だから俺は高校生だって!
流血表現?ありです。注意。
思った以上に張り切ってくれちゃった大和のせいで、俺は今グロッキーです。
いや、風圧とかはこの際どうでもいい。身体を伏せれば少しは弱まったし。
でも縦揺れはなんつーか・・・・今まで感じたこともない揺れでした。頭が揺れる・・・。
え、何してるかって?
あの速さで走れば神子にはすぐ追いついたよ。10人いかないぐらいの傭兵?(ギルド登録者のこと)に囲まれた馬車が、魔物の群れに襲われかかっているところにバッチシ!我ながらタイミングの良さに恐ろしくなるね。
それを見たシュオルさんはそれ以外見えないって感じで大和から飛び降りて、加勢しに行った。
本当は俺も加勢すべきなんだろうけど、さっきも言ったようにグロッキー中。腹の中で反乱が起こっていてそれどころではない。戦じゃー、戦じゃー・・・うえっぷ。
「あー・・・大和、遠い奴なら食ってきていいぞ。」
ただし尾っぽは換金するから集めるようにって言うと、すぐに大和の気配が離れた。なんか嬉しそうだったな・・・腹減ってたのか。
大和が手伝っているってことで許してください。
うーん・・・・乗り物酔いとかしたこと無かったんだけどな。まぁ、今ので慣れただろ。
「ん、戻ったか。終わり?」
大和が傍に戻ってきた気配がして、座り込んでいた体を立ち上がらせる。顔を上げれば、うん、スプラッタだ。
長閑だった風景は一度の戦闘で地獄絵図です。今回の魔物が一体ずつでも大きめなのも原因だろうなぁ。肉は獣が食べるとして、雨が降るまで血はこのままか?
そりゃ、通る気もうせるかも。
さて、シュオルさんには飛び出していった時に≪守≫をかけたからそう心配してないけど、何処だ?
神子と一緒に居るかねぇ??
「あ、いた。」
神子と一緒かどうかは知らんが、馬車の近くで周囲を見て回っている姿を発見。
「おーい、シュオルさーん。」
「!タケル。怪我はないか?」
「離れてたから。そっちもなさそうだね?」
「ああ。・・・タケルのおかげだろう?」
「なんのことー?」
特に、礼を言ってもらうほどのことでもなく、ただ俺がしたかったからしただけのことなのでとぼけると、仕方ないなという風に苦笑された。
言っても無駄だってわかったんだろう。
馬車を見上げて話を変える。
「中に神子がいるの?」
「恐らくは。これから責任者と話してくる。」
「俺はここに居ていいよね。」
「ああ。この会話で俺の連れだとわかっただろうし、問題ないだろう。」
シュオルさんは神子を守るのに協力した人だし、その連れなら傍に居てもオッケーだよな。
周囲の傭兵さん達も怪我の手当てとか隊列の立て直しとか、魔物をさばくのに忙しそうだし。
近くで人数を把握しているらしい人の所へ近寄っていくシュオルさんを見送って、もう一度馬車を見上げる。
神子って、ホントに恐れられてるみたいだな。外にカギがかかるって訳ではないけど、窓には格子がはまってんじゃん。
これ、外の様子見えてんのか?
「・・・・ねー。聞こえる?」
馬車の扉をノックして、中に居るだろう神子に話しかけてみる。・・・・これで居なかったらすげー恥ずかしいな。
「魔物が襲ってきたけど、とりあえず戦闘は終わったよ。まだ被害はよくわかってないけど」
そこまで言って、もう一度周囲を確認。怪我人はいるけど、死人は見当たらない、かな?
「誰も死んでないよ。・・・・もう怖くないよ。」
お、やっぱり居たな。中で音がして、扉の内側に近寄ってきた気配がある。なんか・・・軽いけど。
「・・・。」
「タケル。」
「ぅえい!?」
「どうした?」
「あ、いや、ちょっと考え事してたからびっくりした。どうだった?」
変な声上げちまったい。ハズカシー!
シュオルさんがさらりと流してくれる人でよかった。
「同行していいことになった。」
「あれ?神子に会うんじゃなかったっけ?」
「・・・・神子に害為すものもいない訳じゃない。まだそこまで信用はされないさ。」
ふぅん。それならなおさら、誰かに立ち会わせてさっさと俺たちと離れたほうがいいような気がするけど・・・シュオルさんが同行したいと言ったのかな?
「神子も王都へ行くの?」
「いや、王都の神官と一度合流するためこの道を通っているが、王都には行かない。」
「そっか。」
・・・・まぁ、王都が名の通り王の居る場所なら、神子を連れて行くのは無いか。
「アウグラ殿!」
うん?誰か呼んでるぞ。応えてやれよ。
「ここに。」
なんでシュオルさんが応えんの?
・・・・・・・あ、シュオルさんって、クルシュオル=アウグラって名前だっけ?そういえば。
最初に聞いたっきり縮めてたから、すっかり忘れてた。勝手に縮めたのに、シュオルさんもすんなり受け流しちゃうし・・・・つまらん。
「アウグラ殿!そろそろ出発するが・・・おや?」
・・・・熊が出たかと思った。ふわ~・・・・マッチョなおっさんだなぁ。シュオルさんも小さいわけでも細いわけでもないのに、横に並ぶと華奢に見える。
赤黒い鎧がお似合いですね。山賊って言われても信じるぞ。髭がまずいのか?泣く子も黙るどころか大泣きかもしれん。
「この子が私の連れだ。タケル、彼がこの隊の責任者を務めている、バラスガド=セヴォルグ殿だ。」
「よろしくお願いします。」
「こちらこそ、しばらくは同じ道、仲良く行こう。」
第一印象は大事だろうと笑って挨拶すると、バラスガドさんもニカッと笑って返してくれた。
愛想のいいおっちゃんだ。姿に慣れれば、子供に好かれるかも。「森のくまさん」とかも最後には手を取り合って踊るぐらいだし!
「しかし・・・まさか、アウグラ殿の連れがこんなに小さい子供だとは思わなかった。大丈夫か?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁん?
喧嘩か。喧嘩を売られているのか。倍の値段で熨斗付けて返すぞ俺は!
「大丈夫だ。タケルは小さいがしっかりしている。」
それフォローになってないよ!?
そりゃ、2人に比べれば俺は小さい・・・・いや!2人がでかいんだ!!俺は普通!!!
「安全な道中ではないが、転ぶなよ、タケル。危険が迫ったら離れているんだぞ。」
初対面なのに頭までなでられた・・・。俺、ホントにそろそろ自分の年齢言った方がいいんじゃないか。
俺が立ち直れなくなる前にさぁ!
ストック切れました!
更新遅くなります(苦笑)




