ふぁんたじー=魔法じゃないようです。
確かに宿の飯はうまかった。パンとビスケットの中間のようなものとスープがよく合って、野菜も新鮮だし、肉もちょっと濃いめの味付けだったが生臭さは消されていたし。
食の好みで困ることはなさそうだ。ただ、米は恋しくなるかも。
1人分には十分だが2人分には足りない保存食などを買い揃え、2日後。村を出る前にギルドに寄る。
周囲の魔物の出現率や種類、新種の情報はないか確認するためだそうだ。
「そういえば、魔物って何?」
「は?」
「いや、体が大きい動物と何が違うのかなーと。」
まだでっかいトカゲ(死体)しか見ていないし、生きている動物もあまり見ていない。犬とか猫は同じだったけど。
「魔物は魔力を持っていて、それを使って生きている生き物、だな。」
「マリョク。」
「特殊な力だ。火や水を操ったり、一瞬で壁を作ったり、体を大きくしたり。」
それ全部できるんだが。
いや、俺は異世界人&仮名使いだからいいとして、特殊な力、ねぇ?
「それを持っているから、退治依頼があるの?」
「いや、退治依頼は普通、何らかの形で人に害を与えると判断された生き物に出される。人里に出てしまった熊なども依頼されることはある。が、大抵は自分では何とかできずに依頼してくるわけだから、魔物が多いな。」
なるほど。ほんと、シュオルさん教師じゃないの?説明上手だなぁ。
「人は魔力を持ってないの?」
「・・・・・・・・・人が魔力を持つと、それは神子と呼ばれる。」
・・・・・・・・・・・・・・え、説明それで終わり?その後に続く言葉があるだろうと思って待ってみたのに。
シュオルさんを見上げると、少し遠くを見るような眼をしていた。眉もかすかに寄っている。
これは、3日程しか付き合いのない俺が聞く話ではなさそうだ。今はやめておくか。
そう言えば最初に『神子か』って言われたな、俺。特殊な力、ね。何となく認識した。
魔法使いはいない、と。中途半端なファンタジー世界だなぁ!あ、ごめんなさい嘘ですごめんなさい。調子のりましたごめんなさい。
「・・・知り合いでも見つけたの?って顔じゃあないな・・・・。」
シュオルさんが突然振り返って、すれ違ったおじさん達を追いかけた。鬼気迫る顔で。
親の仇を見つけたと言われても信じるぞ、あの顔。美形は整っている分、こわいねー。って
「ちょっ!何してんの!?」
追いかけたおじさん達に、難しい顔で話を聞いていたかと思うと、シュオルさんはいきなり胸ぐらをつかみ上げた。
何言われたんだ!?つかまれていないおじさんも話を聞いていたはずなのにびっくりしてるよ?
「・・・・・・・・・・・・なんでもない。すまなかった。」
そんな苦々しい顔で言われても・・・・まぁ、おじさん達は反撃せずに逃げるだけにとどめてくれたけど。
「・・・・シュオルさん、どっかで何か飲めないかなぁ?俺、出発前に喉乾いちゃった。」
「・・・そうだな。何か飲もう。」
とにかく落ち着くことが正解だよ。話せることなら聞くし、話せないなら聞かないしさ。
主人公は待てる子。




