『日本改造計画外伝』その拾参<私的善行(1)埼玉県川口市編>
「……説明は、以上です。」
取調室で、できる限り詳細に今夜の『出来事』について語り終えた。
ここまで約一時間かけた。私が待つ『その時』は、真蛸無い。否まだ来ない。
「では、幾つか質問します。いいですね。」
「聞きたくばお好きに。が、答えられない問題には、答えない自由がある。
その点、憲法規定と併せて心に留め置くこと。いいですね。」
「ご心配なく。こちらは、法律と憲法のプロです。」
「つまり、犯人逮捕のプロではない。故に、外国人を不起訴処分にしている。
そう言いたい訳か。やはり『日本の警察は日本一デスラー無い』ですね。」
「えーーっ、伺いますが、本日あの場所で何をしていたのですか。」
「騒音防止条例違反者に、注意した。」
「それだけで、ケガ人三名ですか。随分『過激』な注意もあった物ですね。」
「正当防衛であり、救助活動だ。それとも何か。日本人は黙って暴行されろ。
そう言いたい訳かね。それこそ憲法に定められた『基本的人権』違反です。」
「そうは、言っていません。やり過ぎ、過剰防衛は、適用されますよ。」
「負傷なら私も負っている。救助されただけ。私は無いもしていません。」
「で、殴られる為に、アクリル製の透明マスクをしていたんですか。」
「あくまでもマスクは、伝染病対策。市販品ですよ。違法品に非ず。」
「で、あの三人とは如何なる関係なのですか。」
「あの三人の内、二人は今日あったばかり。一人も二回目。関係は薄すぎます。」
「では、関係者ではないと。」
「今日、先程関係者になったばかりと言うのが『的確』で『正確』で『明確』。」
「では、関係者ではないと。」
「これから、関係者になる事可能成り。が、その為には、全員を解放し、別途会合する必要があります。理解できましたね。同じ質問を繰り返すだけのオウムヤロウ。」
ようやく捜査官の額に青筋が浮かんだ事を見逃さなかった。
そこに、乱暴なノックの音が、室内に充満し、やや乱暴に扉が開いた。
「君達、今すぐこの部屋から出ていきなさい。」
「しかし、今は取り調べの際中です。」
「私を誰と心得る! 君達の昇進がかかっている。そう心得よ。」
室内は、私と警視副総監だけになった。そして、扉が閉じる音が室内に充満。
* * *
「困りますな。こういう事をされると。」
「ん? 『こういう事』とは、『騒音防止条例違反者に注意する事』ですか。」
「あなたは、善意でやっているのかもしれませんが、こちらは残業超過です。
警視総監閣下は、胃潰瘍が悪化する始末です。総統閣下。」
「陛下が、治療費以上の報酬を支払っています。文句を言われる筋合無し。」
「署長には、話を通しておきました。今すぐ自宅までお送り致します。
本日は。それでよろしゅうございますよね。総統閣下。」
「あの三人と同時以降でなければ、出ていきません。」
「勿論、そちらも話を通しておきました。」
「では、皆さんに挨拶します。ここに案内して下さい。」
「…………分かりました。少々お待ちを。」
本当に、暫くして入室したシローさん、しんいち君、ハナ君達だった。
「大丈夫ですか。」
「心配ない。連中のヘナチョコパンチで、かすり傷を負っただけさ。」
「よかった。バラバラの部屋に連れていかれたので、心配しました。」
「では、問題も解決したようですし、帰りましょう。」
こうして、警察署を後にした四名だった。
念の為、建物を出た後、ハナ君からデジカメを受け取った。
帰る場所が異なる人毎に、別々のパトカーでに乗り込んでの帰宅だった。
* * *
こうして、私専用のパトカーに乗り込んで、扉が閉まった直後だった。
「先程も申しましたが、困りますな。こういう事をされると。総統閣下、」
「では、外国人犯罪者を『不起訴処分』にする事を看過せよと言うのですね。」
「ですが、外国人犯罪者の母国語を扱える裁判官が、不足しています。総統閣下。」
「存じています。ですから外国人犯罪は、裁判不要と規定しました。
即刻処罰可能です。ご存じないのですか。」
「勿論、新憲法規定も理解しております。ですが、人権侵害に対する忌避感。これこそが、重要なのです。外国人だからと言って差別があってはならないのです。総統閣下。」
「いいえ。外国人ではありません。犯罪者です。その点、重要視して下さい。」
「……分かりました。では、『こういう事』はやめて頂けますね。総統閣下。」
「諸君らが、運転免許申請と犯罪者の人種差別を完全消去できた暁には。」
「……分かりました。では、『こういう事』はやめて頂けますね。総統閣下。」
「諸君らが、運転免許申請と犯罪者の人種差別を完全消去できた暁には。
同じことを言うのは、二回目だ。警視副総監。」
「時に伺います。法被に書かれた『KKK』とは如何なる意味ですか。総統閣下。」
「ん? 『クルド人、この野郎、この野郎団』ですよ。警視副総監。」
「……分かりました。」
「それで、宜しい。警視副総監。」
結局その日は、家路についた。
* * *
「おおい、メールが届いたぞ。近況報告だ。」
「画像が張り付けられているっすね。……映っているのは新聞?」
「よく見ろ、今日の日付だ。つまり、無事だと言う意味だ・」
「なるヘソ……。で、こっちの動画は?」
「前回の立ち回り動画だ。」
「……あぁ……あの人に言われて撮影した奴っす。カメラは返したっす・」
「成程、この動画を基に、『クルド人、この野郎、この野郎活動を広げて欲しい。』
成程、あの人らしい。自分が殴られて怪我したのに、川口市民の事を気に掛ける。」
「随分、ご立派な話っすね。」
「シンイチ君には、俺からメール転送しておいた。俺は、この動画を編集して。ネットにアップしておくさ。川口市民が、『KKK』団の活動に賛同して欲しいだな。」
「そうっすね。来る怒人も日本に来るんだから、日本のルールに従って欲しいっす。」
「まったくだ。」
<END>