第一話:決意
「私、死ぬかもしれない・・・」
いつも明るい彼女から発せられる重すぎる言葉。
僕等は初めて出会った場所、ラムシナ国立公園に来ていた。
季節は冬。
公園は一面の銀世界。片隅にポツンと置かれた青いベンチに腰掛け、二人で向かい合って座っている。白銀の野を照らす薄黄色の電灯が既に六時を過ぎている事を証明している。
入園者は僕等だけの様で、彼女が来ている赤のセーターが妙に目立っていた。
「死ぬ?」
僕がオウムがえしにする。
彼女の薄い緑の瞳が僕を見つめ、頷く度に綺麗な黒髪が揺れる。
「そう。私、死ぬかもしれないの」
彼女の不安を纏った表情は硬くなるばかりだ。
「なんで?」
素直に問う。こればかりは聞かざるをえない。
「あのね?───聞かなきゃよかったって言わない?」
まだ話してくれない。冗談ではないようなので僕が静かに頷くと、硬い表情のまま口を開く。
「あたしが陸軍に入っているのは知っているでしょ?」
「うん。陸軍特別歩兵隊兵長だね?」
「そう。それで隣国のカルラバとレサイアと手を組んで、隣の大陸の「ティカード王朝」に攻め入る事になったの」
「───本当・・・なんだよね?」
「えぇ。紛れもない事実。もっとも、超重要機密事項だけどライカには言って置きたかったの」
「ありがとう。で、予定は?」
「うん。詳しいことは教えてくれなかったけど、我が歩兵隊の任務は──」
公園中央に存在する噴水の隠しライトが灯り、様々な色を発す噴水を中心に、公園はますます綺麗になってきた。
僕は彼女の任務全てをメモした。
出発の日は二月一日。時間はまだある。その日まで充分楽しもうと思う。
僕は終戦頃には死んでいることだろう。
絶対に彼女は僕が守る。
例えこの身が滅びようとも、彼女に血は流させない。