46.主サマとロイさんは?
あの後、荷物を持って商隊の集まるとこに行って、いつの間にか依頼を受けてたレンに引っ張られながら護衛をすることになった。「実践訓練もしないとね」らしい。確かにこの頃あんまり実践っていう実践が無かったね。
「えいっ」
それで町を抜けて狭い街道らしきとこを通ること一時間ちょっとくらいで魔物の集団に遭った。周りの森からわらわらと出てきた。
あたしは何してるかといえば……
「助かったぜー!」
「いえいえ!」
防御といえば結界でしょ、ということで結界張ったり治癒魔法を使ってます。他の人は魔物の数が多いうえに硬いらしく、苦戦してる。怪我はあんまり無さそうだけど混戦になってて、結界も張れない、戦えない、治癒魔法必要ないってあたしの需要はどこ……?
まあでも実践って結界とか治癒じゃないと思ってる。っていうか確実に違う。レンはなんか刃渡り三十センチくらいの剣を渡してきたから。戦えっていう事だね。
でも無理なんだよ! やろうとすると罪悪感がこみ上げてくるんだよ。手刀のときの須山さんの顔と共に。
だからどうしても無理。荷物が嫌で何回かやろうとしたけど、手が震えて出来なくて、もっとお荷物になった。
結界を張る必要は無いかな? と思いつつも辺りを見回すと魔物を沢山倒してる、フードを深く被った人が居た。地面に引きずるほどある黄土色のマントからちょこっと剣を出して、流れるように滑らかに剣を振るって戦ってる。うわあー、的確に目を潰してるよ。エグイ……。
……これを見るのに慣れたあたしって……。慣れって怖いね!
「そろそろ片付いてきたね。戻って休憩に……って、聞いているかい?」
「え? ああうん。行こう、レン」
あれ、いつの間にか殆どが終わってる。どれくらいフードの人を見てたんだろ、あたし。
レンの後ろを付いて行こうとするとポーチをレンに取られる。え、ちょっ。
「まあ、今のところ大丈夫そうだからさ、安心しなよ」
「なんでポーチの中に向かって話してるの?」
なんか悪いものでも食べたのかな?
大丈夫かな?
「これは、夢見が付けた盗聴器さ。……気が付いていて放っていたのではなかったのかい?」
レンがこっちに投げてきたものは何の変哲もない黒い石ころ。……石? そんなものあったっけ?
「試しに話してみて」
「ゆ、夢見さーん……」
『ナオか』
『ナオさん、無事でしたか?』
主サマとロイさんだ! 夢見って主サマのことだったんだね。
っていうか会話できてる時点で盗聴器じゃなくて通信機だよね?
『今どちらに?』
「どこって……どこ?」
町の名前とか国の名前知らなかった! れ、レンー。
「ここはフェスト帝国っていう国さ。さっきまで居たのはハロウっていう町」
『フェストか……。ここからは遠いな。……その、だな……』
『実はナオさんを探しているうちに英雄に担ぎ上げられまして、なのでパーティーを組むことが出来そうにないのです。すみません』
申し訳なさそうに言うロイさん。まあ、パーティー宣言しておいて何ヶ月も開けてたのはあたしだからね……。探してくれたのか。確かに戻らなかったら探すくらいはするけど、英雄って何をしたのかな! 探すだけじゃ英雄なんてならないよ!?
「あたしの方こそゴメン! 言いだしたのはあたしなのに……」
『まあ仕方がない。それでオレ達は隠れながら生活するから、何かあったらこの石を使ってくれ。魔力を流せば通じる』
「隠れる?」
『一、二ヵ月ほど前に魔王を倒したのですが、その後権力争いなどに巻き込まれそうなので』
『実際巻き込まれたがな』
こともなげに言うロイさんと主サマ。って、魔王!? 一、二ヵ月前ってことはタイラントの前の魔王か。
いや魔王倒すの勇者の役割!
あ、でも次がもうなってるね。じゃあいいのか。
「そっかー、大変そうだけど頑張って。困ったことがあったら言ってね」
『ああ』
『それでは』
凄いな、主サマとロイさん。でもいいのかな。魔王って主サマ達の上の人なのに。
「もうすぐ出るみたいだから早く戻ろうか」
「うん」
空気になってたレンの声で、次会った時に聞けばいいかと完結して商隊に戻る。
それから魔物も出ず、数時間進んだ先で夜営の準備に入った。
読んでくださりありがとうございます。
遅くなりました!すみません。
実は高スペックな二人。……実はでも無いですね。
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本格的に恋愛を書きました。愛の言葉、です。良ければどうぞ。




