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このアイテムは呪われています!  作者: マリー?
7章.学園編
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83.夢にしては詳しくない?

 パーティから帰ってくると速攻で寝た。疲れた。そしてなぜか昨日に引き続き今日も懐かしい夢を見た。


 あたしは皆からの「お願い」が書かれた紙を見ながらため息を吐く。この「お願い」には主にこの世界に住む人や動物、植物、魔人に魔物といった生きてる者達から届く。内容は様々で『気になるあの娘に告白したい』とかいう「知らんがな!」と突き返したくなる物から、『病気の母を助けてください』とかの急ぎの物まである。最近多いのが『平和な世の中になってほしい』とか『魔王を殺せ』とか。解決法が、『決して直接手を出さず、本人達や周りが気付かない程度の助けをする』っていう面倒なルールもある。例えば最初の例なら『本人をやる気にさせるために今日は出来そうだと印象付けする』とか、次の例だと『病気の研究をしてる人とすれ違わさせる』とか。最後の二つはレンに丸投……任せたからいいとしても、お願いの量が多い。はっきり願った物から無意識で考えた物まで「お願い」にされる上に、最近イーラバードラに住む者達が神頼みばっかりするから、記憶にある日々を思い返してみてもずっと仕事しかしてない。他の人にも仕事を回してるけど一向に減らないってどういうこと? まあ、自分で何とかしようと動けば殺されるなら、神に縋るしかないのかな。

 あーあー、早く来ないかな、彼。遊びたい仕事したくない。

 パパッと読めたか読めてないか分からない速さで次々とお願いを捌いていくと、ある一枚に目が留まった。『新作魔法の使用許可を。魔法の内容:対象を魔導書や杖などの媒体と同一化させ、対象の使える魔法を魔力をほぼ使用せずに使う魔法』

 ん? 新作魔法の使用許可? これあたしじゃなくてホユキ担当じゃん。なんでこっちに混ざってんの。

 あたしは立ち上がって彼の為に造られたどこかの草原風のこの部屋を移動する。もともとこの部屋も、あたしとホユキの姿も彼の為に造った。あたしとホユキは“在る”だけで姿とかは持ってなかった。だから、()人間で姿を持ってたレンを参考……というか姿を借りて彼に接した。最近は性格とかがはっきりしてきたから姿にも変化があった。あたしはまだ途中だから変化は小さいけどホユキは変化が大きい。というか、もう完成形な気がする。感情が現れるのが早かったから頷けるけど、なんか、納得いかない。

 あたしは、生きていた頃の感覚が懐かしいのかこの部屋で仕事するようになった他の神達の間を縫って通り、仕事を終えて彼を待ってるホユキの許へ向かう。魔法とか構造担当は楽そうでいいな。

「ホユキ、魔法の使用許可ほしいってさ」

 そういって紙を渡すと、ざっと見た後に悩み始めた。いつもはすぐにOK出してたのに珍しいと思いながら見てると、ホユキは紙をあたしに見せながら聞いてきた。

「この願いを出したのが魔王の兄らしいけれど、許可する?」

「あたしに聞かれても……でも魔王の兄が、かあ」

 確か魔王の兄は穏やかな人で、魔族の長の一族なのに闇魔法がつかえない事を嘆いていたっけ。ああでも、見張りしてる人によると最近頭のネジが飛んじゃったみたいな言動があったんだ。まあ、意見が頭ごなしに否定されたり明らかに殺そうとしてる罠が張ってあったりが毎日だと、おかしくもなるのか……放置でいいや。

 あたしはホユキに「任せるよ」と伝えると、疲れた様子の彼を出迎えた。


 ***

「ねー、次は何して遊ぶ?」

 この部屋に居た人達も参加して鬼ごっこをやった。やっぱり仕事漬けは嫌らしく喜んで参加してくれた。あたしはもっとこの人の体というものを使いたくて仕方ないから、他にも遊ぼうと提案する。そこに存在し、淡々と仕事するよりも手を、足を、身体を動かしている方が楽しい。指一つまで意識を向けて動かすのも、今までに無かったからこそ新鮮でついつい使いたいと思ってしまう。もとの“在る”状態に戻らずこの部屋で仕事するようになって、レンには「いつ仕事が終わるのか分からなくなった」って言われたけど当分の間はこのままだと思う。あと仕事が終わらないのはあたしだけの所為じゃないから。

