31.ダンジョンへ
読んでくださりありがとうございます。
遅くなりました!短くてすみません。
「勇者様、頑張って下さい!」
「是非とも魔王を倒して下さい!」
あたしが殺人者と呼ばれるようになって一ヶ月。
あたし達は、ダンジョン攻略の為に城門のすぐ近くにいる。
お祭りは出発の一週間前から開催されてるけど、出発をする今日が一番混雑してる。凄い賑やかで、応援の言葉がよく投げ掛けられる。
頬を冷たい風が通り過ぎてく。ふと、顔を上げるとお祭りの照明の明るさに反して空は暗い。
「奈央、大丈夫?」
ずっと俯いてたあたしが顔を上げたから不審に思ったのか、お兄ちゃんが尋ねてきた。あたしはチラリと見ると、また空を見る。
お兄ちゃんにはお世話になったね。
空をぼーっと眺めてると、あの時のことを鮮明に思い出すことができた。
***
気が付くとあたしはベッドで寝てる。
雨の音がする。風が吹いてるのか窓がガタガタ鳴ってる。部屋は薄暗く、時々雷の音とともに部屋が明るくなる。
近くでお兄ちゃんと陽が話してるのが聞こえる。
お兄ちゃんが涙声で呟いた。
「やっぱり使わせるべきじゃ無かったんだ……もう5日になるのに目を覚まさないなんて……」
「ステータス的には大丈夫だったんなら、他に要因があるんでしょ。ーー殺人のショックとか」
陽のどこか冷たい、突き刺さるような声音に思わずビクリとなった。
「……! 奈央、大丈夫? 怠くない?」
お兄ちゃんがバッっとこっちを向いて、勢い込んで聞いてきた。けど、なんでか、返す言葉も、返そうという気力も見つからない。
それでもお兄ちゃんは気にせずにお水を持って来たり、話してきたりした。
「……」
陽はそんなお兄ちゃんを一瞥すると、あたしに目も向けずに無言で出ていった。
お兄ちゃんはそんな陽の背中を攻撃的な冷たさを湛えた目で睨み付けてたけど、あたしが見てる事に気付くと無理をしてるような笑顔を顔に張り付けた。
……。
よく鳴る雷も、窓に打ち付ける雨も、まだ止まない。
***
それからはお兄ちゃんが言うことを大体やった。なんも考えれないし、考えたくないから。
いつも言われる、
「人殺し!」
「僕に触るな! この世から消えろ!」
っていう罵詈雑言の嵐も気にならなくなった。
「魔王を倒すぞ!」
「「「おおぉぉお!」」」
リーダー君の鋭く張りのある掛け声と、閧の声が響き渡る。周りの人達も声を出していて、さらに大きな声が響き渡った。あたしはその声を聞きながら自分の持ち物を確認する。ロイさんお手製のベルトポーチの中にはお兄ちゃんの書いた本。支給品は受け取らずに他にまわしてもらった。他の人が使うかは置いといて。
そして、あたし達は国民や観光客の見守る中、ダンジョン攻略に向かった。
***
ダンジョン〈脱落の土地〉
「では、これからダンジョン攻略に入る。ここは〈脱落の土地〉だが、〈第二の死の都〉とも言われている。脱落者の霊というアンデッドが出る。触れると危険だから、仲間との連携をしっかり取るようにしろ!」
「はい!」
「勿論です」
ライアさんの説明を聞いて、皆が元気に返事をする。
数人があたしを見て、
「……あれとは連携なんて出来ないよね」
とか、言ってる。
そして、あたし達はダンジョンに入った。




