14.ダンジョン攻略は二人で?
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ダンジョン〈夢見の大地〉
あたし達は、いきなり何もない空間から人が出てきたら混乱するだろうというのと、転移の瞬間を見せるのはルール(法律みたいなやつ)で禁止されてるって理由で、他の転移可能場所から全力で走って向かってる。
「おま…は誰……どこに…! ……か……して…やる…!」
前から声が微かに聞こえる。
急ぐ必要がありそうだね!
「雪様、先行って! 全力でね!」
悲しいけど、雪様の方が速いんだよね……
「分かりましたわ!」
そう言ってどんどん前に進んでく。
……羨ましくなんて無いよ!
数秒後、
「そこ…あなた! ちょ……待ち…! です…!」
……羨ましくなんて……うぅっ。
とりあえず、あたしももうすぐ着きそうだし、牽制程度に魔法の準備(さっき教えてもらった)をしよう。
イメージは大切。
魔力を動かす。
標的は無し。当たっても痺れるだけ(そもそも当たらない…)の静電気程度の矢。教えてもらったやつの改造版。
体の周りがパチパチしてる。……地味に痛いよ。
……雪様が行った部屋の前の角を曲がって、あたしは大きめの声で言う。
「ストーップ! 止まらないと射、つよ……?」
あたしが固まるのは仕方ないよ……
だって、目の前には
「雪様、御無事で何よりです!」
と言いながら雪様の前で跪いている、リーダー君がいたから。……でも、ずっと雪様を見てる。
あたしの言葉は聞こえてないらしい。
……君そんなキャラだっけ?
けど、次の言葉にあたしは耳を疑った。
「僕は、雪様が生きていると、野川先輩に聞きました。野川先輩の妹もいるらしいですが、僕は雪様だけでも、と思い、来ました!」
それを聞いた雪様が何か言ってたけど、気にせずに
「あなたは私のと、ともっ……友達に「リーダー君、陽とお兄ちゃんが生きてるって本当!?」……ぁ……」
雪様がしょんぼりしてるけど知らな……後で慰めよう。
リーダー君は雪様の言葉を遮られたのが嫌だったのか、イラつきぎみに
「……生きている! ……いっておくけど、僕はリーダー君じゃないし、君を助ける気は無い!」
って言ってきた。
態度の違いがすごいね♪
じゃなくて、
陽が、陽がこっちに来てたんだ……! ……ついでにお兄ちゃんも。
……でも、何で居なかったんだろ?
やっぱり誤転移かな?
あたしが考えてる間に、リーダー君は雪様をお姫様だっこをして、ダンジョンの出入り口の方に走って行った。……え……。
呆然と見てると、笑いを我慢してるような声が掛かった。
「振られたのか?」
……女どうしで何言ってんの、この主は。
そういうのが好……
「ちょっと茶化しただけだからそんな目で見るな」
「……ははは」
「目を逸らすな」
……。
「そんなことより、フレッドが主を待ってたよ(嘘)」
「あ? オレの正体解っていたのか?」
意外だ! という声で聞かれた。
だいたいは、ね。
「フレッドに聞いた」
「ふぅん?」
主の目が、まるで品定めでもするように細められる。あたしは気まずくなって適当に歩く。
あぁ、それより早く陽に会いたい。陽成分が不足してるよぅ……。……それに、騒がしいお兄ちゃんにも……。
そういえば、お兄ちゃんに渡された日記帳もまだ王宮にあるな。
それも取りに行こう。
出入り口の方に行こうとしたあたしは、
「それじゃあ、サヨウナラ~」
「ちょっと待て、ダンジョンの出入り口はリーダー君とやらのお仲間が沢山居る。それに、リーダー君とやらが、君が雪様? を危険に晒したとか言ってやがる。雪様? は否定しているがな」
なぜか嬉しそうな主に止められた。……なぜ!
「あそこに行ったら袋叩きだ。それに、レッドウルフは良いのかよ?」
……。……忘れてないよ! レッドウルフだよね! 潰せだよね!
でも、それだとダンジョン出れない。
そんなあたしの考えを読んだのか主が、
「下のボス部屋に転移魔方陣があるから、そこから出ろ。ちょうど下に居るからな、レッドウルフ」
めーれーなんだ……。
まぁ、もともと依頼受けたしね。帰るのが少ーし遅くなるだけだよね? つまり急げばOK! 陽~待っててね!
「りょーかい、主サマ?」
ニヤッっと笑ってみせると主サマもニヤッ(キラッ)と笑い返してくる。……くそぅ! イケメンなんて滅びろ! (お兄ちゃんも)
そして、主サマの案内で近くの階段から降りていった。
リーダー君は逃げた後、一旦王宮に帰ろうとしたとこを、優斗(奈央の兄)に言われて急いで雪様を探してました。(優斗は妹達を心配したのではなく、リーダー君達の雪様を失っての意気消沈ぶりに心配しました)