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【完結】獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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67.賑やかな季節の到来

 初の皇帝陛下お披露目となった即位記念祭から1年、またお祭りの季節が来た。準備に忙しい文官や貴族と違い、青宮殿は別の騒ぎに追われていた。


「ベッドの交換は終わった?」


「それより届いた荷物の運搬を手伝って」


 大忙しの侍女を、騎士達が手伝う。この青宮殿はエリュが住む個人的なスペースだ。そのため入れる職人や侍従が限られた。力仕事は自然と騎士の役割となる。


「僕が運ぶよ」


「あ、シェン様。お願いします」


 侍女ケイトが大きな荷物を抱えているのを見て、黒髪の幼女シェンが声をかける。収納空間を操るシェンなら、簡単に重量物の移動が可能だった。ケイトと一緒に、宮殿の出入り口へ向かう。届いたばかりの木箱を片っ端から収納し、一緒に歩いて二つの部屋に積み重ねた。ここから箱をバラして荷物を片付けるのは、彼女らの仕事だ。


「後はよろしくね」


「助かりました、ありがとうございます」


 見送られて、少し離れたエリュの私室へ戻る。彼女は現在お昼寝中だった。ベッドの上に座り、隣で本を読む。蛇神シェーシャが眠りについた数百年で発行された本を、分野関係なく片っ端から目を通していた。


 新しい知識を蓄積する作業に夢中なのだ。それらの本を横で一緒に覗き込むエリュも、自然とさまざまな分野の知識を吸収していた。先日は150年前の魔術理論をそっくり覚えて、周囲を驚かせたほどだ。シェンも意外だったが、エリュは読んだ本の内容を暗記する特技があった。内容を理解していなくても、まるっと覚えてしまう。


 後日、他の本を読んでいる最中に、前回読んだ本の内容を理解したりする。思わぬ方向からエリュの才能が発見され、ベリアルやリリンは大喜びだった。学者の書いた難しい論文を読み終えたシェンは、隣で眠るエリュの頭を撫でる。


「才能なんて、なくてもいいけどね」


 あるに越したことはない。だがエリュはその存在自体に価値があり、無理に別の才能を開花させる必要はなかった。特殊な才能があると知れたら、逆に危険なんだけど。


 祭りまであと10日、その前にリンカとナイジェルが留学してくる。魔国ゲヘナの新学期は、即位記念祭の直後だった。それに合わせた形だ。両親や貴族を説得した二人は、同時期にエリュの元へ集う形となった。


「ん……起きるぅ」


 ごそごそと動いて呟くのに、エリュはまた寝息を立てる。どうやら二度寝を始めたようだ。起こすか迷って、もう少し寝かせてあげることにした。


「エリュ様、シェン様。おやつの時間ですわ」


 留学する二人の王族の荷解きの合間を縫って、侍女バーサが顔を覗かせた。おやつと聞いて飛び起きるエリュは、さきほどまでの眠そうな姿が嘘のようだ。まだまだ幼さの抜けないエリュを好ましく思いながら、一緒にベッドから降りた。


「伝え忘れるところでした。明日、リンカ様が到着なさいますよ」


 ナイジェルはもう少し遅れてくるようだ。祭りへ参加する使者に同行してもらうのだろう。到着予定を聞いて、エリュは大きな声を上げて喜んだ。明日は騒がしくなりそうだった。

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