67.別人
お祭りが終わってから学校に行くことをリスト連合国に来たレンから聞いた。
ちなみに学校が始まるのは三日後らしい。結構急だね。
というわけで、学校に必要なものを買うことになった。……別にフクロウとかは買わないよ。制服や着替え、勉強道具が要るらしい。制服ってそんなに早く出来るものかな?
そう思いつつ、仕事のため帰って行ったレンの代わりの、タイラントの案内に従う。……あれ? タイラント呼ばわりしたのに攻撃が来ない……?
不思議に思って隣を見ると、
「デート……やっぱり……いやでも……デートだから……」
なんか悶えてた。いやいやちょっと待って!
「ライ、あたし達付き合ってないよね? これ買いものだよ?」
「確かにそうだね。……じゃあ、好きです付き合ってください!」
ライがこっちを見て若干居ずまいを正して言った。わ―、いつものニコニコした顔がきりっとしててカッコいいね! 多分この誠実そうな顔を見たら誰もが騙されそうな気がする。あたしは顔が熱くなるのを感じた……別の意味で。
「ちょっとこんなところで何してんだい?」
「告白らしいですよ」
「もしかしなくてもダーク様だよな?」
「え? じゃあ、あの女の子って?」
「……確かコスプレバトルに出てなかったか?」
「まさか、まさか……ドゥエキテル」
「「これはめでたい! 魔王様のお世継ぎが出来るよ!!」」
巻き舌風に言った「出来てる」を皮切りに、お祭りムードが形成されていく。……っていうか、写真家も画家も呼ばなくていいし、勝手に話を進めないで!?
何 の プ レ イ な の !?
隣で止めもせずに……むしろ満更でもなさそうなライに若干仕返しをしたいと思った。べ、別に一人だけあたふたしてたのが恥ずかしかったからじゃないんだからねっ。
「嫌だよ! 『じゃあ』って何!? 軽いよ!? ライの好きってそんなに軽いものだったの?」
……言ってからちょっとやり過ぎたと後悔する。
恐る恐るライを見ると、若干俯いていて顔に影が差していた。徒ならぬ雰囲気に思わず一歩後ずさると、不意に顔が上がり視線が合った。と思った瞬間強い力で腕を引かれ、呆然とする人たちを残して服屋に連れて行かれた。
***
「腕通して」
「……いや自分で出来るから」
「……言葉で言うより、行動して欲しかったならそう言ってくれたら良かったのに」
絶対怒ってる! さっきのこと怒ってる!! ライ様がお怒りになられた!
しかも鏡を背にしてるからライの顔が見えないし……さっきから冷たい声が心臓に突き刺さる。
後ろを向こうとしたらライの顔が迫ってきたから向くに向けないし!
どうしよう!?
***
と、そんな拒否しようとしたら速攻で殺されそうな雰囲気のまま着替えとか文房具とか諸々買って、今現在ライの部屋。
ベッドの上でライに後ろから抱き締められています。気分は蛇に巻きつかれた蛙。誰か助けて! 誰でもいいから!
「ぷっ、くくくく……」
あわあわしてると、耳元から笑いを堪える声がした。驚いて振り返ると、
「……凄いプルプル震えてて、くすっ。……あはははは」
「……っ!?」
涙目になりながらも笑うライが居た。さっきまでの冷たい雰囲気はすっかり消え去り、代わりにいたずらが成功したとでも言いたそうなしたり顔があった。
殴りたいと思ったけど、さっきまでのライがまるで別人みたいで怖かったあたしは、戻ってきたライに抱きついた。
ライはちょっと涙目になってたあたしの頭を優しい手つきで撫でていた。
***
「そんなに僕を抱きしめてどうしたの?」
「あれ、一人称僕に戻ってる」
ニヤニヤした顔はスルーしとく。
「『僕』の方がずっと使ってて慣れたからね」
じゃあ、あの時変えなくても良かったんじゃ……?
そんなあたしの疑問にはさっきよりも深くなった笑顔で答えてくれた。
読んでくださりありがとうございます。
次に行くと言っておいてなんですが、グダグダしています。




