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再会

 起きて時間を確認すると、10時だった。と言っても学校の無い土曜日にしては早く起きた方だ。

 今日は方橋に会いに行くことにしよう。

 自分の出身の話になった時に教えてもらった詳細を頼りに三つ隣の県までテレポートを使った。テレポートは別の空間同士を繋ぎ合わせて距離を無くすことで、長距離の移動が可能になる。自分を一度分解する転移とはまた違う。

 方橋が通っていると言っていた大学の校門で待っていると

「日野谷?」と声が聞こえたので振り向くと、清潔感のあるイケメンが立っていた。

「方橋?」

「そうそう方橋。え、マジで日野谷かっこいいな、なんか俳優とかやれるんじゃないの?」

 異世界での方橋は、鵺のような見た目をしていて色々な動物の特徴が混ざって一つの個体となっていた、脊椎のつき方的に直立ができず、十二足歩行を余儀なくされており、直立三足歩行ができていた俺のことをよく羨ましがっていたし、手が無いので、俺の十五本の手を見ながら「二本くれない?」と言ったこともある。だが、様々な生物の能力を使うことができた。今回も件という妖怪の能力を使ったのだろう。俺自身もこの能力をあてになんの連絡もなしに校門前に行ったが、元の姿になっても件の能力を使えるのだと少し驚いた。

「そういう方橋こそ」

「いや、絶対お前とは違う。お前のは他校でも噂になるレベルだ」

「うーん、でもそういう経験無いけどね」

「そうか、あり得るのかそんなこと、いや、でも何かあるのか?」

 方橋がぶつぶつ言い出したので、俺は方橋を訪ねた理由を切り出した。

「生き神がこっちに来てる可能性がある、ねぇ。そんな訳ないとも言い切れないのがな、またなんとも難しいとこだな、現に一応俺達がここに存在しているわけだし」

「だよなぁ、あっちの世界の生き神は全部殺したんだよな?」

「すなしろさまの能力的には、うん。ただなぁ、消えるやついただろ、なんか消えたり出てきたりして面倒だった奴」

「ああ、身体が透明になる度に俺達の記憶からも消える奴な、件の力が無ければ終わってたなあれ」

「あいつはさ、姿を表すと同時にあいつの今までの記憶もしっかり戻ってきたけど、あいつの上位互換みたいな奴がいたらわからん。少し歩くか」

 そう言って、方橋が大学の中に入っていったので、俺はビックリした。

「どうした? 来ないの? 大学の中にカフェテリアいるからそこでゆっくりしようよ」

「大学って勝手に入っていいんだ」

 俺がそう言うと、方橋は優しく笑った。

「あー、なんか良かった。日野谷が普通の感じで」

「良かったってなんだよ」

「いやさ、あっちの世界でのお前って正直怖かったのよ。敵国の生き神から『阿修羅』って呼ばれてさ、戦闘力だけなら全部の生き神の中で群を抜いてた。お前の年齢聞いた時、びっくりしたんだぜ? 俺と六個差、それなのに感情を見せないで作戦を成功させて。今ならわかるよ、日野谷は大人になり過ぎてたんだな」

 雑に頭をワシャワシャされて、方橋のことを睨みつけると方橋は「おー、怖、やっぱ怖いわー」と戯けた。

 俺は方橋には頭が上がらない。何度も命も心も救ってくれた。俺のことを否定せず、優しく、ただ受け止めてくれた。

「そういやさぁ、あっ二人です。能力って試した?ここは俺が奢るは、未成年を誘ってんだから当たり前だけど」

「ありがとう。いや、こっちに来てから何が追加されたのかはわかんないけど、身体能力は確実に上がってる」

「俺さ、一個もうわかった」

「本当? どんなの?」

「変化」

「そう言えば逆に持ってなかったな、その能力、他の訳分からんマイナー妖怪みたいなのの能力ばっか使えてこれ使えないのよく考えたら意味わからないな。化け狸とか妖狐とかあっただろ」

「本当だよ、そしたら日野谷の腕を羨ましがることなかったのに」

 カウンターで頼んだカフェラテを受け取って、席に着くと、方橋が眼鏡をかけた。それも瓶底のやつ。

「その魔法少女はどんな子でヤンスか?」

「ピンク髪でなんか正義感とか強そうな感じ。どうしたんだよ、その口調」

「何か武器は?」

「槍だったよ、それを投げて攻撃してた」

 方橋が頭を抱え出した。

「ヤバいでヤンスね。血は、血は出てたでヤンスか?」

「両者ともにね、生き神っぽいやつは噴き出てたし、魔法少女の方も鞭みたいな攻撃が当たったら裂傷ができてそこからジワッと」

「ぐわぁー!!」

 方橋が大きな声を叫んだ。意識を高く持ち、パソコンをカタカタしていた人達も流石にこちらの方を見てきた。

「どうした方橋!」

「これは、バッドエンド系魔法少女だと拙者見ましたぞ」

「バッドエンド系魔法少女?」

「僭越ながら解説させて頂くでヤンスが、そもそもこの概念が生み出されたのは、既存の、所謂テンプレート的な魔法少女像を破壊してやろうという考えのもとに……


 当たりはもう暗くなってきて、学生らに帰宅を促すBGMが鳴り始めた。

というわけでヤンス」

「成る程ね」

 あっちこっちに話がそれ続け、やっと終わった。どこから出したのか分からないおすすめのバッドエンド系魔法少女アニメDVDをバックに突っ込まれた。

 方橋の話のすんごく雑にまとめると、魔法少女が可哀想なことになる。以上だ。名前からしてわかってたよ。出血や、攻撃が魔法ではなく武器であると、バッドエンド系魔法少女の確立が高いらしい。

「で、どうすんの?」

 方橋は何気なしと言った様子で、俺に尋ねてきた。口調が戻ってくれて本当に良かった。あのままだったら縁を切ろうとしていたところだ。

「そりゃ、可哀想な目に遭ってるなら助けるのが普通じゃない?」

「うーん、良い。そういうヒーロー象が拙者は好きでヤンス」

 異世界で腕が増えて、俺は前よりも人を助けることができるようになった。それでも助けられなかった人はいて、だからこそ、俺の手が届く範囲にいる人は絶対に助けようと思ったのだ。

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