第四走 未来への出走
「色々見て回ってきたが、ひとまず次で最後だ。そこで昼飯にしよう」
「えっ、もう終わりなんですか?」
終点を宣言したルーキに、素直に寂しそうな顔を見せてくれるサン。一応、一日歩き回るのは疲れるだろうと思ってのショートプランだったのだが、余計な心配だったようだ。
「午後からは商店街をぶらぶらしようと思ってな。サンの好きな店に寄っていいから、RTAはそこでタイマーストップだ」
「あっ……そういうことだったんですね。わかりました」
サンは嬉しそうににっこり笑った。
「にしても、あんだけガバったわりに昼には間に合わせてくるあたり、辻褄合わせは相変わらず上手いっすねえ兄さんは」
サクラから褒められてるんだか貶されてるんだかよくわからないお言葉を頂きつつ、ルーキ一行が最後に向かうのはもちろんあのお店。
途中で門を一つくぐったところで、サンが申し訳なさそうに袖をくいと引っ張ってきた。
「あの、ルーキさん……。なんか今の門に『この門をくぐる者、汝一切の幸運を捨てよ』って書いてあったんですけど」
「ああ。あれは一門の大事な教えだ」
「本当にこの先に進んで大丈夫なんですか?」
「一般の人に被害はないよ……多分」
やがて見えてくる。食堂と酒場を兼ねた、ルタではごくありふれた飲食店。しかし、街に住む者なら誰もが知っている。ここが唯一あの恐るべき集団を封印しておける祠だと。
〈アリスが作ったブラウニー亭〉。その名前は、童話に出てくるアリスという少女が作ったブラウニーがおいしかったという小学生並の感想に由来しているという。
「おはようございまーす」
ちんちん……とドアに取り付けられたベルを鳴らしながら、ルーキは店内へと足を踏み入れた。ちょうどお昼時――扉の前からすでに漏れていた内部の騒音が、雪崩のように外へと溢れ出てくる。
テーブルを埋めているのは、いずれも古強者の気配を漂わせる人々。
レイ一門――。ルタ最強の走者の一人に数えられるレイ親父を慕う、一癖も二癖もある走者たちだ。
本日はRTAも試走もないようで、大人のくせに昼間から大ジョッキを片手に、ウノやらバトルドームやらでクッソ激烈に盛り上がっている。
「いらっしゃーい。待ってたわよ。ささ、予約席へどうぞ」
と、こちらを見つけて飛んできてくれたのは、この店を切り盛りする受付嬢のお姉さんだった。見た目の通り面倒見のいいお姉さんで、店にたまに持ち込まれるレイ一門への直接依頼も受け付けていることから、受付嬢の愛称が定着している。
「この店、予約なんてできたんですね」
今になって初めて知った顔で、席に着くリズが言った。
卓上にちょこんと置かれた、「新人君予約」の文字が書かれた旗を指でつつく。
「テーブル一つくらいならね。親父さんたちも、サンちゃんの席だって言ったら渋々引っ込んだわ。新人君も時間通りに店に来られてエライゾ~」
「あの、そのことなんですけど、道中で委員長とマギリカが増えちゃって……あれ、でもこのテーブル、椅子はちゃんと全員分あるな……?」
予約をした時は四人分だったはずだが、テーブルもしっかり大きなものになっている。
「ああ、新人君なら途中で二人くらい引っかけてくると思ってたから」
「さすがっすねえ」
「あんのじょう 廿_廿」
さらっとそう言ってのけ、受付嬢はサクラとニーナナからの称賛を得た。何かちょっと気になる言い回しではあったが……確かにすごい有能だ。予測不能のレイ一門を相手に長年商売をやってるだけある。
「それじゃあ、もうじき〈アリスが作ったブラウニー亭〉特製スペシャルお好みメニューができるから、待っててね。」
「すごい、何が来るんでしょう」
「へへ……期待していいぜ。ここの料理はクッキー以外は激ウマだからな」