「缶蹴りはどうだい? 地球って所にある遊びらしいよ」

 レンがそう提案した。他の世界の人達とも交流があるからか、いつも面白そうな遊びを教えてくれる。

「じゃ、それしよう!」

 あたし達はレンから缶蹴りというものを教えてもらい、物質担当のあたしが缶を創り出す。桃缶というものを再現してみた。

 そして缶を蹴っては逃げ蹴っては逃げしてるうちに空が赤みを帯びる。もう終わりかー。

「あ、そろそろ時間だ」

「えー、もう帰るのー?」

 彼の言葉につい本心を言ってしまう。けれど彼は不満そうなあたしを見ると言った。

「帰らないといけないからな……また遊ぼう」

「約束?」

「勿論。約束」

 きっとまた遊べる。そう思い込んで彼を見送る。もっと一緒に遊びたくても止めてはいけない。だって彼とは住む世界が違うから。寂しくてもいつも通りじゃないといけない。彼に余計な感情を向けてはいけない。彼は今、不安定だから。せっかく作り上げた下地を壊されては堪らないから。……そろそろ、あれ(・・)を見せてもいいかもしれない……魔王さま、あたし達に利用されて。(魔王)と遊ぶのは楽しかったけど、彼に十分なくらい効果は出たから次の工程へ、そして停滞しそうなこの世界(イーラバードラ)を上手く廻るようにする“核”にする。あたしとホユキは単純に魔王を消すのでも良かったんだけどね。

「じゃあね……」

 そして、彼は自分に何が起こるのか、自分が何をしたかなんて何も知らなさそうな顔で帰って行った。


 ***

「遊びたいー!」

「駄目だよ、創造神としての仕事があるだろう?」

「こんなことなら創造神なんて辞めてやる!」

「ボク達を神にしたのは君だよ? このイーラバードラの為に」

「そうだけどー……」

「それなら最後まで頑張りなよ創造神様?」

 あれから仕事をすることばかりで遊べず、他の皆が遊ぶ様子を見ては混ざる為に近づこうとして監視役のレンに見つかって仕事場所に連れて行かれる。最近は『魔王を何とかしろ』とかのお願いは減ったけどまだ多いし、戦争の時の影響で破壊された自然を変に思われない程度に修復していったり、世界が停滞しないようになんとか廻したり、大量の“お願い”を『やる』『やらない』『魔王』で分けて、やるやつをそれぞれの得意分野の人に振り分けたり、他から出来ないと渡されたものをあたしが解決したり。面倒くさい。せめてあたしの分のお願いの仕分けをして欲しい。誰でもいいから、猫でもいいから助けて!

「……普通の人として生まれてたら、もっと気楽に過ごせたのかな?」

 今の世の中じゃ無理か。魔王の独裁政治続いてるし。……レン、思っただけ、思っただけだから睨まないで。


 あれ? レン?

 あたしが目を開けると、いつぞやの部屋に飾ってあった女の人の絵画と目が合った。

 慌てて目を逸らし起き上がる。……夢にしては何か詳しくなかった? 現実みたいだったっていうか……。景色とかあたしの考えてた内容とか。まあいいや、ライにもう一回昨日の朝の事を聞いてみよう。なんか、引っかかるんだよね。……嫌な予感までするし。あの苦しそうな、縋るような感じ……とキス。

 あたしは顔を冷やすように何回も洗って、急いで準備をするとライを探してうろうろしに部屋を出た。


「ライ!」

「あれ、ナオどうかした?」

 あたしがライを発見したのは、ライの部屋の近くだった。ライを呼びとめて急いで行くと、真剣な眼差しでライを見ながら聞く。

「ライ、昨日の事なんだけど、本っ当に何でもなかったの?」

「昨日? あ、おはようのキスが欲し――」

「誤魔化さないで」

 あたしがライに被せるように言うと、ライは瞠目してから無表情になり、次いで苦笑いを浮かべて言った。

「ホントに何でもないよ」

「……そっか。分かった。ライ、朝ごはん一緒に食べよう!」

 あたしが、ライがそう言うなら何でもないんだと思い込むと、まだモヤモヤとした感じは残るけどさっきまでの嫌な予感や焦りは無くなった。明るく言って、場の暗い空気をどっかにやるとライの手を掴んで食堂まで走りだした。

読んでくださりありがとうございます。

色々カミングアウトその2。

ライ君に聞くことですっきりした主人公。前回の現実逃避の原因の一部が解決?しました。

次回はクラスのみんなと授業を受けます。

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