68.説明
「まずは学園についての説明をするから、渡した資料を見て」
あの後晩御飯を食べてから、学園についての説明とテストについて教えると言ってきたライの部屋に入った。そしてふかふかのソファに向かい合わせに座った後に渡された資料に目を落とす。
あたしが資料を見たのと同時にライが話し出す。
「今回のは編入って形になってて、レンと僕の推薦ってことで入学試験とかは無しになっているんだ」
試験無かったんだ……推薦でも要ると思うんだけど。……ん? レンとライの推薦でってことは、
「レンとライって、もしかして結構偉い人?」
「僕は八始祖の一人で、立場的には総長みたいなとこかな」
「総長!? ……って何?」
始祖って吸血鬼かなんか? ……え、もしかして吸血鬼の学校?
「総長っていうのは校長の上の人のこと。だけど、仕事は校長のと同じ様なものだから、皆には校長って呼ばれているけどね」
そして「別に吸血鬼だけじゃなくて、魔人族とか、知能を持った魔物とか、獣人族、後稀に人族も入学するよ」と付け加えられた。……ねえ、勇者も数人って何? どういうこと? 誰か居るの? 呟きが聞こえたんだけど? どうせ心の中読んでるよね? 答 え て !
「話が脱線したから戻すけど、学園では『セイレイ』と契約をするんだ」
あ、話逸らした。……まあいいや。
「セイレイって精霊のこと?」
「違うよ。小さくて羽が生えたやつじゃなくて、ライオンとか向日葵とか……色々」
……向日葵? 植物もセイレイなの?
「植物っていうか……僕達始祖から生まれたのだね」
生まれたってことは、ライが生んだ……ライってまさか、女?
「生まれたんだよ、ポンって。……あれ、でも意識して生むから生んだ?」
「やっぱり女だ!」
「男だよ! ほら骨格が!」
そう言って手を握ってくるライ。確かに骨ばった感じはあるけど、ライって、結構線が細くて女っぽいからね。本人は気付いてないかもだけど、女装させたら絶対男って分からないくらい華奢だよね。
「その生温かい視線は何!?」
……心読んでなかったんだ。
「それで、何で契約するの?」
ジトーっとした視線から逃れるように、話を逸らす。
すると、まだ若干ジトーっとしてるけど、質問に答えてくれた。
「絶対って訳じゃないけど、旅とかで支えあえる仲間は必要だし、セイレイと契約した方が筋力とかが上がってより強くなるから、大体の人は契約するよ」
へー。
……ライって一体何者!?
魔王やってるし、始祖でセイレイっていうのを生んでるし。
「神見習いだよ」
「そっか、神見習いか……はい?」
……何言ってるのかしら、この子。
「手で測っても体温計で測っても平熱だし、中二でもないよ」
神はレンが居るからいいとして、見習いって何……っていうか元は人じゃないの? 被験者だけど、人と人の間に生まれたんだよね?
「昇種プロジェクトっていうので見習いになったんだ。始祖は全員そうだよ」
昇種プロジェクト、ってどっかで聞いたような気が……あ、アイ君と会った施設のファイルに書いてあったやつだ。
「僕は憎悪を司ってるんだ。それでアイは悲嘆」
他には激怒とか警戒、恍惚、敬愛とかがあるらしい。すっごい自慢げに言ってる。……どうせなら大罪とかの方がよかったのに。
「大罪系はもう司られていたからね」
若干残念そうに言う。やりたかったんだね。
「それで、校則とかはそこまでキツくなくて皆は自由にしてるから、あまり気にしなくてもいいよ。気になるなら資料を読んでおいて」
……それ総長が言っちゃってもいいの!?
「ただし、魔法とか剣術とかの練習で怪我をしたら直ぐに医務室に行くこと。勉強や魔術とかの実力が全てだから、勉強とかはしっかりすること。あ、クラス分けのテストがあるから準備しておいて。分かった?」
指を一本ずつ立てて言ってくる姿が、地球に居た頃、説教をしてきたお母さんと重なった。
だからこう言った。
「分かった、お母さん」
「お母さんじゃない!!」
……部屋の外に勢いよく放り出さなくてもいいと思う。縦に何回転かした後床に寝そべることになって、たまたま通った侍女みたいな人に変な目で見られたから。恥ずかしい……。
***
一方、ライの部屋。
「あ、投げちゃった。まあいいか。……それより、生徒間のルールについて言ってなかったけど、大丈夫だよね?」
読んでくださりありがとうございます。
すっごい遅れました!すみません!
説明回でした。




