俺、魔王の部下探します。
俺たちは海辺の洞窟に来ていた。
海辺の洞窟はその名の通り、海辺にある洞窟である。
洞窟内には海が近くにあるせいで、土の部分が泥状になっており、岩で出来た足場を飛び越えていかなければならない。
さらに、水属性のモンスターが多く、ゲルド将軍のもとにたどり着くまでに何度かの戦闘を強いられるだろう。
「危ないから、俺、イラン、サラ、アミーの順で縦に並んでいこう。」
俺の提案に全員が賛成してくれたので、俺たちは出発することにした。
しかし、この岩かなり滑るな。
こりゃ、気をつけないとな。
俺がそう考えた瞬間、
後ろから、「きゃっ」という小さな悲鳴とともに誰かがこけるような音がした。
「どうしたっ!?」
俺が驚いて振り返ると、そこには…
「す、すみません。転んじゃいました。」
そう言って尻餅をついた姿勢のサラがいた。
「サラ、大丈夫か?」
俺はそう言ってサラを助け起こした。
「怪我はないか?」
「は、はい。大丈夫です。ありがとうございます。」
うん、怪我も無いみたいだし、大丈夫だろう。
サラの安全を確認した俺たちは、海辺の洞窟の探索を再開した。
しかし、ゲルド将軍ってのは、どこにいるんだろうな?
俺がその疑問をぶつけてみると、アミーから答えが返ってきた。
「一番奥にある『聖泉の祠』ってところにいるんじゃないか?」
「聖泉の祠?」
「ああ、この洞窟の一番奥にある部屋でな。もしかしたらそこに居るんじゃないかと思うんだが。」
まぁ、他に探す当ても無いからな。
「よし、じゃあその聖泉の祠ってとこに行ってみるか。」
そうしてしばらく歩いていると、地下に続く階段を発見した。
階段を降り、入り組んだ道を歩いているとそこには、部屋があった。
部屋といっても、5畳くらいの大きさで、通路と部屋の間には入れない、もしくは出られないようにするため、鉄格子が嵌められていた。
なんだこの部屋、いや…檻か。
俺がこの部屋、もとい檻の前で立ち止まっていると、後ろから声がした。
「この檻はおそらくですが、敵対者、または、裏切り者を収監するためのものなのでしょう。」
イランの声だ。
なるほど、そういうことか。
俺たちは呼びかけたりして、この檻に誰もいないことを確認すると、この檻の前から立ち去った。
俺たちは地下からあがり、探索を再開した。
何度か戦闘になったが、俺たちは無事に聖泉の祠に到着した。
俺たちの顔は、祠に近づくにつれて、だんだんと強張ってきている。
無理も無い。魔王の部下と戦うのはこれが初めてだもんな。
俺たちは祠の前で一度頷きあい、祠の中に足を踏み入れた。
中に入りまず、目を奪われたのは、部屋の中にこんもりと積み上げられた金銀財宝の山だった。
一瞬驚いたものの、これではいけないと我に返り、ゲルド将軍を探した。
部屋の中を見回していると、奥のほうから声が聞こえた。
「誰だぁ?貴様ら。」
その声は野太く、よく通る声で、俺たちの耳に届いた。
その声のした方向に目を向けると、俺は、驚愕させられるハメになった。
そこには、俺たちより1.5倍ほど大きな生物が立っていた。
体は全身、筋肉がついており、一発でも殴られれば、意識は吹っ飛ぶだろう。
顔は牛のような顔で、右の眉毛から頬にかけて剣で切られたものとおもわれる傷が付いていた。
表情は、最初、俺たちを怪しんでいるように見えたが、時間が経つにつれ、俺たちを敵と判断したのだろう。だんだんと獲物を見つけたと言わんばかりに笑っている。
ふと、隣に立っていたアミーを見ると、アミーはある一点を凝視していた。
俺も釣られてアミーの見ている方をみると、そこには、腕に嵌められたブレスレットがみえた。
しかも、よくみると獅子の紋様が入っている。
アミーの探しているブレスレットだった。
「……せ。」
アミーが小声でなにか呟き、ゲルド将軍の方に歩いていく。
「おい、アミー。」
「…え…せ。」
俺の声が聞こえていないのか、なおもアミーの歩みは止まらない。
やばい、このままじゃ…
「そのブレスレットを返せ!!」
そう言って、アミーはゲルド将軍に突っ込んでいった。