70.夢の中まで登場するの!?
「ねー、次は何して遊ぶ?」
あたしは持っていたサッカーボールを大きな木の下に置きながら、皆に聞いた。
「缶蹴りはどうだい? 地球って所にある遊びらしいよ」
「じゃ、それしよう!」
深い青の髪を短く切った少女が提案すると、白髪の少年が「勝負だ」と言うように声を張り上げて賛成する。
オレンジの空、青々とした葉を生やした枝を四方八方に伸ばした大きな大きな木の下で、缶を蹴っては逃げる。その繰り返し。何十回も何百回も。だけど、なぜだか一向に飽きが来ない。
「あ、そろそろ時間だ」
白髪の少年が思い出したように言った。
「えー、もう帰るのー?」
「帰らないといけないからな……また遊ぼう」
あたしのもっと遊びたいという気持ちを察した白髪の男の子は「仕方ないな」と困った表情を浮かべるとまた遊ぶと言ってくれる。
「約束?」
「勿論。約束」
指切りをすると白髪の少年は手を振りながらどこかに走って行った。あたしはぽつりと走って行った方に向かって呟く。
「じゃあね……」
***
「なんでこうなったんだろうね。――、――、――。こんなことしたかったわけじゃないのに……ごめん」
あたしはなぜか血まみれになった手を見る。自分で言ってるはずなのに、一部聞こえなかった。
「ねえ、魔王……約束は、ちゃんと守ってよ」
核になるなんて言わないでよ……そしたら、もっと……。
……ん? 核? どっかで聞いたような……。
思い出そうとしたところで、ぼうっと眺めていた掌にいつもこっちをガン見してくる女の人の絵が浮かび上がってきた。至近距離で目が合う。
ニタリ、と不気味に笑う。
「ぎゃああああああああああああ! ……痛っ」
慌てて飛び退ると少しの落下時特有の浮遊感の後、背中をぶつけた。目を開けると天井が見え、ベッドから落ちたって分かった。
のそりと起き上がり、暗い中手探りでカーテンを開ける。薄らと東の方が白み始めていて、さっきの夢のこともあり二度寝するのは止めた。……いよいよ学校が始まるのに、嫌な夢を見たなぁ。
まあ、二度寝してまたあの絵を見たくないっていうのもあるけど、さっきの既視感のある夢で気になることがあったから。
――核
確か、レンから呪いアイテムと魔王の関係について聞いた時に出てきた言葉。
……まあ、夢だし……偶然思い出しただけかもしれないよね。夢だし。
視線を感じてドアの方を見る。そこには最近いつも視線を感じるようになったこっちをガン見してくる女の人の絵画があった。一瞬目が合う。うん、相変わらず怖い。
あたしは、直ぐに目を逸らす。
前にライにこの絵画について聞いた時、ライが魔王になる前からあって詳しくは分からないって言われた。けど、長時間目を合わせたら駄目だと言われた。一度取り外そうとしたものの、その取り外そうとした人がなんでか何かに怯えたように走り回ってから、憑かれたように暴れまくったらしい。そして数日後絵画の近くで死んでしまったらしい。……ライ、なんであたしそんな危険な部屋に寝泊まりしてるの? なんでそんな曰く付きの物がある部屋に居るの?
……泊めてもらってる身としては言いづらいんだけど、部屋変えてほしい。あたしの切実な願い、誰か聞いて!
願いは聞き届けられる筈も無く、あたしは顔を洗うため洗面所に向かった。
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