わくわくした様子のサンにそう言いつつ、ルーキは内心ちょっとだけ祈る気持ちになっていた。
実はスペシャルお好みメニューなんて料理、この店にはない。
今回の食事、当初サンには自分でメニューを選んでもらうつもりだった。が、それを受付嬢に伝えたら、「サプライズが微粒子レベルでも存在しない。そんなんじゃ甘いわ」とダメ出しされ、最終的に彼女に一任することになってしまったのだ。
一応味覚は真っ当なので、妙な珍味を出して来たりはしないだろうが……。
「ところでサン、あっちにいる人たち、わかるか?」
一抹の不安を押しやり、料理が到着するまでの間、ルーキは一門を紹介することにした。
「はい。あの人たちがレイ一門ですね」
出会ったのは例によって王都の帰り道。あの時はレイ一門総出で王都に討ち入りをかけていたから、声はかけずとも一応面識はあることになっている。
「白い髪で緑の着流しの人が、レイ親父だ」
真っ先に紹介するのはやはりこの人、レイ親父。一門の頭領にして我らが父。
一見するとサクラよりも幼い風貌で、人によっては、あるいはもしかすると、凛々しく美しい少女に見えてしまうかもしれない。しかし性別は公称で不明。しかも〈獣の時代〉から〈走者の時代〉まで生きる大英雄なので、決して見た目通りの年齢ではない。
彼を彩る言葉は無限にある。『ガバの王』『魔王に初手奇襲を選ばせる男』『渡っただけで世界中の橋は落ちる』『レベリングに飽きてやめた』『チャートは忘れるもの』……。
「へえっ、すごい人なんですね……」
「ああ。あの人がいなきゃ俺は走者になってなかった」
ルーキは尊敬を込めて親父を見つめ、話題を次へと移した。
「親父とウノで盛り上がってる赤い髪の人が、サグルマ兄貴だ。レイ一門の兄貴分と言っていい」
隻眼、赤い総髪のサムライ。精強な若武者といった外貌だが、どんな危機にも動じない最古参の風格と落ち着きを持つ。浮き草が寄り集まってできたような一門の中にあって、彼のように統率力と責任感がある人材は貴重だ。
他には一門最年少で、ダンジョンで出口に向かって真っ先に走り出して敵に奇襲される癖のあるタムラー兄貴。過去のRTAでクッソ哀れなガバをし、RTA新記録を無効化されたショックから、今でも時々FXで有り金溶かした顔になってしまうフルメルト兄貴など、経験豊富な実力者たちが続く。
それを聞いたサンが、最後に一言。
「皆さんよく生きてますね……」
「それ一門が一番言われてるから……」
と、ここで、まるで説明が終わるタイミングを見計らったかのように、受付嬢が料理を運んできた。
「はいみんな、お待たせー!」
サンの前にどどんと置かれたのは、ミートソースとトロトロのチーズがかけられたラザニアだった。
「わあっ、おいしそう! これ、もらっちゃっていいんですか?」
彼女が目を煌めかせるのを確かめた受付嬢が、こちらにドヤァ……と得意げな顔を飛ばしてくる。
後で聞いたところによると、どうやら彼女、軍医さんを通してサンの情報はちょこちょこ仕入れていたらしい。無論、食事の好みも。
すでに下調べは十分。勝つことが決まってから走り出すのは走者の特権。今日一番のサンの笑顔を引き出してみせた彼女に、ルーキはただただ感服するしかなかった。
他のメンバーへも同じ料理が行き届き、いざ実食。
サンがナイフを入れた途端、ラザニアがパリパリと小気味よい音を立てた。それを聞き、サクラとサンが目の色を変える。あのパリパリ音は、彼女たちが恋してやまない至高のおやつ、ビエネッタとよく似ているのだ。たちまちナイフを握り、自分たちのラザニアをまずは音から楽しみだす。
「すごくおいしいです。こんなの食べたことありません」
感激した様子でラザニアを食べ進めるサンを、皆がほっこりと見守った。
「それで、どうだったルタは」
