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【完結】獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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54.騒動を見ぬフリは出来ないよね

 小さな玩具を売る店や人形が並んだ屋台を眺める。たくさんの出店が並ぶ通りを歩いていると、果物が山積みにされた屋台があった。周囲には客が入っているのに、この店だけ誰もいない。それが気になり、足を止めた。


「おい、止まるんじゃねえ」


 隣の店との間に座っていた男が、柄の悪い言葉と態度で脅しを掛ける。なるほど、店と何らかのトラブルがあり、嫌がらせをしているのだろう。営業妨害というやつだ。過去にも見覚えのある状況に、シェンは少しばかり迷った。


 自分だけなら挑発して叩きのめしてもいいが。手を繋いだエリュや後ろの二人をどうするか。結界で保護して戦う方法が一番安全かな。店を助けず見捨てる選択はない。エリュの前でそんな姿は見せたくないし、シェン自身の気持ちも収まらなかった。


「リンカ、二人と手を繋いで」


 蛇神のシェンがこの場で最強と理解するリンカが、ナイジェルとエリュを両手にそれぞれ掴んだ。その状態で結界に包む。


「シェン、怖いよ?」


「平気だから、少し待ってて」


 微笑んで安心させ、男と対峙する。後ろでナイジェルの声が聞こえた。


「俺が……」


「大人しく待つのも騎士だぞ」


 リンカに窘められ、ナイジェルはきゅっと唇を引き結んだ。外見に騙されず、真実を見抜く目を養うこと。何より無謀と勇気は違うことを学んでいく。シェンは身構えもせず、男に向かって歩を進めた。


「おい、聞いてんのか? 帰れってんだよ」


「どうして? 僕は果物が欲しいのに」


「ここの果物は売らせねえ。ケガしたくなきゃ、よそで探しな」


 太い腕を見せつけながら、危害を加えると脅す。その様子に、周囲の大人が心配そうに足を止めた。だが男のゴツい体躯を前に、不安そうに見つめるだけ。


 こういう輩を捕まえる衛兵はどこで遊んでるのやら。賄賂をもらって、見ぬフリをしたか。シェンは眉を寄せてこてりと首を傾げた。何を言われたか分からない。そんなフリを装い、さらに距離を詰める。


「あんた、逃げなさい! 早く!!」


 店主だろうか。おばさんが声を掛けた。すぐに別の男に取り押さえられ、姿が見えなくなる。店主不在かと思ったら、拘束されてたらしい。そこまで把握すると、シェンは俯いた。


「さっさといけ」


 子どもが泣き出すと思ったのだろう。しっしと手で追い払う仕草をされた。だがシェンの口元は弧を描き、笑みに歪んでいた。我慢するのが辛いくらいだ。大声で笑い飛ばしたら、さぞスッキリする。その状況を作るために、俯いたまま影を放つ。


 シェンの小さな影から、するりと蛇が一匹抜け出た。影の蛇は果物の屋台の奥へ入り込む。と、男の悲鳴が上がった。


「うわっ、来るな! やめろ」


 叫ぶ声に視線が集まる。その隙に右手を持ち上げて振り下ろした。風が巻き起こり、ガタイの大きな男は堪えるために足を踏ん張る。吹き飛ばされぬよう咄嗟に対応する早さは見事だが……シェンの手は一つではなかった。

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