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【完結】獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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52/128

52.街で祭りを堪能しよう

 他国の王族は迎賓館へ泊めたが、子ども達はまとめて青宮殿で過ごした。その話が広まったのか、翌日は多くの子を連れた貴族が集まる。建国祭は7日あり、その間にエリュと親しくなれば出世が望める……透けて見える欲の皮にシェンは溜め息を吐いた。


 うん、これは想像してた以上に愚かだ。対応をベリアルに一任し、シェン自身は友人の安全に気を配ることになった。リリンは穏やかな笑みを浮かべて、のらりくらりと貴族の追求を交わしていく。この辺の手腕はエリュにも身に付けさせたい、とシェンは肩を竦めた。


 アドラメレクとフルーレティは、いい側近を残してくれたものだ。


「あの子達はなに?」


「お祭りに参加するんだと思うよ。僕達も急がないとね」


 一日目は皇帝が顔出しして祝賀会が行われる。二日目から五日目まで、街中で歌って踊るイベントが多く開かれた。そこへ参加する予定なのだ。もちろんシェンが護衛するから可能になったのだが……エリュは気づいていない。


「急がないと、イベントに間に合わなくなっちゃう」


 急かされて、慌てたエリュが走り出す。一緒にシェンが走ると、後ろをナイジェルとリンカが追いかけた。彼らも参加予定なのだ。これから着飾って出かけるなら、時間ギリギリだった。


「ナイジェルはあっち」


 リンカが指差した部屋で、侍従達が待ち構えている。


「おう! 後でな」


 気やすい口調で駆け込むナイジェルを見送り、リンカは幼女二人に追いついた。侍女が手招きする部屋で、3人まとめて着替える。祭の衣装は、刺繍たっぷりのワンピースだ。これは初代皇帝が国を興した際、同行した民の姿を模していた。追われて逃げ惑った人々を受け入れた希望の証とされ、毎年刺繍の腕を競う場でもある。


 海の中をイメージした青い刺繍がエリュに被せられる。森の木々と小鳥の刺繍をリンカが着た。それぞれに刺繍を撫でる。可愛いとお互いを褒める彼女らが振り向いた先で、シェンは袖を通したところだった。肩に蛇の頭を掲げ、背中から裾へ蛇が絡みつくデザインだ。


 蛇神信仰が強い魔族にとって定番の祭の衣装だった。蛇神シェーシャ自身が着用するのは珍しい。


「どうだ?」


「うん……少し怖い」


 エリュの正直な感想に、ぱちくりと目を瞬いたシェンは笑い出した。気を遣ったのか、リンカは似合うと言ってくれる。廊下に出ると、ナイジェルがぶつぶつ文句を言っていた。大人になると衣装の形が変わるが、子どものうちは全員ワンピースだ。それが気に入らないのだろう。


「足元がすーすーする」


「だが似合うぞ」


 シェンが宥めるように告げ、ナイジェルは肩を落とした。女装みたいだと嘆くので、この国では大人と認められるまで全員同じと言い聞かせる。


「女装? 似合えば問題ない」


 リンカはからりと笑い飛ばした。街へ出れば理解するはず。大人の男性は裾の長いチュニックにぴたりとしたパンツ。女性は無地のワンピースの上に足元まで届くベスト型の長い上着をを羽織る。チュニックや上着はすべて刺繍が施され、その見事さが他国で話題になるほどだった。観光客も多いし、祭の間に着用する刺繍の衣装をお土産に購入する客もいる程だ。


 宮殿内にエリュ達が残ったように見せるため、幻覚を見せてその間に転移で街へ飛び出した。数人の騎士が護衛につき、途中でリリンも合流予定だ。


「さあ、街を探索しよう!」


 観光客が増えるこの時期は、毛色や種族の違う人々が溢れる。目を輝かせる彼らは、互いにペアで手を繋ぐことにした。シェンとエリュ。リンカとナイジェルだ。競うように刺繍服で練り歩く住民達を見るだけでも、十分だった。


「あっちでお菓子売ってる」


「寄ってみる?」


 お揃いの兎ポーチを付けた幼女達は、異国の友人を連れて祭を大いに楽しんだ。

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