「はいっ、とても楽しかったです。どこを見ても新鮮で……当たり前ですけど。特に学校はすごく綺麗でした。制服もすごく可愛くて……もしあんなのが着られたら、すごく嬉しいなって思います」
目を輝かせて答えるサンは、どこまでも可愛らしい普通の女の子だった。そしてそれがルーキたちをますます笑顔にさせた。
生まれた時から孤独と自責に苛まれ続けた少女が、今こうして人並みの幸福を味わっている。ルーキが王都にまで殴り込みをかけたのは、この結末のためでもあった。
そんな風に楽しく食事を済ませ、午後の部へと期待を膨らませるまったりした時間。
突然、店に小さな騒乱が起こった。
バアン! と扉が開かれ、鋭い男声が飛ぶ。
「警察だ!」
瞬間、バカ騒ぎの店内が凍りつく。
そして客のほぼ全体を占める一門全員が、ルーキを指さした。
『お巡りさんあいつです!』
「ちょっと兄貴たちぃ!?」
「うるせえ! おまえが何かやったに違いねえんだ!」
「今度はどこで何をやらかした!? 研究所か!? 女子校か!? 素直に白状しろ!」
「有力な容疑者を提供したんだからオレたちのガバは大目に見てもらえますよね!? ね!?」
スネに傷持つ一門特有の、いつもの保身ムーブ。しかし、鋭く店に踏み込んできたRTA警官――さっき会ったばかりのケイブ警部補は、店内を確認するようにゆっくり見回すや、後ろを振り返って誰かを招き入れた。
そうして入ってきたのは――。
「あれっ、おじさん!?」
マギリカが驚きのあまり腰を浮かせる。
ケイブに会釈をして音もなく店の中に入ってきたのは、猥雑な下町とは不釣り合いな、黒一色の高級インバネスコートに身を包んだ男だった。闇夜そのものが来訪してきたと錯覚させる静謐な佇まいは、マギリカの叔父にあたるサラーソンに違いない。
珍客だ。そして彼が単独で行動しているとは考えにくい。
果たして、彼が遮る陰からもう一人の人物が進み出た。
流れるような金髪。整った顔の輪郭に、優美な面差し。
「ギルコーリオ王子……!」
「えっ、王子様!?」
突然の大物来店にルーキとサン、いや店中の誰もが瞠目していると、二人を伴いこちらにやって来たケイブが特に気負った様子もなく事情を説明した。
「王子が人目を気にせず、かつ安全に食事するにはこの店が一番だからな。ご案内した」
「えっ、じゃあさっきの警察だ! って叫んでたのは……」
「ここに来るとつい癖でな」
「迷惑な職業病っすねえ」
サクラが呆れた顔で言葉を挟み込む。
それはそれとして、ギルコーリオ第四王子だ。数日前、王都の騒動で主役とも言える働きを示した人物。護衛にオルカエッジ一族のメンバーを連れていることからも本物に違いない――が。
「諸君、壮健で羨ましい限りだ。数日ぶりだが、また会えて嬉しいぞ」
「やあマギリカ、みんな。ごきげんよう」
王子とサラーソンから挨拶され、ルーキたちは戸惑いながらもそれに応じる。
「ど、どうしたんだよ……王子様」
ルーキが心配して、壁際に積んである予備の椅子を差し出すと、彼は「すまんな」の一言の後、沈むように腰かけた。前見た時はなかったどぎついクマを拵えた目を細くし、苦く笑う。
「あれからハチャメチャが押し寄せてきていてな……。今日も辺境で有力者との会合だ。超絶仕事人間の叔父から仕事を奪ったのだから、こうなることは覚悟していたんだが……想像以上に王都はあの人に頼り切りだったらしい」
ギルコーリオの言う叔父とは、王都の裏の王〈弟王〉とまで呼ばれていたアルグラインズ・ケルム・フォボスという男のことだ。
ギルコーリオは数日前、王都の会議場でアルグラインズとの死闘とも呼べるような激しい討議の末、これを撃破。彼の権力基盤を受け継ぎ、辺境と王都の新たな道を切り開いた。
