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【完結】獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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80/128

80.ご先祖様は英雄ではなかった?

 ゲヘナ国初代皇帝アンドレア・ミランダル・アルスターは、皇帝の中で唯一ゲヘナの名を持たない。様々な推測がされてきた。ゲヘナの響きが名前とバランスが悪かった、または皇帝であっても国とは独立した存在であると示した、など。


 いろいろ言われて、解けない謎として残っている。そう聞いたシェンはこてんと首を傾けた。過去の皇帝達から、そんな相談も話も聞いたことがない。聞いてくれたら、すぐにでも解決してあげたのに。


「アンドレアは女性だって言ったでしょ? で、実はミドルネームのミランダルも、元はミランダだった。これ以上親にもらった名前を弄りたくないんだってさ」


 シェンにとっては懐かしい思い出だった。アンドレアという響きはファーストネームで認識されているが、彼女の一族ではファミリーネームが先頭だ。


「ということは、ミランダが個人名?」


 オネエ様が尋ねると、シェンは大きく頷いた。


「出会った頃はアルスターもなかったんだよ。今の読み方に直すと、ミランダ・アンドレアだね」


 ミランダがミランダルになったのは、男性と誤認した後世の人々の口伝えで、名前が変わったからだ。アルスターは、蛇神であるシェンのために付け加えられた称号の一種だ。目印でもある。その響きを名付けられた存在は、蛇神の加護を受けると言われてきた。


「その言い伝え、たぶん最近のものだね。僕は血の匂いで見分けてるから。名前は関係ないよ」


 当時から生きている当事者の話は身も蓋もなくて、聞きながらリリンは顔を引き攣らせた。オネエ様のメレディスは目を輝かせ、リンカやナイジェルは「あるある」と頷く。どの王家でも、いつの間にか言い伝えが増えたり変わっていた。その点では同意しかない。


「エリュのずっと上のおばあちゃん?」


「そうだよ、聞いたことない?」


「まだエリュ様にはお話ししていません」


 リリンが言いづらそうに口にする。何やら事情がありそうだ。ここで問い詰めても仕方ないし、リリンの表情からベリアルが絡んでいると判断した。


「気になるなら、今度話してあげるね」


「うん!」


 直接繋がる先祖の話、それも劇になる英雄譚となれば、エリュだけでなくリンカやナイジェルも興味深々だった。


「劇と違う場所を教えてもらえる?」


 メレディスの言葉にリリンが乗る。


「男装の麗人、つまり性別は違っていましたわね」


 シェンはうーんと唸って劇を思い出す。違う場所と言われたら、あらすじ以外の詳細はほぼ違う。


「一番違うのは戦った理由かな」


 思わぬ話に、リリンも身を乗り出す。メレディスは、音がしそうな長い睫毛でぱちりと瞬いた。全員の視線が集まる中、この話はしなければ良かった、とシェンは後悔する。期待されてるけど、どちらかと言えば幻滅される内容だった。


「ミランダはね、誰かを助けるために戦ったことはないんだよ」

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