60.芋虫ィィィィイ!
とは言ったものの、何人いるの!? ざっと見、十五くらいなんだけど、一応これでも防御魔法を展開しながら人の上に落ちて、数人は気絶させたけど……って、うわっ綺麗な右ストレート! って言ってる場合じゃないよね避けなきゃ。しかも、目が死んでるみたいで、単調な攻撃しかやってこないのは助かったけど、なんか怖い。何時ぞやの雪様の信者みたいな狂気に満ちてるし。
防戦一方ってこんなことを言うんじゃないかな?
今度は左から……しゃがんでって、うわあ、ナイフ!?
「っ痛ぁ!」
とっさに右によけたけど、足を切られた。っていっても、速攻で治したけど。
城潜入のとき使ったやつで上に避難しよう。天井高くて助かった。
見た感じ魔法使いって人は居なさそうだし、使ってくる気配なかったし大丈夫かな。多分。
アイ君が防音結界張ってるけど、あんまり騒ぐと子供たちが起きちゃうかもしれないし、静かな魔法は何か……って、そういえば『新素開発』ってスキルがあったはず。
王宮に侵入して失敗した時の話だし、この頃全然、っていうか使ったことすらなかったから忘れてた!
チートモノのスキルなのに!
えっと、静かと言えば『寝る』。
と、いうことで魔法内容は、相手を強制的に眠らせる。イメージは誘拐犯がよくやる、後ろから口元を押さえつけて睡眠薬をかがせるあれで。
『エラー。魔法系統名を入力してください』
は? えっと、系統って確か水とか風とかのことだからこれは……睡眠? いやいや、限定されすぎだよね。じゃあ、状態魔法でいっか。
音声入力かなんかかな?
「状態魔法!」
睡眠! 眠れ!
次は、檻でも作ろうかな? 定番の「創造魔法」で……って、あれ? 作れない。なんで?
バタバタと、殆どの人が倒れる。その音に混じって、ボトボトという音と、目の前を上から下に通り過ぎる黒い物体X。
下ってことはあるのは魔法で固めたあたしの足場。
恐る恐る視線を向けると……。
ああ、今日も天気がいいな!
「今は夜だし、曇ってるけどね」
冷静な突っ込みをしないでタイラント! ってタイラぐふっ。お腹はやめろって。
現実逃避が、現実逃避させて! だって、あたしの足元には、
「なんで、芋虫がこんなにいるの~~~!」
足元を埋め尽くすほどの芋虫がモゾモゾと蠢く。しかも一つ一つが拳大サイズ。
わああ、ちょっと、登って来ないで! 気持ち悪い! 鳥肌すっごいたったし!
あ、なんか、思い出しちゃいけない記憶が……。
***
「さあ、逮捕したのはいいが、どんな刑にしようか」
有罪確定なの!?
口押えられてるから何も言えないし!
「芋虫の刑何てどうだろう」
「そうしよう! この間捕まえたばかりの活きのいいやつを使おうか」
「「「アーメン」」」
そう言うと、皆して扉の奥に消えた。
っていうか、最後おかしい! なに、なんでアーメン!?
あれ、部屋の奥からなんかって、何あの芋虫スイカくらいあるんだけど! モゾモゾしてて、気持ち悪っ。
あれ? 動きが止まった。なぜだろう、視線を、芋虫から視線を感じる。
するとこっちに向かって一直線に動き出した。っていうか動き速っ! 大きいうえに動きがキモイ! 小さいのならまだしもってそうじゃなくてなんか駄目だ。
うわちょっと、こっち来るな!
『ぎゃああああああああああああああ!』
「落ち着いて、もういないから」
すると、優しく頭を撫でられた。
読んでくださりありがとうございます。
芋虫です。小さいと可愛い(←!?)のに、デカイとただただキモイ。