世が世なら、玉座にふんぞり返って優雅に団扇で仰がれていてもおかしくない身だが……。
「あれから叔父の下にぶら下がっていた議員連中が、ドミノ倒しのようにこちらに鞍替えしてきてな。腹に一物ある連中だから、素性を確かめるだけでも一苦労だ」
「寄らば大樹の陰っすねえ。いやこの場合は勝てば官軍、勝った方が正義っすか?」
サクラが皮肉っぽく口を挟むと、ギルコーリオは意外なほど真摯な声で、
「勝った方が正義を背負わんといかんのだ」
と彼女の言葉を少し訂正した。気を利かせて受付嬢が運んできたコップの水を受け取り、一息に飲み干すと、
「本当にそうかは別として、指導者の判断は正しいものとして執行される。指導者が邪悪であれば、民もまたそれを真似て邪な行いに走ることにだろう。そんな共同体は長くはもたん。だから決定権を握った者は、民が生きるための善い手本を見せる義務があるのだ」
ルーキは驚いた。軽口を叩いたサクラもだろう。
初めて出会った時、彼はクッソ高慢な不良貴族だった。それが更生して辺境視察官となり、この前の出来事を通じてさらに一皮剥けたのかもしれない。
「……っと、すまんな。小さなレディとの食事中に堅苦しい話を……」
ここでギルコーリオは、ルーキの隣に座っているのが単なる街の少女ではないことに気づいたらしい。
「君は……サンか?」
「! はい。あの……王子様がわたしのことを知ってるんですか?」
純粋な目に問われ、ギルコーリオは心苦しいような微妙な笑みを返した。
「ああ。会ったことはないがよく知っている。ルタでの生活に不便はないか?」
「はい。皆さんとてもよくしてくれますし、今日もこうしてルーキさんに街の案内をしてもらっているところです。あっ、午後からはお店も見に行くって……」
「そうか。それは良かった。何か困ったことがあったら私が味方になる。遠慮せずに言ってくれ」
王子なる者にそこまで言われてサンは戸惑いを露わにし、やがておずおずと質問した。
「あのう、わたしって、もしかしてお姫様か何かだったんですか?」
ギルコーリオは初めて、吹き出すように笑った。
「それ以上だ。王家の宝剣を自由にブン回せるくらいには偉かった」
それから彼は、サラーソンが会話の裏で注文していた山のようなサンドイッチを口に詰め込み、ようやく生者の顔を取り戻した。
「まともに飯を食ったのは久しぶりな気がするな。常に書類を見ながら摘まんでいたから……間違ってインク壺をかじりかけたこともある」
「一門並のガバだな……」
「圧倒的に人手が足りん。必死にかき集めてはいるが……辺境と王都を正しく連結させるにはもっと多くの人材がいる。どうだルーキ。おまえ、王都に来て兵にRTAを教える気はないか?」
「ないよ。何だよ突然」
いきなりの提案にルーキは呆れ気味に断った。
「辺境の巡回を走者に任せ切りでは、王都と開拓地の距離感は変わらん。普段から僻地を歩ける部隊が必要なのだ」
以前のような敵対的な越境ではない。純粋に、王都の人間が辺境を知るための第一歩だとルーキは解釈した。が、やはり今レイ一門を離れる気は起きない。
「わたしも――」
と、そこに鈴のように可愛らしく、しかし至って真面目に声が吹き込まれた。
「何か手伝えることはありませんか」
「……サン!」
ルーキは驚いた。サンは真っ直ぐにギルコーリオ王子を見ている。冗談で話に入ってきた様子はない。
「君が……また王都に関わろうというのか?」
目まいにも似た仕草をしながら、ギルコーリオは聞き直した。
「はい。王子様とルーキさんの話を聞いていて、急に思ったんです。誰かの役に立ちたい。それから、どうしてこう思ったのかわからないんですけど……誰かを恨むよりも誰かに感謝されて生きたいって……」
『……!!』
