俺、旅に出ます。
「ロイ、準備はできましたか?」
「イラン、もうすぐ終わるから待ってて。」
そう言って俺は準備を再開した。
俺はロイ。唐突だが、今日から旅にでる。
去年、『聖教会』の勇者課程を卒業した立派な勇者だ。
『聖教会』というのは、いわゆる勇者のパーティーを育てるための学校だ。
『勇者課程』、『魔法使い課程』、『僧侶課程』、『戦士課程』など、一般的なものから、『踊り子課程』、『獣使い課程』、『忍者課程』などよく分からない課程まである巨大な学校だ。
いや、ホントによく分からない。忍者ってなんなの?
しかも、全国に分校があるらしい。
とまぁ、そんなことよりも、だ。
とにかく俺は勇者課程を卒業して、立派な勇者になった。
そんな俺は今日から魔王討伐の旅に出るわけだが…
「ローイー、まだですのー?」
「ごめん、イラン。今行くよ。」
いっけね、イランを待たせてるんだった。
彼女はイラン。俺より2つ年上の20歳だ。
さらさらと流れるような黒髪を腰の辺りまで伸ばしており、肌は、きめ細かく一度も焼けたことはないんじゃないだろうかと思うほど、白い。
身長は180の俺よりやや小さく170といったところだろう。それでも女性としては大きいほうで、本人はもう少し小さくなりたいらしいがな。
体の起伏は少ないが、腕や足も細く、そこも魅力の一部だと言えるだろう。
そして、なにより目を惹かれるのは、美しい瞳だろう。
紫水晶のような色で、気を抜けば吸い込まれてしまうんじゃないかと思うほどだ。
そんなイランは、2年前に聖教会の魔法使い課程を主席で卒業している。
美少女で、しかも成績優秀な彼女は卒業時に数多くの勇者のパーティーに誘われたらしいが、俺と一緒に旅に出るからと、断っていたらしい。
イランと俺はいわゆる幼なじみで、子どもの時からずっと一緒にいる。
だから俺もイランと一緒に旅に出られることは、とても嬉しい。
そのせいで、昨日あまり眠れずこうして準備に追われていたわけなんだがな…
「さて、イラン。そろそろ行こうか。」
「まったく、誰を待ってたと思うんだか…。ではロイ、改めまして、よろしくお願いしますね。」
「ああ、こちらこそよろしく。」
そう挨拶を交わしつつ、俺たちは旅に出るのだった。