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【完結】獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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69.長い眠りのツケは高くついた

 お祭りの衣装の刺繍を施す侍女を、飽きもせずに眺める。エリュとリンカを置いたシェンは、ベリアルの相手をしていた。というのも、面倒ごとが起きたのだ。


「これ以上の関税譲歩はできません」


「そもそもさぁ。なんで譲歩しちゃったの。そこが間違ってるよ。これじゃ国内の商家や流通を圧迫するじゃん」


「代わりに、通行料を免除してもらったのです」


「空飛べる種族を雇った方が安いよ」


 貿易関係の税金と領地の通行料、どちらも金額的には大差ない。だがベリアルは肝心な部分を見落としていた。魔族は人族と違い、空を飛べる種族が多い。


 彼らに散歩がてら荷物運びを頼めばいい。簡単そうに告げるシェンに対し、ベリアルは頭を抱えてしまった。


「撃ち落とすと言われました。荷物を持つと高く飛べないので、人間の魔術師に襲われたらと思い、頼めませんでした」


「は? ハルピュイアの高度でも、人間の魔法なんて届かないでしょ」


 思わぬ発言に、シェンは驚きの声をあげた。一番高度が低い種族のハルピュイアでも、荷運びは出来る。人間が使う魔法で落とされる魔族なんて、考えられなかった。あり得ないと口にした途端、ベリアルは困ったように笑う。


「今の魔族は力が弱っています。魔法が届かない高度も、攻撃魔法を弾くのも無理でしょう」


「……うわぁ、もしかしてアレか」


 心当たりがあるシェンの溜め息に、ベリアルは首を傾げた。アレと呼ばれる状況が理解できない。話を聞いたこともないので、じっと待った。


「あのさ、僕の眠りが長過ぎたんだ。ごめん」


 意味が分からない。じっと見つめる先で、ぽりぽりと頬を掻いたシェンがぼそぼそと語った内容に、ベリアルは脱力した。


 眠る蛇神は魔力を放出しない。簡単に言うとこの一言に尽きた。魔族の強さを示す魔力は、使えば消費される。それでも自然回復するが、守護神であるシェーシャが眠っているなら別だった。自然の中に放出される魔力がないのだ。生まれてから成長に伴い、徐々に魔力量を増やすのが魔族だった。その成長期に、魔力の源が閉じられていたら?


 ようやく理解したベリアルは、ほっとした顔で頬を緩めた。


「安心しました。シェン様がおられるなら、魔族は安泰です」


 過失を咎めず、未来への希望を口にする。本当に出来た宰相だ。シェンは「任せてよ」と返した。エリュの周囲は、人材に恵まれている。これは魔力がほぼないエリュの才能かもね。人柄と呼んだりするけど。


「お話終わった?」


 振り返ったエリュに促され、シェンも作りかけの衣装を当てて見る。今年は全員花の刺繍だった。エリュとシェンは同じ花の色違いで、リンカは凛と立つ百合を選ぶ。さて、ナイジェルには何が似合うか。エリュとリンカ、シェンの意見が纏まらず……侍女にお任せとなった。

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