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51.ホットミルクで夜更かし

 夜も一緒に過ごす。眠るまでの時間を、シェンの部屋でお話しした。こんなに遅い時間まで起きているのは、初めてだとエリュは笑う。


 用意されたのはホットミルク、少しだけ蜂蜜を垂らして。お茶を飲ませてしまうと、夜眠れなくなる。侍女ケイト達の相談の結果だろう。リンカは膝の上に置いて、カップで暖をとる。ナイジェルは一気に飲み干して、物足りなそうだった。二人の性格が良く出ている。


 エリュは両手でカップを包んで、ちまちまと飲んでいたが……ナイジェルの空になったカップを見つめて、自分の中身を半分分けた。


「悪いな、ありがとう」


 すっかり素で会話する仲になった子ども達は、互いを呼び捨てにしていた。


「いいよ。飲み過ぎると夜起きちゃうから」


「ミルクだぞ?」


 お茶じゃないから平気だと笑うナイジェルに、なんと説明したものか。目が覚める飲み物という意味じゃなく、水分の摂り過ぎてでトイレにいくことを心配しているのだが。異性相手なので、いくらエリュでも言いづらいだろう。


「お前はデリカシーがない。それでは一生モテないぞ」


 注意するリンカの口調は、まるで騎士のようだ。これは彼女の性格なのだろう。なんでも妖精族は、女性でも男性でも区別しないらしい。女王もいるし、男性の踊り子もいる。さまざまな職業に男女関係なく、才能や努力で就ける。その話を聞くと、ナイジェルは羨ましそうな顔をした。


「いいなぁ。俺のところはうるさいぞ。母上が正妃だと、騎士になるのも一苦労だ」


 王位継承権を返上して、騎士になりたいと何度も願い出た。王に向かない性格を理解する父は賛成したが、母やその親族の反対が強かった。結局、宙ぶらりんのままだ。そうぼやいた後、ナイジェルは申し訳なさそうに謝った。


「ごめんな、エリュは選べないのに。まだ俺の方がマシなんだよな」


「私、皇帝するの嫌じゃないよ。シェンと出会えたし、優しい人ばかりだもん」


 きょとんとした顔で、まったく後悔していないと言い切った。驚いたのはシェンも同じだが、ナイジェルは「本当に?」と尋ね返す。


「うん。ケイトが私と一緒にいるのは、私のお世話が仕事だからだよ。ベルやリリンもそう。だから皇帝で嬉しいよ」


 にこにこと話すエリュに、ナイジェルは顔を覆った。恥ずかしくなったのだ。自分の弟妹より幼い子が、父王と同じ重責を担って笑う。その重荷を少しでも軽くしてやりたい、手伝いたいと思った。


「すぐは無理だけど、この国に留学する! そうしたらエリュを守れるから」


「ふむ、それはいいな。私も伯父上に相談しよう。騎士の主君が伯父上でなければならない理由もない」


 さらりととんでも無き発言をしたリンカは、楽しそうだ。この時間がずっと続くといいのにな。エリュはそう望み、彼と彼女の友情から発した希望が叶う未来をシェンも願った。


 リンカが自国で流行した花飾りの話を始め、途中でナイジェルの国で流行るお菓子に話題が移る。薬草の話や魔法に至るまで、話は変化し続けた。やがてエリュが眠りの舟を漕ぎ、ナイジェルも目を擦り始める。ナイジェルをリンカが運んでお開きとなった。


 ぐっすり眠るエリュとベッドに潜り込み、シェンは彼女の虹色がかった銀髪を撫でた。


「おやすみ、エリュ」

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