものだ。呪術を習ったことがある者ならよくある組み合わせだろうが、これが一番効果的な組み合わせだ。あるのと無いのでは動けなくさせることができる部分や時間に大きな違いがある。
……目次から解呪方法のページへ飛ばす。さっきからスルーしてたけど、この作者は文中で何度も呪術はいいものだ! と熱弁してる。呪術愛が凄いけど、語るなら同志達と語って欲しい。
そんな便利な呪術魔法だが、解呪する方法は沢山ある。一番簡単なものは呪術の掛けられた物を身から離すことだ。近くの草むらやゴミ箱でもいいが、他の人が持ってしまわないように海や火山、地面に埋めるのもありだ。ただ、ここで注意して欲しいのは、その呪術が物を使っているということと、その呪術に持ち主に戻る効果が無いことが前提になることだ。次に簡単でほとんどの呪術を解呪できるのは、魔方陣又は魔導具を破壊する事だ。術者を殺害しても、呪術を使えないようにしてもいい。だが、術者は総じて強い。少なくとも私の会った者達は強かった。少しずつ身体が動かなくなっていき、感覚も消え、術者にいいようになぶられるのは恐怖以外の何物でもない。加えて言うと術者は総じて性格が悪いのだ。相手取るのはおすすめしない。その代わり魔方陣や魔導具は見つけにくいが、確実に解呪できる。中には破壊する事で新たな呪術を掛ける高度な技が掛けられていたり、魔方陣に新たに線を引いたり消したりすることで別の効果が発動する、ということもある。魔方陣をよく見ることが重要になる。最後にどの呪術も解呪できる方法についてだ。この方法は解呪の魔法が使える者が居ないと出来ない。簡単な呪術ならその者達の誰でもできるが高度なものになってくると、その解呪魔法の使える者の中でも更に強力な魔法を扱える者、呪術に精通している者が必要となる。そのような者はほとんど居らず探すところから、また運良く見つけても解呪が難しく失敗のリスクが高ければそれ自体を請け負わなかったり、解呪の御礼が高額になったりして解呪するのは至難の業になる。
……えっと、これは外れないから捨てるのはできない、魔方陣や魔導具は探してないし見つかってないからできない。術者も分からないし怖いから無理。残るは解呪か……。
あれ、そういえばこの指輪とかってあたしが魔王を核にして世界が上手く回るようにしようとしたけど失敗して、暴走して魔王の能力が飛び散ったんだよね。もしかして術者はあたし!? いやそもそもこれ呪術なの?
うーん、確かこれってあたしが失敗してあたしと魔王の力が中途半端に混ざったんだよね。で、魔王の力のみ出てきて大変なことになってる。二人とも生きてるからこうなってるってことは、どっちかが死ねば解決? あ、いや、魔王の力を消すってことは魔王を殺せばいいのかな。あたし死にたくないし。確か、レンは魔王の目星は付いてるって言ってた。魔王といえばライだけど……。レンに聞いてみよう。
レンー、どこに居るのー?
読んでくださりありがとうございます。
核心に迫ってきました。呪いアイテムはそろそろ解決




