常識ない男と婚約解消しました。今はとても幸せよ。
実際に、こんなタイプの男いました。最初の勤め先で。
職場の先輩でしたかね。
ケチでバレンタインデーの義理チョコのお返しも、そいつだけはしてこない。
他にもいろいろと。
仕事も押し付けられて、大変だったです。
マリー・エメルド伯爵令嬢には、婚約者のフィリップ・カイド伯爵令息がいる。父親同士が仲が良くて、同い年の二人は先日婚約を結んだ。歳は共に17歳。
フィリップは金の髪に青い瞳のそれはもう美しい男性で、一目見てマリーは好きになったのだ。
実際に付き合ってみて、マリーは一気に気持ちが冷めていくのが解った。
フィリップはともかく、酷い男で。
マリーの家に婿入りすることになっているので、お茶会はエメルド伯爵家でやる事に。
しかし、手土産一つ持って来る訳でもなく。出された菓子を黙々と食べる。
紅茶を堪能して、
「楽しかった。また、菓子と紅茶を堪能させておくれ」
話題はどうしたの?婚約者ではないの?何で食べているだけ?
疑問だった。
父親同士が友達だとはいえ、あまりフィリップの事を今まで知らなかった。
何だか、一気に好きになった気持ちが冷めていく。
たまには街でデートという話になった。
「今日のお昼は君のおごりだよね。楽しみだな」
え?普通、男性がおごるのではなくて?いかに婿入りだとはいえ、変でしょう??
デートプランもまるで考えていないらしく。
「どこへ行こうか。君が考えてよ。ああ、私は金がないから、君が全部だしてね」
何でそんなに貧乏なの???お父様、どういう付き合いをしているのかしらっ?
結局、マリーはフィリップと共に街へ行き、貴族御用達のアクセサリーショップへ行って、金がないというものだから、自分の買い物に付き合って貰おうと思ったのだが。
「この腕輪、素敵だな。デートの記念に買ってくれないか?」
「え?デートの記念?」
「そうだよ。デートの記念にこの腕輪欲しいな」
おねだりしてくる始末。
仕方がないから買ってやると、
「有難う。大事にするよ」
と、嬉しそうに言われると悪い気はしないけれども。
次は美術館に行けば、絵を見た後に売っていた画家の絵画集を。
「私はこれが欲しい。今日の記念に買って貰ってかまわないか?」
「え?し、仕方がないわね」
ちょっと何でこの人、私に強請ってくるの???
仕方がないから買ってやる。
お昼になったので、貴族御用達の店に行き、共に食事をした。
店で一番豪華な食事をフィリップは注文して。
「やはり美味しい物を食べないとね。支払いはよろしく」
えええ?こちらが支払うんだったら少しは遠慮してよ。
脳内で叫びっぱなしだった。
二度と彼とデートしたくない。
心に強く誓った。
帰り際も、迎えの馬車に乗る前に、フィリップは、
「デートの思い出に、薔薇の花を買ってよ。母上にあげるんだ」
お土産も買わなくてはいけないの???
色々と頭がクラクラして、その場に倒れそうになるが、踏ん張って。
「そうですわね。お義母様にお土産は必要ですわ」
薔薇の花と、何故かケーキまで買わされて、迎えの馬車でフィリップと別れたら、凄くほっとした。マジでほっとした。
家に帰った後、父であるエメルド伯爵に詰め寄った。
「この婚約、解消して下さいませ。いかにうちに婿に来るとは言え、全てお金はこちら持ちのデート。そんなにお金がないんですの?」
エメルド伯爵である父は、
「いや、そんな事はないはずだが。普通に領地経営も上手くいっているし、カイド伯爵とは学園時代に仲良くてな。互いに子が産まれたら結婚させようって誓ったんだ」
「誓わなくてもよろしくてよ。ともかく、彼は嫌ですっ。婚約解消してっーー」
本当に嫌だった。
何であんなにお金がないの???
父は渋々、互いの性格が合わなかったということで婚約を解消してくれた。
婿入りの相手を探さなくてはならない。
父が必死に探してくれて、とんでもないフィリップ事件から、一月後、新しい婚約者が決まった。
バルト・ブルテルク伯爵子息は、マリーと同い年。
黒髪でそれ程、美男ではないが、マリーをとても気遣ってくれた。
「デートプランは私が立てましょう。お金は全てこちらが支払います。当然でしょう?私は男ですから。君を楽しませる為に頑張りますよ」
そう言ってくれた。
普通、そうよね。周りの友達達の婚約者もこんな感じよね。
彼とのデートは心地よく、手を繋いで、共に丘に沈む夕日を見た時はドキドキした。
バルトは、
「初デートの思い出に、こっそり首飾りを買っておいたんですよ」
そう言って、星の宝石のヘッドがついた首飾りをプレゼントしてくれた。
夜空に輝く一番星みたいに綺麗な首飾り。
素敵な初デートは一生の思い出となった。
バルトはエメルド伯爵家に足繁く通い、父にも気に入られて、結婚も来年に控え、幸せな日々。
顔を会わせるたびにバルトの事が好きなっていく。
バルトもマリーに愛を囁いてくれて。毎日が幸せで。
そんな中、来客が訪れた。
フィリップである。
仕方なく客間に通せば、フィリップは喚いた。
「私のような美しい男と婚約を解消するだなんて、あれから別の令嬢と婚約をしたが、解消された。何故だ?何でなんだ?」
だから、はっきり言ってやった。
「貴方、男でしょう?全て、お金をわたくしに出させて、お土産まで強請って、常識ないなって思ったのよ。もっとこの王国の男性は紳士的よ。わたくしの婚約者、バルト様だってとても紳士的。貴方と婚約解消出来て良かったわ。さっさと帰って頂戴」
「私は美しい。だから、私にお金を出すのは当然だ」
扉を開けて、バルトが入って来た。
ちらりとフィリップを見て一言。
「私の愛しい婚約者に何の用です?」
マリーは一言。
「カイド伯爵令息のご用は済んだわ」
「そうか」
バルトはマリーの隣に座って腰を抱き寄せてきた。
マリーは赤面する。
バルトはちらりとフィリップを見つめ、
「用がないなら帰って下さい。私は婚約者とこれから濃厚な時間を過ごすので」
フィリップはこちらを睨みつけて、部屋を出て行った。
バルトは肩を竦めて、
「あんな常識知らずと婚約を結びたがる家はないだろうな」
「そうよね。本当に酷い男だったわ」
あの男と縁が切れて、愛しいバルトが傍にいることで、マリーは幸せを感じた。
マリーは翌年、バルトと結婚し、バルトはエメルド伯爵を支え、二人の間には、すぐに子が出来て幸せに暮らした。
フィリップは、行方不明になったと、人から聞いたが、あまりその名は思い出したくなかったので、気にしない事にした。
マリーは、バルトと可愛い子供達と共に幸せに暮らしたという。
とある変…辺境騎士団
「今回はドケチな美男の屑」
「愛の教育を」
「触手を駆使して」
「三日三晩だっ」