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ノベロニア・アンソロジー【第一章・第二章 合併版】  作者: ノベロニア・アンソロジー実行委員会
■■■ ノベロニア・アンソロジー【第弐章】 ■■■
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突発開催、お菓子争奪戦!【作・高嶺バシク】

――― 【アート】柚にゃん ×【作家】高嶺バシク ―――



挿絵(By みてみん)


 太陽照らす白の大地。今日もとある街角から、甘い香りが放たれ広がっています。

「ふーん、ふふふーんっ」

 今やその名を知らぬ者も珍しい、大人気パティシエのシュクレが様々なお菓子を作り、並べていきます。

「今日も街は平和ですね~」

 クッキー、チョコ、ケーキにエクレア。慣れた手つきで大量に。ただ今日はちょっぴり特別な雰囲気。

「先日はアスガルドエリア産の新素材を大量に頂きましたので、それらをふんだんに使った新商品の研究です!」

 色んなエリアから認知されてきて、たまに宣伝目的なのか食材を提供してくれる方々がいます。シュクレやお客さんが気に入ったら定番メニューになるので、ワクワクの瞬間です。

 バレンタインにチョコを食べに来て以来仲良くなったミューニがやってきました。竜の尻尾を振り回して、棚を叩いています。しかしご安心、以前同じ事をされてから対策として耐久性を上げていたようです。

「……チョコ……」

 ふらふら歩くミューニに、シュクレが駆け寄ります。

「ちょうど良い所に! 新作候補のお菓子が出来た所なんです、今日はなんと無料なので、試しに食べてみてください!」

 特別っぽく言っていますが、ミューニはいつも勝手に食べていきます。

 その辺の棚から勝手にチョコを取りそうになっていたミューニは、シュクレから差し出されたチョコを受け取り、すぐに食べました。

「……おいしい」

「良かったぁーっ!」

 喜ぶシュクレをよそに、ミューニは続けて手を伸ばします。

「おー! 確かに美味そうだなぁー!」

 しかし狙った次のお菓子は、先に別の手が掴み取りました。

「食べてもいいんだな⁉」

 一応確認にシュクレに尋ねた竜人の女の子はノイレ。甘い香りに誘われ、ミューニの後をつけてきたようです。

「はいっ。まだお試しですけど、きっとおいしいと思います!」

 シュクレが満面の笑みで返答すると、ノイレはすぐにケーキをぱくり。

「んん~っ! すごくうまいぞー! 次はこれと、あとこれも食べてみるかーっ」

 大喜びのノイレは両腕を竜の腕に変質させます。何倍にも大きくなったそれでお菓子をかき集め――

「いけ、骨三郎。最後の一球、投げましたー」

「俺様はボールかよォーー!」

 ノイレの大きな手の隙間を、小さな骸骨頭の骨三郎が一瞬で通り抜け、お菓子を奪っていきました。

「ぐっじょぶ」

 親指を立てた投手、アズリエルが小走りでお菓子を回収。口に運び、店から出ていきます。

「おいしかった。多分、また来るから」

「えっ、あ、ありがとうございました⁉」

 突然の試食ラッシュに混乱していたシュクレ、反射的にお礼だけ言えました。

「さっきの骨のおじさん、アタシのお菓子を取ったなー?」

「誰がオジサンだァい!」

「骨三郎、戦犯」

「見つけたぞ、待てーっ!」

 店の外でお菓子を食べていた二人は、突進するノイレから逃げていきます。

「飛んで逃げるなんてずるいぞー!」

「おかわり作戦失敗だよ。ね、骨三郎、ね」

「そんな目で見るなって、もう十分取れたろ! 俺様の成果を分けてやるから、勝手にプリンを食べた事はこれで許してくれよな、な?」

 店から遠ざかる少女達を眺め、音もなく降り立つ影がさらにひとつ。

「そう……これは任務のようなもの。私もあの子達のように、お菓子を手に入れてみせるわ」

 休暇中の暗殺者ヘイランが、真剣な眼差しでシュクレの店を狙います。

「ポチ、ラニちゃんの分も持ってくれて、すごく助かります」

「ごめんねクイルちゃん。わたしが何度言っても、うさぎちゃんが剣を手放さないの!」

 女の子二人組が仲良く店から出ると、開いたドアが閉じる前に影が侵入。お菓子はみるみるうちに減っていきます。

「だいにんき、だった……」

「そうですねー。今後もこのレシピは続けていいかもしれないです」

 結果的に一番落ち着いていたミューニは、その場から動かず最後のお菓子を食べ終えました。シュクレが確かな手ごたえを感じながら、休憩に外の空気を吸いに行きます。

「な、なんですかこれはー⁉」

 店を出てすぐの驚きの声は、別の大きな音によって、ほとんど掻き消されました。

「うさぎちゃんがんばれー!」

「小さいのに強いなー、アタシも燃えてくるぞー!」

 ラニの護衛うさぎが、集まってノイレの腕を受け止めます。

「ほねさぶ、最後の一球」

「さぁて本日何回目のラストでしょうかァ!」

「ポチ、返り討ちにしますよ」

「ガゥゥゥウ!」

 アズリエルが再び骨三郎を投げます。

 その他様々な種族、様々な客、偶然やってきたバトル好きや見物人まで混じって、お菓子の争奪戦が起こっていました。ノイレなどは、途中からバトルが目的になってしまっています。

 そして空から降り注ぐ天使の羽。戦場ど真ん中を駆け抜け、氷の壁を生成します。

「騒ぎを聞きつけ出向いてみれば――」

 ついには天軍のガブリエルが現れました。ただ――

「シュクレの新作がそれほどまでに傑作だったという事ですか⁉」

 彼女もお菓子を求めた一人に過ぎません。シュクレのもとに降り立ち、お菓子の在庫を確認します。

「もし。噂の試作品というのは、まだ作れますかしら。あと、原材料の出産地などを伺っても?」

 目の前が大騒ぎの中、シュクレは落ち着いていられません。

「あ、あのガブリエル様っ? 食材はまだ残ってます。でもその前に助けてください、街が大変な事に……!」

「あぁ、それなら問題はありません」

「え?」

 平和や治安を守る天軍の将が、この状況でむしろ少々笑みを漏らしています。

「よく御覧なさい、貴女の菓子を愛する民の姿を」

 言われるがまま、シュクレはガブリエルの促す視線に合わせます。氷の壁で多少落ち着いたとはいえ、相変わらずのバトル風景ではありますが――

「皆さん、笑顔です。とっても楽しそうですね」

 何も困ったことはない、オセロニア界の姿です。

「チョコ……もっと……」

 待ちかねたミューニがシュクレの服を引っ張ります。あまりの力に破れそうになったので従って後退します。

「はい、ミューニさんだけじゃなく、ガブリエル様や皆さんの為にも。人気の新作をどんどん作っていきますね! それでは!」

 厨房に戻っていくシュクレの顔に、もう焦りはありません。今日もお店は大繁盛、いつもと変わらない、平和な白の大地の朝。

 気合を入れて拳を握ります。同時に、外では爆発音が鳴り響きました。

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