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インパーフェクト・ピース  作者: まんぜるら
第二章 『 IDEAL 』
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【2-2】戦場

 リオン・キャニオン。軍事教育を受けた孤児たちで構成されている、少年兵士団のリーダーだった男だ。侵略戦争時のリオンの活躍は、メデスたちから耳にたこができるほど聞かされていた。


 だが、コゴロウは、だらだらとアジトでくつろいでいるリオンしか知らないので、ほとんど与太話だと思っていた。だから、リオンはコゴロウに自身の実力を見せつけたいらしい。


 リオンとコゴロウ、そしてシシーニョとメデスも共に、ストームに呼び出された場所まで向かっている。

 今日も相変わらずの曇りで、陰鬱な気分だ。


 歩いていると、人通りの少ない景観になってきた。集合住宅があちらこちらに建っている。

 影が差して、辺りは暗い。


「平和的に解決しましょうよ……。街中で銃撃戦なんて、そんな危ないことしなくていいですからね?」


 ビクビクと体を震わせながら、コゴロウはリオンに言う。何よりも平和が一番だ。


「何言ってんの。帝国人に好き勝手させておくわけには、いかないでしょ」


 前を向いて歩きながら、彼は言った。


「そういうことは、警察隊に任せればいいんですよ!」

「あいつらは、形だけの役立たずだよ」


 確かに、治安部隊がまともに機能しているなら、殺人鬼なんてすぐに捕まるはずだ。


「シシシ、指揮官は歩く兵器って呼ばれていたんだし。ストームごときが敵う相手じゃないんだし」


 シシーニョはクスクスと笑う。兵器が隣を歩いていると思うと、ぞっとする。


 そんな話をしていると、リオンが急に立ち止まり、近くに建っているビルを見上げた。

 次の瞬間、ホルスターからリボルバーを引き抜き、ビルに向けて撃った。


「はぁ、がっかりだよ。まさか、奇襲なんてつまらないことをする奴なんてさ」


 リオンはため息をつく。


「ひぃぃ! どうして、撃ったんですか? リオンさん!」


「気づかないわけ? ストームはあそこから俺様たちを撃ち殺そうとしていたの」


「え……?」


 古びた集合住宅の二階を、リオンは指さした。


 シシーニョとメデスも、いつの間にか銃を手に持っていた。


「ストームの奴は今ので死にましたかねぇ?」


 メデスは建物を見上げながら、リオンに尋ねた。


「いや、殺せなかったみたい……まだ生きてる」


 リオンは悔しそうに爪を噛む。


「ってことは、ストームが――殺人鬼がまだ近くにいるってことですか!?」


 コゴロウが嘆いていると、リオンに背中をつかまれ、後ろに引っ張られる。

 銃声が聞こえた。コゴロウがさっきまで立っていた地面に、銃弾が当たった。


「ひぇぇぇ! 早く逃げましょう! 急いで帰りましょう!」


 コゴロウはリオンにしがみつく。

 リオンはうっとうしいと言わんばかりに、コゴロウを突き放した。


「あの程度の奴に、俺様が逃げるわけないでしょ? 死なないように、自分の命は自分で守ってね」

「ひどすぎる!」


 コゴロウは銃を握ったことすらない。弾よけすらできないだろう。

 

 みんな散らばって、それぞれ撃たれないように、建物の陰に身を隠した。コゴロウはとりあえずリオンの方について行く。

 リオンは建物の陰から、顔を出して銃を撃っている。


「ちっ、遠くから撃ってきてるのに、狙いだけは正確みたい」


 リオンは舌打ちした。

 ストームはとても視力がいいのだろう。屋根の上から撃ってきているようだ。


「これから、どうするんです?」

「はぁ。次に撃ってきたら、一気に距離をつめて終わらせる」


 残り一丁のリボルバーを、リオンは引き抜いた。両手に一丁ずつ持つ。この男、二丁も使うつもりだ。


「危ないですよ! あきらめて帰った方が……」


 コゴロウの言葉を最後まで待たずに、リオンは飛び出した。リボルバーの音が聞こえてくる。コゴロウは建物の陰から顔を出せず、耳をふさいでビクビクと震えていた。


(頼むから早く終わってくれ!)


 銃声が鳴り止まない。まるで戦争だ。


 そんなことを思っていると、ドスの利いた声が聞こえてきた。


「警察隊ですわよ! 坊やたち、今すぐ投降してくださいまし!」


 リオンたちはお尋ね者なので、捕まるわけにはいかない。

 コゴロウも捕まれば、仲間だと思われて逮捕されてしまうだろう。この国の自治組織である警察隊は優秀ではないが、反徒には容赦しないと噂だ。逃げるなら、銃声が止んでいる今しかない。

 

 コゴロウはすくんでいる足を奮い立たせ、建物の陰から飛び出し、全速力で走る。


「ちょっと、そこの坊や! お待ちなさい!」


 後ろから、気持ち悪い声が聞こえてくる。


(なんなんだ、あいつ! ホントに警察官かよ!)


 後ろを振り返らず、全速力で走った。こんなに走ったのは、子どもの頃以来だった。

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