表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今夜、キミは歌姫になる  作者: 臆病丸(ごん丸)
22/25

仲良し三人……あれ?

半年ほど間が空いてしまい申し訳ありませんでした。

 雪乃にキスされてから次の日、今日も俺は学校に来ていた。

 教室には生徒がちらほらといるが千鶴も雪乃もまだ来ていない。


 何となく、キスの感触を思い出してしまい唇を抑える。

 ――唇、柔らかかったな……。て、二人の女の子相手に何やってるんだ、俺は……。


「おはようございます」


 そんな、俺に声をかけてくれたのは雪乃だった。

 彼女は俺と昨日キスしたのに普通だった。


「お、おはよ」


「あれ? 勇気くん唇を押さえてどうしたんですか?」


「い、いや、何でもないよ」


 雪乃はにこりと微笑み。俺との距離を詰める。

 そして、背伸びをして雪乃は俺の耳元で小さな声で囁いた。


「キス、気持ちよかったですね」


 そう一言だけいってから、素早く俺から離れる雪乃。本当に一瞬の出来事だった。

 しかし、そう言った彼女のその表情は少しだけ悪戯っぽく、それでいて少し照れ臭そうに笑っていた。一瞬だけその言葉の内容にドキリとして、彼女の可憐さに見とれてしまう。


「……か、からかうなっ――」


「おはようございます、二人とも。あれ? 勇気くん、顔が真っ赤ですよ。どうしたんですか?」


 そんな俺たちのやり取りを知らない千鶴が登校してきた。

 二股をかけているようで罪悪感に襲われる。

 ――いや、二人にどんな顔すればいいんだよ。


「お、おはよ、千鶴。何でもないよ」


「おはようございます、千鶴ちゃん」


 そんな俺と雪乃を不思議そうに見つめる千鶴。


「昨日はすみません、お見舞いに来てくれたのに会えなくて」


「気にしないでいいよ。それよりもう体調は大丈夫?」


「はい、もう大丈夫です。ご心配をおかけしました」


 そう言って千鶴はにこやかに笑う。

 それからは千鶴と雪乃が仲良く談笑をして朝の時間は緩やかに過ぎていく。



 そして、昼休みにそれは起こった。


「勇気くん、今日もお昼ご飯一緒に食べていいですか?」


 昼休みを告げるチャイムが鳴り終わるやいなや雪乃がそう尋ねてきた。

 俺はもちろんと返し、雪乃と机をくっ付ける。

 そして、いつもの様に千鶴もやってきて三人で昼食を取る。


「勇気くん、この卵焼き私が作ったんです。食べてみてください」


 卵焼きをお箸でつまみ、俺に差し出し『あ~ん』してくる雪乃。

 口元まで差し出されたら、要らないとも言えないので有り難くいただくことにした。


「おいしいですか?」


「……うん、すごくおいしいよ。ありがとう雪乃」


「えへへっ、それ私の自信作なんです。他にも食べたいのがあったら言ってください」


 そう言って雪乃は女の子らしい小さいお弁当箱に入れられた、いろどり豊かな弁当をみせてくれた。

 

「ありがとう、でも俺が食べちゃったら雪乃の分がなくなっちゃうよ」


「じゃぁ、卵焼きの代わりに勇気くんのも何か下さい」


「あぁ、好きなの食べていいよ」


 お弁当箱ごと雪乃に差し出す。


「では、このカラアゲを頂きますね」


 雪乃はそう言うと、俺の食べかけのカラアゲを食べてしまった。


「う~ん、美味しいです」


「えっと、それ俺の食べ掛けだったんだけよかったのか? こっちの口を付けていない奴の方がよかったんじゃ……」


「えへへっ、関節キスですね。でも、今度は勇気くんがあ~んしてくれたら嬉しいです」


 雪乃は少し照れながらも笑った。

 俺はその笑顔に無邪気さと、僅かに色気を感じた。


「……雪乃ちゃん、どうしたんですか?」


 俺が雪乃にドキドキしていると千鶴が雪乃に声をかけた。

 その声はいつも通りの優しい声色だったが、少しだけ……ほんの少しだけ空気がピリッとした気がした。


「どうしたって、何がですか? 千鶴ちゃん」


「いえ……私が休んでる間に二人が随分仲良くなったように見えたので」


 そんな千鶴の言葉に雪乃は嬉しそうにくすくすと笑う。


「そうでしょうか? そうかもしれません。勇気くんと私はとっても仲良しです。でも、私はもっと仲良しになりたいんです」


「……でも、せっかく三人でお食事しているのに。今日の雪乃ちゃんは勇気くんばっかり見ていて私、寂しいです。それに少し勇気くんにベタベタしすぎです」


「ふふっ、ごめんなさい千鶴ちゃん。でも、私、勇気くんの特別だから……ね?」


 そう言って雪乃は俺に同意を求めてくる。


「特別……?」


 俺は雪乃と千鶴の両方から見つめられてしまう。

 ただ、俺の勘違いで無ければ雪乃は愛おしそうに、千鶴は困惑しながらも説明を求める様な視線を送ってくる。


「千鶴ちゃんがこの前、教えてくれたんじゃないですか。私は勇気くんの特別だって」


 雪乃はとても柔らかい安心した表情で目をつむり俺にピタリとくっ付き、寄りかかった。

 千鶴の顔は一瞬だけ驚いた表情をした後、すぐにむっとした表情に変わった。


「私は『特別なのかな』と言ったんです。勇気くんが雪乃ちゃんを特別に思っているとは断言していません! それに勘違いでした。だから勇気くんにベタベタするのを止めてください」


 そんな千鶴の言葉に少し考える素振りをしてから雪乃は笑顔で答える。


「んー、嫌です」


 雪乃の答えに千鶴の表情が曇った。

 もしかしてこれが噂に聞く修羅場と言う奴なのだろうか。

これからが地獄だぞ!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] おかえりなさい! 更新お待ちしていました! これからも頑張って下さい!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