ギルコーリオが痛烈に顔をしかめたのと同じ感情を、恐らくルーキも共有していた。
これはきっと、以前のサンの叫びだ。
誰も恨みたくなかった。自分も含めて憎みたくなかった。誰かから感謝されて誇らしく生きたかった。……でもできなかった。
人に恨まれる生き方より、人を恨む人生の方がつらい、と人は言う。
ことあるごとにかつての怒りや憎しみを思い出して、幸せを享受できない。そしてそんな自分から逃げることもできない。それは確かにつらい生き方だろう。
しかし、だからと言って今、サンのこの願いのかなえるわけには――。
「そのためには」
まだ戸惑いが勝る空気を、落ち着いて理知的な声が一本通り抜けた。
誰もが目を向けた先にいるのは、静かに背筋を伸ばすリズだ。
「サンはたくさん勉強しないといけません」
「いいんちょさん……」
「王子を手伝うと一言で言っても、彼のまわりにいるのは、その分野で並々ならぬ努力を続けてきたプロフェッショナルばかりです。手伝うにもそれなりの技能がいる。あなたはまだ、それらを身に着けていない」
「はい……」
サンは理解を示しつつも、納得仕切れない顔で下を向いた。熱意はある。渇望するような欲求もきっとあるのだろう。この気持ちをどう処理すればいい……ルーキにはそんな彼女の内面が痛いほどわかる。
それを再び上向かせたのは、ギルコーリオ当人からの一言。
「私からもそう願う」
「え?」
「近い将来、たくさんの知識を身に着けた君に事業の手助けを願いたい。今はまだ、ルタでたくさんの人やものに触れ、知性と感性を磨いてくれ。君たちが世界の主軸になる時代が絶対に来る。それまで、私が必ずもたせてみせる」
今この瞬間ではない未来を見据える眼差しで、彼はサンを見つめた。この世界は続いていく。もちろんサンも続いていく。時間をかけろ。それは悪いことではない。彼の瞳はそう言っていた。
「……はい! たくさん、勉強します。それで、人の役に立てる人になります!」
きっと、目標ができた。
すべてを失い0から始めなければいけないサン。でも、どこに向かえばいいのかを今、自分の中に定めた。目標さえ決まっていればチャートは自由自在だ。走者がそうであるように最速で突っ走ればいい。
ルーキはふと、ニーナナの口元が静かに笑っているのを見た。
戦闘を捨てたソリッドニンフが、何を目指して生きていくのか。早熟な彼女はそういう心配をしていたのかもしれない。
(見つけたな)
学校でたっぷりと知識を吸収し、未来の辺境を支える担い手となる。
これ以上に立派な目標があるだろうか。
ユリノワールの教師たちも、この志に応えて張り切って力を貸してくれることだろう。
本日のRTA、ここでタイマーストップ。良い走だった。走り終えた後、タイムではない何かを手に入れさせてくれる。RTAはいつもそうだ。
「あっ、そうだ(唐突)」
そのまま一つの幕が下りていこうとした、その時。
受付嬢が急に空気を読まない一言を発した。
「新人君に、RTA訓練学校から依頼が来てたのよ。短期の臨時講師をやってくれって」
「俺に先生を……?」
一同がざわめく。
受付嬢が手渡してきた書類には、確かにその旨が記載されている。
「それ、わたしにも来てました」と委員長が言う。ガチ勢の卵。世代最強と呼び声も高い彼女にならそうした話も来るのかもしれないが――。
「まあ、試走が忙しいのでわたしは断る予定で――」
「俺……やってみようかな」
ルーキは小さくつぶやいた。
唖然とする周囲。
依頼書には次代の走者のため、とある。
未来の担い手。サンを見ていて、ふとそのことを思ったのだった。
クッソ長くなりましたが、イントロダクション&サンの甘やかし回&前シリーズの最終回の後日談、これにて終了です。
次回、ルーキ、先生に初挑戦!
シルケール/ハイロゥ「は?」