28.脱出は無理だ
読んでくださりありがとうございます!
書き溜め作ります。他、所用で更新不定期になります。
2、3日に1話は上げます。
ノルス王国 王宮
あのまま引き摺られて行ったあたしは、国王と何故かその右斜め後ろに転移したとき会った、ウサギのライア・グリゴリドさんがいる広い部屋に連れていかれた。そして、国王の真ん前数メートルさきに正座させられた。
さっと周りを見ると、灰色の、石を削ったような壁があり、両側に大きな窓が4つあって、ガラスがはめられている。そして、窓と窓の間に全部同じ壺が置かれてる。さらに、国王が座っている玉座は金で作られた縁に赤い上質な布が張られている。その後ろには、左右に一体ずつ鎧が飾ってあり、真後ろには燃え盛る炎を疾風で巻き上げているようなノルス王国の紋章の入った旗が飾られている。あたしが座っている床にはふわふわな赤い絨毯が敷かれている。
「……であり、……になりました」
「ふむ。今回のことは少々やり過ぎた、ということにしておこう。拘束を解くのだ」
「はっ」
国王にインテリ風騎士が報告をした。国王が若干疲れたような感じがするのは、暗殺とか城の警備でなんか言われたからかな? 壁についてはどうしようも無いと思うけど。
あたしが手錠みたいなものが外された手首をさすりながらぼーっと話を聞いてると、国王がこっちを見てきた。
「初めてのダンジョン攻略、ご苦労であった」
えっと、こういうときはなんて言うっけ? たしか、
「身に余る光栄です」
「うむ。では、早速明日から訓練をしてくれ。グリゴリド、頼む」
ライアさんが頷き、了承の意を表す。
……。やっぱそうなる?
帰りたいんだけど、国王だからなぁ。従わないといけないのかなぁ?
……駄目ですよね分かってます。
何も言わないあたしに焦れたのか国王は「では、精進しろ」って言って、あたし達を部屋の外に出させた。
***
あのあとあたしはライアさんから明日の訓練内容を聞いてから、あたしに割り当てられた部屋に戻った。
そこにはお兄ちゃんと陽だけしかいなかった。
雪様と狂信者は? って思ったけど、相談できてちょうどいいからそのままにしといた。
「……王宮に戻ることになったけど、いつ脱出しよう。というか、出来るの?」
「逃げる気満々なんだね。お兄ちゃんは奈央が居なくて寂しかったよ」
そして、大袈裟に泣くふりをするお兄ちゃん。
「次に外に出るのは次のダンジョン攻略のときだけど」
「う~ん。そのときかな」
なんかお兄ちゃんと陽で話が進んでるんだけど。
ダンジョン攻略はどうやら、1ヶ月後にあるらしい。
戦闘系のスキルを持っていたり、参加したいって人が行くらしい。前のダンジョンであの魔物の大群に追いかけられたことで、精神的にヤバイ人が出たらしく、行くか行かないかは選択出来るようになってる。……あたしの死亡は関係ないの? (いや、死んでは無いけど)あたしって割りとどうでもいい存在なんだね。気にしないけど。
それまでの昼間は基本的に訓練をして、他の時間は自由時間で主に本を読んだり、訓練の自主トレをしたりするらしい。
自由時間に脱出すればって思ったけど、
「『そんなことをする暇があるなら、訓練をしろ』って言われるからね。これからお祭りが始まるんだ。コソッって出ても多分バレるからやめた方がいいよ」
というお兄ちゃんの心を読んだ回答により無理な事が分かった。そのお祭りは1ヶ月後のダンジョン攻略(これが本格的な旅立ちらしい)まで続いて、国内外問わずに人が来て、夜もぶっ通しらしい。……お祭り楽しそう。
ってことは、夜に脱出も無理かな。器用0じゃバレるから。
もう夜も遅いし、明日は大変だろうしってことで寝ることにした。
あたしは陽をギュッって抱いてベッドで寝た。珍しく陽はされるがままになってた。そこに、お兄ちゃんが後ろから抱きついてきた。……。
あたし達は家族3人で仲良く眠りについた。




