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このアイテムは呪われています!  作者: マリー?
4章.仲間との出会い~魔王編~
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37.ボスは可愛い猫耳少年

読んでくださりありがとうございます。

ボスなのに戦闘しない、という…

 

 ダンジョン〈脱落の土地〉




 あのあと、あたしの魔力が切れる寸前で、お腹いっぱいになったのか手を解放してくれた。よかった。


「おおー、なんかボス部屋っていうより宝物庫って感じがするね」

「ここまでキラキラしているのも珍しいね」

 あたしたちの目の前には、これ以上無いってくらい豪奢で大きな扉がある。大きいっていってもあたしの体感で、扉の片方が大体高さ二メートル、幅三メートルくらいの両開きの扉があるだけで、大きいっていうより幅が広いって表現が正しい。

 扉は大きな石で出来てて、金と銀でなんかよく分かんない蔦植物が描かれてる。そして、所々に林檎型のルビーや薔薇型のサファイアみたいなカラフルな宝石が沢山ある。形もそれぞれ違うのがすごい。

 確かにひとつひとつ別で見ると綺麗なんだけど、全体として見ると、ごちゃっとし過ぎてるような、まとまりが無いような残念感がある。でも薔薇とかはすっごく綺麗なんだよ、細かくてリアルで。不思議な違和感だね。


「進もうか」

「どんなボスなんだろ」

 レンが左側の扉を押して、あたしは右側の扉を押す。

 うわっ、意外と重たい。


 ほとんど開かなかった扉の隙間からこそっと中に入る。そこはドーム状の部屋で、壁一面にさっきの扉にあったような絵が描かれてる。今度は広葉樹とかも描かれてて、さっきよりもごたごた度が増してるようにしか見えない……。



「ようやくお出ましだな! おれと勝負しろ!」

 あたしがキョロキョロと絵を見てる間と、やたらと威勢のいい、わんぱくそうな声が聞こえた。

 あたしは声が聞こえた、部屋の中央のほうに首を向ける。


 そこには、なぜか勝ち誇った顔をしてこっちを人差し指で指し、胸を張ってる猫耳少女が居た。少女は、ぼさっとした肩までの金髪に(でも似合ってる)膝までありそうな白い長袖ワンピースを着てて、その上になぜか豹柄の、ジャングルでゴリラに育てられた某キャラクターみたいな服を着てる。後ろでは猫の尻尾がうねうねと動いてる。


「カワイイー」

 あたしはそう言って、女の子のとこまで走って行って、ギュッと抱きしめる。ふわふわしてて抱き心地よかった。


「や、やめろよ」

 ギュッとしてると、ちょっと怯えたような顔で、突き放そうとしてるのか小さな手をあたしのお腹の辺りに当ててぐいぐい押す。そんな仕草がまた可愛い! こんな姿でお願いされたら、どんなこともやるしかないよね! あと、お願いを聞くとしたら勇者とか正義の味方だね。はっ、つまり可愛いは正義の味方と同等、いやそれ以上! 可愛いは正義なんだ!


 あたしがあまりにも可愛い可愛い言い過ぎたからか、抗議の声が上がる。

「お、男にかわいいって言ってんじゃねーよ!」

 なん、だと……!

 あたしは思わず猫耳少年の顔をまじまじと見る。最初に目に飛び込んできた釣り目がちの大きな目には髪とおんなじ色の宝石が納まってる。そして、小さくも整った鼻筋、小さな口からは同じく小さな牙の先が見える。さらに、不安そうに寄ってる眉が庇護欲をそそる。

 男の子でこのクオリティ……是非お持ち帰りしたい!


「一応言っておくけどさ、そう見えてその子がダンジョンマスター――ボスだよ」

 そうレンに言われて、また猫耳少年を見る。うん、何度見ても可愛い。


 ――じゃなくて、ボスなの!?

 あたしが驚いてると、猫耳少年はむっとした表情を浮かべ、抗議する。

「そう見えてってなんだ! おれはひゃくじゅうのおう、ライオンなんだぞ!」

 本人は本気なんだろうけど、舌足らずなとこがまた可愛い!


 でも、

「ライオンじゃなくて猫だよね?」

「ら、ライオンなんだぞ! おれはライオンの獣人、ネリーなんだぞ!」

「ね、ネリー……。名前まで可愛い……!」

「か、可愛いって言うな!」

 おや、ちょっと涙目になってるよ? なんか嗜虐心がそそられるね。

「でも、その服は豹だよね? それに尻尾は猫だよね?」

「うっ……で、でも髪は……」

「え、その髪ライオンをイメージしてたの? 普通に似合ってて可愛いよ?」

「うっ、うわあーーーん!」

 猫耳少年は泣きながら、奥へ走っていった。

 ……あ、いじめ過ぎた。



「ここから出ることが出来るようだよ」

 あたしが奥を見てると、レンが何も無かったように奥にスタスタと進んでく。

「う、うん」

 あたしは慌てて付いてく。


 しばらく進むと、光で周りが満たされた。

 ダンジョンで薄暗いとこに慣れた目にはその光は強すぎて……

「目がぁ、目がああああああああ!」

 あたしが屈みながら悶えてると、ふっと肩が軽くなって、

「君の血、凄くおいしかったよ」


 そんなやさしそうな声が聞こえた。




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