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今夜、キミは歌姫になる  作者: 臆病丸(ごん丸)
23/25

言い合い

「な――っ! ……どうしてですか? この前は、雪乃ちゃんは私たちを応援してくれるって言ったじゃないですか」


「それについては謝ります。でも、千鶴ちゃんはずる賢いです。私の言質を取ったり他にも色々と……。応援するって言ってくれた、そう言えば私が引き下がるとでも思いました?」


「……それは――」


「千鶴ちゃんは卑怯者です。でも、残念でしたね。勇気くんの特別は私だったんです」


 雪乃はクスクスと笑う。


「そうやって思い込む女は痛いですよ、雪乃ちゃん。……それに、特別と言うわりには二人はまだお付き合いしていないんですよね?」


「それは……そうですね」


「なら、私が勇気くんの特別になる可能性だって十分にあります」


「ないです。そんな可能性は存在しません」


「雪乃ちゃんは、知らないかもしれないですが私だって勇気くんの特別なんです」


「特別? そんな訳ないです。千鶴ちゃんは気づいてるんですか……? 勇気くんの普通の人とは違う、その才能に」


 雪乃は勝ち誇った顔で千鶴に尋ねた。


「もちろん、そして私は入学する前から知っていましたよ。雪乃ちゃんとは違って」


 千鶴の答えに雪乃は驚いた表情を浮かべて俺を見た。


「嘘ですよね……勇気くん?」


 俺は雪乃の問いに首を横に振ってから本当だと答えた。 


「どうして……? 何で知ってるんですか……?」


 雪乃の表情を見て今度は千鶴がくすくすと笑う。


「教えてあげません」


「そっか……そうなんですね。入学した日に私に最初に声をかけるふりをして、本当は勇気くんに近づいたんですね? 私、ずっとおかしいって思ってたんです。千鶴ちゃんと勇気くんは初対面のはずなのに、千鶴ちゃんは初めから勇気くんに異様に固執してましたから、それこそ他のクラスメートを遠ざけるほどに。でも、だとしたら許せません」


 雪乃は千鶴を睨みつける。


「まさか。私がクラスメートたちから勇気くんを遠ざけていたなんて言いがかりです」


「勇気くんが、男子からも女子からもクラスで浮いているのは貴女が原因じゃないですか! 私知ってるんですよ!」


 雪乃と千鶴の会話でとんでもない話しが出てきた。

 確かに、俺がクラスで浮いているのは事実だ。でもそれって千鶴のせいだったの?


「だから、言いがかりは止めてください! 入学式の日だって、ちゃんと雪乃ちゃんを励まそうと思って声をかけました。でも、私は勇気くんが好きだったので半分くらいはそれもありますが……。クラスの方を遠ざけたことなんてありません」


「でも、影で皆に言ってたじゃないですか。『勇気くんは私が狙っているので手を出さないでください』とか『彼は私の物です』とか、この前だって、私に欲しいって言ってもあげませんとか――」


「それは――。……だって、好きなんです、好きで好きでしょうがなかったんです! それに私は貴女と違って作曲――いえ、才能を好きになった訳ではありません! 本気で勇気くん本人が好きなんです」


「私だって本気で勇気くんが好きです!」


「そうでしょうか? と言うか私が休んでる間に雪乃ちゃんはようやく気が付いたんですね」


「やっぱり、千鶴ちゃんは卑怯です! 知っていて、私が勇気くんを好きになるって分かっていたから先手を打って抜け駆けして言質までとって」


「そうです……私はズルい女です。それでも絶対に誰にも渡したくないんです」


「私だってそうです。私には……私が一番つらい時に助けてくれたのは勇気くんだったんです。勇気くんだけだったんです! 千鶴ちゃんはモテるんだから別の人でもいいじゃないですか!」


「そんなの知りません! それに勇気くん以外の人なんて絶対にお断りです! 私は……雪乃ちゃんだけには絶対に勇気くんを渡したくなくなりました」


「そうですか、どうせ渡す気なんて最初からないじゃないですか。もういいです。千鶴ちゃんは失恋して泣いちゃえばいいんです。私は勇気くんとイチャイチャします!」


 雪乃はそう言って俺の腕にしがみ付いた。

 胸が当たっています。と言いたくなる態勢だけど悲しいかな、雪乃の胸は小さかった。しかし、魅力的な彼女に抱き着かれてドキドキしてしまう。


「勇気くん、失礼します」


 そう言って千鶴も俺の隣に移動して雪乃とは逆の腕にしがみ付いた。

 うーん、胸が当たっていますと鼻の下を伸ばしたいところだけど途中から千鶴と雪乃の言い合いでクラスメートの注目を集めていたからか、男子からの嫉妬の視線がすごい。


「勇気くん、放課後お話があるんですけどいいですか?」


 俺は現実逃避で両腕を封じられた状態でどうやってお昼を食べようか考えていると千鶴に話しかけられる。


「ダメです」


「雪乃ちゃんには聞いていません」


「えっと……ここではできない話?」


 俺は千鶴に質問する。


「はい」


 千鶴は真剣な顔で頷く。


「うぅ……私は仕事があるのに千鶴ちゃんは何時も勇気くんと一緒でズルいです!」


 そう言って雪乃は悔しそうに地団駄を踏む。

 ……仲良し三人組は何処へ行ったのだろう。

今日はバレンタインデーなのでイチャイチャした話が読みたいですね

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― 新着の感想 ―
[一言] すごい、ものすごく修羅場ってる
[一言] 久々の投稿待ってました!!
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