表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
インパーフェクト・ピース  作者: まんぜるら
第一章 『 KILL 』
6/49

【1-6】飢餓の少女

 翌朝のマカローニも薄暗かった。太陽が恋しい。窓から差し込む日の光も感じないので、起きたという感じがしなかった。


 宿場を出て、あてもなく歩く。

 昨日のサルーンのマスターによれば、アカサカ・コゴロウはストームに殺されてしまったらしい。0.25は、死んだコゴロウのことを知りたかった。本当にストームに殺されたのか、なぜ殺されたのか。


 ――彼がどんな風に生きてきたのか。


 まずは、マスターにもう一度話を聞くことにした。

 昨日は途中でシシーニョの騒ぎに邪魔されて、詳しい話を聞けなかったのだ。あわよくば、昨日の案内人にも、もう一度会いたい。彼女はストームについて、何か知っている様子だったから。

 しかし、彼女は素直に答えてくれなさそうだ。


 朝から酒場まで赴いたのだが、店の入り口付近にかけている看板はあたりまえのごとくCLOSEだった。スイングドアには鍵がかかっている。窓から店内の様子を覗き込んでみたが、人の姿はなかった。


 しかし、ドアの横に誰かが倒れていた。近づいてそっと体をゆする。おさげヘアーの少女だ。薄汚れた質素なシャツを着ている。紺色のズボンには、ほつれが目立つ。年齢は十代後半ぐらいか。


「もしもし、大丈夫ですかい?」

「……あ、あぁ」


 今にも死にそうな声で、彼女はうなった。


「そんなところで寝ていたら、風邪をひいちまう。ちゃんと家で寝なさいな」

「……ここが、家さ!」


 まだ寝ぼけているらしい。その様子に苦笑いを浮かべる。


「困っちまいますね。マスターもいないみたいですし」


 倒れ伏していた少女は、0.25の脚をつかんだ。彼女の腹の虫が、悲鳴のように鳴っている。


「飯を……飯を……」


 物乞いか。昨日に聞いた案内人の話によると、今のマカローニは、働く子どもたちも多く、低賃金での労働者が多くなっているらしい。子どもには過酷な環境だ。


「少し、待っててくだせぇ」


 0.25は近くの店を探す。パンの匂いが漂ってきたので、その店に駆け込んだ。自分の朝食の分も合わせて購入した。


 サルーンの方へ戻り、倒れている彼女へパンを与える。

 すると、彼女は起き上がって獣のように食いついた。一口で、拳二つ分の大きさのパンを平らげてしまった。あたりまえだが、食べ終わった彼女はむせていた。

 近くの井戸で水を汲んできて与えると、彼女はぐいぐいと飲んだ。


「よほど空腹だったようで。もうすぐで飢え死にしちまうとこでしたね」

「……ああ! 全くさ! あなたのおかげで助かったのさ!」


 水を飲み干すと、彼女はまぶしい笑顔を浮かべた。こんなにすぐ元気になるなら、さほど深刻な状態ではなかったようだ。


「うひっひ、元気になったようで何よりです」

「すべてあなたのおかげさ! アタイはミサ。あなたの名はなんというのさ?」

「あっしには百を超える名が――」


 いつも通りの自己紹介をすると、女の子はさらに興味を増したようだった。


「カッコいいのさ! アッシさんは、まるで救世主さんみたいさ!」


 ついさっきまで倒れていたとは思えない、明るい笑顔で彼女は笑った。


「あっしは救世主っていう柄じゃないですぜ。ところで、ちとお聞きしたいんですが、ストームについて何か知っていませんかい?」


 こんな少女がストームと関わりがあるとは思えないが、ついでに聞いておくことにした。


「……あいつは神出鬼没なのさ。三年前から、無差別に人を殺しているのさ」

「奴は悪い人だけを殺すらしいですがねぇ」

「そんなの関係ないのさ。あいつは誰だって殺す。アタイだってアッシさんだって狙われるかもしれないのさ」


 0.25も少女と同じ考えだった。

 だが、昨日の案内人はまるで確信を持ったかのように、ストームについて語っていた。彼女はストームの正体や動機を知っているのかもしれない。あるいは彼女自身がストームか……。


「ストームは、いったい何がしたいんですかねぇ?」

「殺人鬼の考えなんて検討もつかないのさ! 何にせよ、いつまでも好き勝手させないのさ!」


 彼女は元気に走り去っていった。飢餓の危機を脱してエネルギーに満ちあふれているみたいだ。


 サルーンの店内に、人の気配はない。夜にならないとマスターに会えないのかもしれない。別の場所を当たるしかなさそうだ。


「どこにいるんですかい? ストームさん……?」


 0.25はどこかにいる賞金首に問いかけた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