【3-2】訓練
もともと少ない人数だったが、仲間はさらに減った。
マスターとミサ。そして、ヘメニスとヘメロスの双子だけだった。
彼らを見限り、0.25だけでストームを探し出した方が手っ取り早い。
しかし、それは憚られた。他の四人がジニーと同じ末路をたどるのは、どうにかして避けたいのだ。
だから、引き続きみんなに戦い方を教えることにした。せめて、彼らが自分の身を守れるようになってから去りたい。
ジニーの死から二日が経った。
今日はヘメニスとヘメロスの双子を連れて、街の外へ来ている。彼らのせいで事態はさらに悪化した。昨日、二人は街中で警察官を撃ち殺したのだ。彼らはストームが総督府や警察隊に雇われていると思っている。
身勝手な彼らの行動のおかげで、街には警察隊が徘徊している。普段はまともに機能しない警察隊も、仲間が殺されれば、火がついたように活発的になった。
警察隊に見つからないように遠回りする必要があり、街を抜け出すのも一苦労だ。
街の外には未開拓の荒野が広がっている。風にあおられて砂や回転草が飛ばされていた。この辺りならば、射撃訓練場に最適だ。
「俺の怒りはネバーストップ。ストームめ、ネバーフォーゲット!」
流れるようなリズムで言い、地団太を踏んでいるのは兄のヘメニスだ。
「兄様の言うとおりだわ! 早くストームも同じ目に遭わせてやりたい!」
妹のヘメロスもきんきんとした甲高い声を上げた。普段、二人とも工場で働いている。
双子にとっても、殺されたジニーは家族のような存在だった。ミサとジニーと双子の四人組で身を寄せ合って生きてきたらしい。
彼らは0.25に射撃訓練に付き合ってほしいと提案してきた。ストームに復讐したくてたまらないようだ。
「二人とも。下手に警察隊やストームにちょっかいをかけちゃあ、いけない。それじゃあ、敵を討てずにあんたらも殺されちまう」
0.25は念を押すように言った。
「でもさ、0.25のブラザー。早くキーリングしたくてウズウズするんだよ」
「そうよ! 今からでも総督府に乗り込みましょうよ! きっと、そこにストームはいるんだわ!」
「その通りだ、ヘメロス。今すぐ俺たちのパワーを、ストームのクソ野郎にショーイングしてやるぜぃ!」
二人には落ち着きがない。なんとか、冷静になってもらわなければ。
「怒りを制御できなきゃ、いつまでも三流のままですぜ。考えなしに敵に突っ込んでいっても、仕方がない。次はあんたらのどちらかが死ぬかもしれねぇ」
「で、でも――」
ヘメニスの言葉を、手を挙げて遮る。
「敵を討ちたいなら、あっしの言うとおりにした方がいい。もちろん、今から総督府に行ってもいい。どちらにせよ、決めるのはあんたらだ」
0.25は二人に釘をさす。彼らは黙り込んだ。
先に口を開いたのは、妹のヘメロスの方だった。
「ご、ごめんなさい、0.25さん。わたし、どうかしていたわ。強くなるまで馬鹿なことはしない。だって、兄様まで死んでしまうなんて耐えられないもの」
「ミートゥーだよ、ヘメロス。0.25のブラザー、俺たちをティーチングしてくれ、プリーズ」
ヘメニスは頭を下げる。ヘメロスも兄に倣った。
「そうですかい。じゃあ、始めましょうぜ」
0.25は彼らに立ち回り方と銃を教える。
実戦では、相手の動きを先読みし、相手よりも有利に動くことが大切だ。
聞くところによると、ストームは動きがとてつもなく速いらしい。しかも、どこからともなく嵐のように現れる。そんな相手に遅れをとらずに戦うのは、至難の業だ。0.25にとっても例外ではない。
それでも、鍛えておくに越したことはないはずだ。
双子と訓練していると、あっという間に日が暮れた。夜になると、さらに警察隊の警備が厳しくなるので、早めにサルーンまで戻った。




